
厚生労働省。(写真/Adobe Stock)
厚生労働省が2025年8月に出された美容医療に関する通知をもとに、その内容を連載形式で伝えている。
前回は診療録、いわゆるカルテの記録のルールに関して伝えたが、今回は一般的な病院や診療所の組織としてのルールについて。
管理体制、安全管理、広告の適正化について、法的な根拠を示しながら注意喚起した。
管理者の「長期不在」は法令違反

美容クリニック。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 医療法の規定 → 医療法第10条で、病院・診療所の開設者は臨床研修修了医師を管理者に置く必要があるとされ、第15条ではスタッフの監督と注意義務が定められている。
- 常勤の原則 → 厚労省は1954年通知を再確認し、「管理者は診療時間中は原則常勤すべき」と明示した。
- 例外と違反 → 医師不足地域や育児・介護などやむを得ない場合は常勤でなくても可。ただし「常時連絡が取れる体制」が条件で、長期不在は医療法第15条違反となる。
通知では、医療法第10条により、病院や診療所の開設者は臨床研修修了医師(または歯科医師)を管理者に置くことが定められていると説明。さらに第15条では、管理者は医師をはじめスタッフを監督し、必要な注意をすると記載されていることを示した。
その上で、厚労省は、「管理者は原則として診療時間中は常勤すべき」とする1954年通知を再確認。
例外的に常勤でないことが認められるのは、医師の人数が少ない地域、育児や介護などやむを得ない事情がある場合などとした。ただし、この場合でも、「常時連絡が取れる体制」を整え、責務を果たせることが条件と説明している。
管理者が長期間にわたり不在で、現場を実質的に統括できない状態は医療法第15条違反と示した。
厚労省が通知で示したこともあり、今後は、自由診療の美容クリニックなどでも、医師が常勤かどうかがより厳しく見られると考えられる。
安全管理体制の整備も義務

研修が重要。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 医療安全体制の義務 → 管理者には医療安全を確保するための措置を講じる義務がある。
- 通知で求められる2つの柱 → ① 医療安全指針の文書化(事故報告、再発防止、相談対応など) ② 職員研修の実施と記録(年2回程度、職種横断的に開催)
- 安全・広告の適正化 → 医薬品・医療機器の安全管理体制の構築が必要であり、不備は医療法違反の対象。 医療広告では、広告可能事項以外の表示や誤認を招く表現は違法とされた。
これに加えて、医療安全の体制についてのルールも示された。
通知によると、医療法第6条の12および施行規則第1条の11では、管理者に医療安全を確保するための措置を講じる義務が課されている。
通知で求められる主なポイントは2点。一つは、医療安全指針として、事故報告や再発防止策、相談対応などを文書化しておくこと。もう一つは、医療安全に関して職員研修の実施と記録を行うこと。通知では、職種横断的に年2回程度開催することが望ましいとした。
副作用報告を含む医薬品や医療機器の安全管理体制も併せて構築が必要とした。一般的に病院やクリニックでは、このような安全管理体制が不備であれば、医療法違反として指導や行政処分の対象となるとしている。
通知では、医療広告の適正化についても改めて注意喚起がなされた。医療広告は、広告可能事項以外は原則禁止で、誤認を招く恐れのある内容や、根拠の乏しい表現は違法となるとした。
詳細な運用基準や具体的なNG表現は、ヒフコNEWSの「医療広告ガイドライン」連載で詳しく解説している。
今回の通知は、医師個人というよりも、「組織としてのルール」を求めるものとなる。
美容クリニックの組織が法律に従って安全かつ安心に運営されることが、今後ますます求められるだろう。
