
幹細胞を使った治療の有効性や安全性が不確かであることがある。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)
2025年8月、日本国内において自由診療で行われた再生医療による死亡事故が報告された。そこで連載で再生医療に関連した事故の実態を見直している。
今回は米国で2017~18年にかけて起こったトラブルを伝える。これは、「幹細胞治療」として販売されていた未承認の、へその緒から採取される「臍帯血」製品により、8州で20人が重い細菌感染を起こしていたというケース。2021年に、CDC(米疾病対策センター)主導の論文により報告された。
8州で発生したアウトブレイク

幹細胞の製造施設の管理がずさんでは安全性は確保できない。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- ReGen Series感染事例 → 2017~2018年、未承認の臍帯血由来製品で20人が感染。痛みや関節炎などに注射や静注で使用され、19人が入院。
- 細菌検出の実態 → CDCが160本を調査したところ54%で細菌が確認され、未開封でも65%で検出。大腸菌など腸内細菌を含む16種類が確認。
- 原因の可能性 → 複数製品で同一菌が検出され、製造過程での汚染が疑われた。FDAの調査では製造施設の消毒・清掃不備が指摘された。
そもそも2017年から2018年にかけて未承認の臍帯血由来製品「ReGen Series」による細菌感染が8州で報告された。これを受けてCDCが調査を行った。原因となった製品は、ジェネテック(Genetech)が加工し、別の企業であるライビオン(Liveyon)が流通させていたもの。名前が紛らわしいのだが、有名な製薬企業とは別の会社だ。製品は米国食品医薬品局(FDA)の承認も、承認を受けるための試験である治験の申請も行われていなかった。
この製品を使って感染を引き起こした人は20人。使用目的は、痛みや関節炎、外傷、リウマチなどだった。注射(関節内・椎間板内・脊椎関連)、静注、鼻スプレーなどの形で治療が行われていた。20人中19人が入院を必要とし、その理由は注射部位の感染(関節炎や膿瘍)、血流感染、またはその両方だった。検出された細菌の多くは腸内常在菌である大腸菌など。
CDCが関連の160本(未配布・返送・医療機関保管)を検査した結果、全体54%(86/160)で細菌検出。未開封・未流通に限ると65%(22/34)。全体で16種の細菌が確認され、複数の製品間で同一細菌が一致するなど、製造過程における汚染の可能性が考えられた。大規模に汚染された製品が流通していた可能性が示された。FDAの調査では、製造施設で消毒や清掃が適切に行われていなかったようだ。
再生医療を装った「治療」が患者に深刻なリスク

幹細胞の利用は慎重な検討が必要。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 大規模流通の問題 → ReGen Seriesは39州とプエルトリコで約570人の医療従事者に購入され、「関節再生」「アンチエイジング」と宣伝されたがFDA未承認。
- 業界全体の課題 → 複数企業で製造管理不備が見つかり、未承認幹細胞製品は科学的根拠に乏しく重篤な感染リスクを伴うと研究者らが警鐘。
- 日本国内の事例 → 幹細胞治療に関連してがん治療で2人が敗血症を発症しICU入院、行政処分を受けた医療機関もあり、承認状況や運営体制の確認が不可欠。
製品は推定570人の医療従事者が39州とプエルトリコで購入していたことも判明しており、大規模な問題であると明らかになった。「関節の再生」や「アンチエイジング」などの触れ込みで販売されていたものの、FDAは安全性や有効性を一切承認していない。
研究者らは、未承認の幹細胞製品は科学的根拠に乏しく、深刻な感染症などのリスクをもたらすと警鐘を鳴らす。また、他の複数の企業にも同様の製造管理上の問題が確認され、業界全体の構造的な課題が浮き彫りとなっているとした。
幹細胞治療用の細胞を製造する施設のずさんな管理実態が明らかになったことになる。日本国内でも、幹細胞治療が感染症を引き起こした事例が報告され、再生医療に関連したがん治療で2人が敗血症を発症し、ICUに入院した。この医療機関は行政処分を受けている。
幹細胞治療の検討をする場合、こうした製品の承認状況、有効性や安全性の根拠、治療施設の運営状況などを慎重に評価することが重要だろう。
