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厚労省通知で診療録作成・保存義務を再確認、記載漏れも「義務違反」の可能性、閉院後も保存対象、美容医療でもカルテの重要性高まる方向に【連載・厚労省通知】

カレンダー2025.9.27 フォルダー連載・コラム
厚生労働省。(写真/Adobe Stock)

厚生労働省。(写真/Adobe Stock)

 厚生労働省が2025年8月に出された美容医療に関する通知をもとに、その内容を連載形式で伝えている。

 前回は看護師による単独施術の違法性について取り上げたが、今回は「診療録の作成・保存義務違反」に焦点を当てる。

 美容医療を提供する医療機関のカルテの扱いについて、一般的な医療のルールを示すことで、実質的にその重要性を再認識させる内容になっている。

「記録していない」だけでなく「不十分な記録」も違反

診療後に診療記録を作成することが義務付けられている。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

診療後に診療記録を作成することが義務付けられている。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

  • 診療録の作成・保存義務 → 医師法第24条により、診療内容を遅滞なくカルテに記載し、原則5年間保存する必要があり、違反すれば50万円以下の罰金の可能性。
  • 記載すべき内容 → 氏名、住所、診療日、病名、主要症状、治療内容などが医師法施行規則で定められ、欠落すれば「作成義務」を果たしていないと判断され得る。
  • 保存と開示の責任 → 医療機関廃止後も管理者が保存すべきであり、診療を受けた人から求められた場合にはカルテを原則開示する義務がある。

 通知では、診療録、いわゆるカルテの作成と保存に関して、医師法に基づく明確なルールが存在することが示された。

 通知によると、医師法第24条では、医師が診療を行った際には、その内容を「遅滞なく診療録に記載」しなければならず、記録は原則として5年間、医療機関の管理者が保存しなければならないと定められている。これらの義務に違反した場合、医師法に基づき50万円以下の罰金が科される可能性がある。

 また、診療録に記載すべき具体的な内容は、診療を受けた人の氏名、住所、診療日、病名、主要症状、治療内容などがその対象と医師法施行規則第23条で詳細に定められている。

 通知では、これらの項目が欠落している記録については、「作成義務を正当に果たしていない」と判断される可能性があるとした。

 さらに、医療機関が廃止された場合の取り扱いについては、「廃止時点における管理者が保存するのが適当」とされ、閉院後であっても記録を保存しておく責任が残るとしている。

 カルテの原則開示ルールも示された。施術を受けた人からカルテ開示を求められた場合には、原則として応じる必要があるというものだ。

 また、通知では、違法なケースとして次のような例が挙げられている。診療を行ったにもかかわらず診療録を全く作成していない場合や、記載要件を満たしていない場合は、いずれも医師法第24条違反となり得る。

美容医療でも守られるべき原則と読み取れる

診療録を記録し、保存する。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

診療録を記録し、保存する。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

  • 美容医療にもカルテルール適用 → 通知に明示はないが、美容医療関連で示された以上、診療録の法的ルールが美容クリニックにも適用されると解釈するのが自然。
  • 施術を受ける側のメリット → カルテが残され開示されやすくなることで、自分が受けた施術内容を後から確認しやすくなる。
  • 今後の方向性 → 電子カルテを普及される一般的な動きが進む中、美容医療でも施術内容を利用者と共有する仕組みが一般化する可能性もある。

 通知内では、こうした診療録に関する法律が「美容医療にも適用される」などと明示しているわけではないが、美容医療関連の通知に書かれている以上、ルールが美容医療でも守られるべき原則と受け取るのが自然だろう。

 美容医療の現場では、カルテが残っていない、記載が不十分という状況を耳にすることはある。しかし、今後は、通知で示されたカルテのルールが美容クリニックにも適用される方向と考えられる。美容医療を受ける人にとっては、施術後にカルテの内容を確認できるようになり、自分の受けた施術がどのようなものだったか知りたいときには、開示対応が受けやすくなり、施術内容をより詳しく理解できるようになることが考えられる。

 日本国内では、美容医療にかかわらず、カルテを電子的に保存するように求めるルール変更が行われる方向になっている。今後、美容医療でも、施術後に施術内容を利用者と共有するような動きが一般的に求められるようになる可能性も考えられる。

参考文献

美容医療に関する取扱いについて(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T250925G0010.pdf

美容医療の「違法ライン」を厚労省が通知で明示、2024年検討会報告書を基に法的解釈や行政対応など整理、警察庁・消費者庁とも連携【連載・厚労省通知】
https://biyouhifuko.com/news/column/14485/

厚労省通知で医師の指示のない看護師単独での施術は違法、医師側にも管理責任、脱毛・アートメイク・HIFU施術などが違法な例に、美容医療での扱いを明確化【連載・厚労省通知】
https://biyouhifuko.com/news/column/14628/

美容医療もスマホで確認できる時代へ? デジタル化の波がクリニックにも、2030年に標準型電子カルテが義務化へ、厚労省「医療DX令和ビジョン2030」政策が進行中【編集長コラム】
https://biyouhifuko.com/news/column/13482/

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  • 美容医療の「違法ライン」を厚労省が通知で明示、2024年検討会報告書を基に法的解釈や行政対応など整理、警察庁・消費者庁とも連携【連載・厚労省通知】
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  • 美容医療の「無資格診断・施術」違法性を明確化、脱毛・アートメイク・HIFUなど具体事例を明示、厚労省が報告書の法的解釈を解説【連載・厚労省通知】
    https://biyouhifuko.com/news/column/14499/
  • 厚労省通知で医師の指示のない看護師単独での施術は違法、医師側にも管理責任、脱毛・アートメイク・HIFU施術などが違法な例に、美容医療での扱いを明確化【連載・厚労省通知】
    https://biyouhifuko.com/news/column/14628/
  • 厚労省通知「メールやチャットの診療」違法の恐れ、オンライン診療はリアルタイム情報が必要、キャンセル不可や高額処方などトラブル増加の報告も【連載・厚労省通知】
    https://biyouhifuko.com/news/column/14644/
  • 厚労省通知で診療録作成・保存義務を再確認、記載漏れも「義務違反」の可能性、閉院後も保存対象、美容医療でもカルテの重要性高まる方向に【連載・厚労省通知】
    https://biyouhifuko.com/news/column/14671/
  • 厚労省通知で「診療時間中、原則医師は常勤」のルール再提示、1954年の通知内容を挙げる、安全体制の不備も違法と説明 美容クリニックに求められる組織のルール【連載・厚労省通知】
    https://biyouhifuko.com/news/column/14789/
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    https://biyouhifuko.com/news/column/14839/
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    https://biyouhifuko.com/news/column/14902/
  • 厚労省通知「美容医療に関する取扱いについて」、警察対応も明確化、無資格施術などは刑事事件にも、消費生活センターとの連携も指示【連載・厚労省通知】
    https://biyouhifuko.com/news/column/15030/

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ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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