
厚生労働省に要望書。(写真/Adobe Stock)
厚生労働省が2025年8月に出した美容医療に関する通知に基づいて、その内容を順に見ていく。
前回は無資格者による施術などについて伝えたが、今回は看護師による施術などの項目について。単独で施術や診察を行う行為は違法であることを明確にした。これまであいまいだった部分の白黒をはっきり付ける効果が見込まれる一方で、グレーゾーンは残りそうだ。
医師の管理責任も問われる

HIFUの施術。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 通知の整理 → 看護師は「医師の指示の下」で診療補助が認められるが、独断で診療や施術を行うと医師法第17条・保助看法第37条違反。
- 違法とされる例 → 医師の指示なく脱毛・アートメイク・HIFU施術を行う/診察を行う/治療法を主体的に選択し提案・決定する。
- 医師の責任 → 通知は「看護師が違法行為を行う状況を医師が作り出してはならない」と明記し、管理責任を強調。
8月の通知では、看護師等は「医師の指示の下」で診療の補助を行うことが認められているが、独断で診療や施術を行えば医師法第17条や保助看法第37条に違反すると整理した。
違法な例として次のケースを挙げている。
- 医師の指示なく看護師が脱毛、アートメイク、HIFU(高強度焦点式超音波治療、ハイフ)施術などを行う
- 看護師が医学的判断を行う行為である診察を行う
- 看護師が治療法を主体的に選択し、患者に提案・決定する
さらに、通知では、「医師は看護師が違法行為を行うような状況を作り出してはならない」と示し、医師側にも管理責任があることを明記した。
美容医療の現場では、医師の指示の下で、施術の大半を看護師が担当するケースが少なくない。特に今回、違法な例に挙げられた脱毛、アートメイク、HIFUのように反復的に行われる施術では「看護師が中心」となっている。これらが医師の指示の下であればよいが、医師不在の状況で行っていたときには違法という線引きをした。
今後も残るグレーゾーンとは?

アートメイク。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 通知の整理 → 医師の指示があれば看護師は施術可能と明記。昨年6月の「HIFUは医師免許が必要」との通知で生じた混乱を防ぐ効果が期待される。
- 残るグレーゾーン → 医師が常駐していないクリニックや、医師不在が長引く状況は通知だけでは判断が難しい。
- アートメイクの課題 → 看護師が単独で行うのは違法とされたが、最高裁の刺青合法判断や千葉県での美容師による「タトゥーメイク」黙認との整合性は今後も論点。
看護師の施術をめぐっては、2024年6月に厚労省がエステでのHIFUは法律違反であると通知を出した際に、施術には医師免許が必要と示されたことで、看護師は施術できないのかという点が関心を集めていたことがあった。結論としては、医師の指示の下であればよいという方針であることをヒフコNEWSでは確認している。今回の通知では、医師の指示の有無に注目しており、昨年6月にあったような混乱を防ぐ効果が見込まれる。
一方で、グレーゾーンになるケースはこれからも存在すると考えられる。例えば、美容クリニックでは、医師が医療機関に常にはとどまっていない場合もあると見られるが、こうしたケースはどう判断するのか。医師不在の状態が長引いたときに、医師の指示はあるとはいえ、この状態が続くのは法律に違反していないのか。ここは今回の通知だけからは判断しづらい。
また、無資格者の施術でも問題になったアートメイクも問題になり得る。アートメイクを看護師が単独で行ってはいけないという通知内容だが、無資格でも刺青を行えるとした最高裁判決との整合性をどう取るのかは、引き続き課題になるからだ。ヒフコNEWSが伝えているように、千葉県では美容師による「タトゥーメイク」がいったん黙認されたという動きがある。こうした場合にどのように対処するのか、時と場合によって対応が分かれることも考えられる。
施術を行う看護師の存在感は美容医療の現場では大きく、現場の慣習と法的な位置づけのギャップがあるとしたら、その点について考え続ける必要があるのだろう。
