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世界の美容医療は今どうなっているのか 製剤編 欧州に個性的な会社が多い一方で、韓国の動きが目立つ 世界の美容医療の今を知る Vol.2

カレンダー2026.1.17 フォルダー連載・コラム

 世界の美容医療について前回はクリニックの状況を見たが、続いて製剤の状況を見ていく。

米国に拠点を置く大手とは?

注入製剤の世界とは。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

注入製剤の世界とは。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 米国には、製薬企業のアッヴィ(AbbVie)のグループ、アラガン・エステティックス(Allergan aesthetics)がよく知られている。

 注入系の製剤であるボツリヌス製剤やヒアルロン酸製剤が、世界の多くの国で使用されている。「ボトックス(BOTOX)」はボツリヌス製剤の代名詞となっているが、これはアラガン・エステティックスの提供している製品の商品名だ。また、「ジュビダーム(JUVÉDERM)」も、ヒアルロン酸フィラーの商品名として広く知られている。脂肪溶解注射「キベラ(KYBELLA)」を提供している。

 このほか米国の企業にはエヴォルス(Evolus)がある。この会社は、「ジュヴォー(Jeuveau)」としてボツリヌス製剤を提供するほか、「エヴォリッセ(Evolysse)」としてヒアルロン酸製剤も提供する。

 このほかレバンス(Revance)、クラウン・ラボラトリーズ(Crown Laboratories)、タイガー・エステティックス(Tiger Aesthetics)といった会社がある。タイガー・エステティックスは、複数の会社の買収を続けている。

欧州はスイスに多彩な企業

施術とスキンケアを統合した美容医療を進める。(出典/ガルデルマ)

施術とスキンケアを統合した美容医療を進める。(出典/ガルデルマ)

 欧州の注入系製剤メーカーは、中心がスイス、ドイツ、フランス。ここに英国やオーストリアなどの中堅メーカーが重なる。

 スイスに本社を置く企業として知られるのがガルデルマ(Galderma)。ヒアルロン酸フィラーでは「レスチレン(Restylane)」シリーズが世界的に広く知られる。加えて、バイオスティミュレーターとして「スカルプトラ(Sculptra)」も同社の主なブランド。

 ボツリヌス製剤については、歴史的には提携関係の中で「ディスポート(Dysport)」などが「ガルデルマのラインナップ」として認知されている。ガルデルマでは、溶かす操作が必要ない液状タイプなど、新しい形の製品の打ち出しも進む。

 化粧品世界トップのロレアルがガルデルマの出資比率を高めているのは今後の美容医療の世界の変化を予測する上では注目される。

 このほかスイスのテオキサン(Teoxane)はヒアルロン酸フィラーを展開している。また、IBSAはヒアルロン酸のほか、「プロファイロ(Profhilo)」に代表されるスキンブースターを提供する。

 プロフェッショナル・ダーマ(Professional Derma)は、「ジャルプロ(Jalupro)」というアミノ酸とヒアルロン酸を組み合わせた新しいアプローチの製剤を展開する。

 レジェン・ラボ(Regen Lab)は、多血小板血漿(PRP)などの製品を提供している。

欧州のコラーゲンブースターなど存在感

グループでデバイスも手掛けるドイツのメルツ。(出典/Merz Pharma)

グループでデバイスも手掛けるドイツのメルツ。(出典/Merz Pharma)

 ガルデルマのラインナップとして知られるディスポートを供給しているのはフランスのイプセン(Ipsen)だ。フランスは、ヒアルロン酸フィラーの中堅メーカーの層が厚い。例えば、ヴィヴァシー(Laboratoires VIVACY)の「スタイレージ(Stylage)」、フィルメド(FILLMED)の「アート・フィラー(ART FILLER)」などが知られる。

 ドイツでは、メルツ・ファーマ(Merz Pharma)が知られる。メルツはボツリヌス製剤として「ゼオミン(Xeomin、欧州名ではBocouture)」を持ち、ヒアルロン酸フィラーでは「ベロテロ(Belotero)」、さらにコラーゲン刺激や支持性の文脈で語られる「ラディエッセ(Radiesse)」も擁する。メルツは、米国にデバイスの研究拠点を持ち、HIFU(高密度焦点式超音波照射器、ハイフ)の一種とされるウルセラの開発元として知られる。

 英国ではシンクレア(Sinclair)が知られる。注入領域ではヒアルロン酸のほか、「エランセ(Ellansé)」などバイオスティミュレーター系のブランドで知られる。

 オーストリアのクローマ・ファーマ(Croma-Pharma)も、PRPなどの治療で知られる。

 イタリアのマステリ(Mastelli)が、核酸系のPDRN(ポリデオキシリボ核酸)製剤を展開する。

 スペインのスカイメディック(Skymedic)がヒアルロン酸製剤などを提供している。

 欧州はヒアルロン酸やボツリヌス製剤に加えて、スキンブースターをはじめ新しいカテゴリーの製剤を生み出す動きが目立つ。

韓国のメーカーが世界に製品展開

リジュランを手掛けるファーマリサーチ。(出典/PharmaResearch)

リジュランを手掛けるファーマリサーチ。(出典/PharmaResearch)

 欧州では複数の国にメーカーが分散しているのに対して、アジアでは、韓国にメーカーが集中している。

 韓国では、ヒューゲル(Hugel)、メディトックス(Medytox)、デウン製薬(Daewoong Pharmaceutical)、ヒュオンス・バイオファーマ(Huons Biopharma)といった企業がボツリヌス製剤を展開する。

 ヒアルロン酸フィラーについては、LG化学(LG Chem)が「イボワール(YVOIRE)」のブランドを展開する。

 ここに欧州のように、スキンブースターの動きが加わる。

 韓国では、ポリ乳酸系(PDLLAなど)のほか、核酸系(PNなど)の製剤がバリエーションを増やしている。

 ヴァイム(VAIM)が、ポリ-DL-乳酸の「ジュベルック(Juvelook)」や「レニスナ(Lenisna)」で知られる。

 核酸系の象徴である「リジュラン(REJURAN)」を展開するファーマリサーチ(PharmaResearch)は、サーモン由来のポリヌクレオチド(PN)を投与する手法を世界に広げた。BRファーマ(BR PHARMA)のような競合会社も出ており、動きが活発だ。

 ケアジェン(Caregen)は、ペプチドなどの複合した成分を配合した製剤を展開。ハンスケア(Hans Care)が人由来コラーゲン(hADM)製剤を提供するなど、新しい動きも出ている。

 韓国は、製造だけ行うOEM(相手先ブランドによる供給)メーカーも多く、他のブランドで売られているものが、実際には韓国のメーカーで作られているという状況も珍しくなくなっている。

 韓国は、欧米の存在が大きかった注入製剤の状況に変化をもたらす地域になりつつある。

 一方で、日本は、ボツリヌス製剤やヒアルロン酸フィラーなどの注入系の製剤を、米国、欧州、韓国に本社を置く企業から取り寄せて使っている。日本生物製剤(JBP)のように、ヒト胎盤由来のコラーゲン製剤を開発する動きもある。

中南米やイスラエルで製剤を生み出す動き?

 国際的にも美容医療が盛んなブラジルでは、クリスタリア(Cristália)がボツリヌス製剤を展開するほか、クリスタリア(Hialurox)がヒアルロン酸製剤を展開する。

 中南米は美容医療が世界的にも盛んであり、今後、製剤を生み出す動きが一層活発になる可能性はある。

 このほかイスラエルでも、欧米や韓国のように多数の企業が集積しているわけではないものの、ヒアルロン酸やコラーゲンのメーカーが存在する。

 ホルーラ(Hallura)は、ヒアルロン酸製剤を提供している。2022年にノーベル化学賞の対象になった技術であるクリックケミストリー(Click Chemistry)を応用したヒアルロン酸の架橋技術を特徴とする。

 2020年に、米国アラガン・エステティックスが、イスラエルのヒアルロン製剤のメーカーであるルミネラ・ダーム(Luminera Derm)を買収している。ルミネラは、ヒアルロン酸とハイドロキシアパタイトを組み合わせた製剤ハーモニカ(HArmonyCa)を開発する。

 また、コラーゲン分野ではコルプラント(CollPlant)が、植物由来の遺伝子組換え技術を用いたヒト型コラーゲン(rhコラーゲン)を開発する。

 世界の各地で新しい動きが続々と出ている状況だ。

 一方で、日本では、ほとんどの製剤が承認されていない。そうした状況の中で、さまざまな製剤が使われている状況をどのように変えていくかは課題となる。

参考文献

 【KIMES 2025レポート】PN・PDRN製剤に注目集まる、リジュランが関心を高める中で競争活発、バイオスティミュレーターの有効性や安全性の裏付けも重要に
https://biyouhifuko.com/news/column/12098/

 「hADM」は日本でも注目される?人由来の注入製剤とは、感染リスクなど製品の安全性には課題も、韓国医師がAMWC Japan 2025で発表
https://biyouhifuko.com/news/japan/15303/

【補足】
・イスラエルの製剤メーカーの動きを追加しました。(2026/1/18)

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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