
裁判。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
PRP(多血小板血漿)にbFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)を添加した製剤により、皮下にしこりができるというトラブルが再び裁判に発展した。
この裁判に関連する未承認製剤による施術は日本国内で広く行われており、これを機に日本の美容医療の問題点が改めて問われる可能性がある。
ガイドラインで行わないことを推奨

注入がきっかけにトラブルが起きるケースも。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 新たな提訴→ PRP+bFGF施術後のしこり発生をめぐり、3人の女性が美容クリニックを提訴との報道。
- ガイドラインの立場→ 日本の診療指針では「行わないことを弱く推奨」とされ、有害事象も報告されている。
- 承認外使用の課題→ bFGFは皮下注入で未承認であり、十分な説明と同意が不可欠。
複数の報道によれば、3人の女性が2026年2月に美容クリニックを提訴した。原因は「プレミアムPRP皮膚再生療法」と呼ばれる施術を受けた後に、想定外のしこりが生じたというものだ。この施術はPRPにbFGFを添加したもので、シワ改善や肌のハリ回復を目的に行われている。
女性らは2018年から2022年にかけて施術を受けたが、危険性について十分な説明を受けていなかったと主張している。今後、裁判で審理が進められる。
PRP+bFGFの問題は以前から指摘されてきた。PRP単独でも組織修復を促す作用はあるが、bFGFを加えることで細胞増殖刺激が強まり、過剰な増殖により硬結や膨隆などの合併症が起きる懸念があるとされる。
日本の「美容医療診療指針2021年度版」では、PRP+bFGFについて「行わないことを弱く推奨(提案)する」と記載されている。2019年度版でも同様の方針が示されていた。科学的根拠が限定的で、有害事象の報告があることが理由とされる。
同指針では「注入部の硬結や膨隆などの合併症の報告も多く、bFGFの注入投与は適正使用とは言えない」と指摘している。
さらに、bFGFは褥瘡や皮膚潰瘍の治療用外用薬として承認されているが、皮下への注入用途は承認されていない。承認外使用が直ちに違法となるわけではないが、十分な説明と同意が求められる。
加えて、PRP+bFGFの混合法はクリニックごとに異なるとされ、安全性を主張する医師もいれば、施術自体を否定する医師もいる。現場レベルで明確なコンセンサスが共有されているとは言い難く、一般の人が正確な判断を下すのは容易ではない。
昨年も同様な裁判が解決金で決着

解決金。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 過去の裁判例→ 同様の施術を巡る訴訟が解決金で決着したケースがある。
- 争点は説明義務→ 有効性そのものよりも、リスク説明の有無が重要な判断材料に。
- 制度整備の必要性も?→ 未承認製剤が広く行われている中で、過度にならない規制のバランスとは。
昨年もPRP+bFGFの注入を受けた人が美容クリニックを提訴し、解決金の支払いで決着したケースがあった。提供された施術は同じく「プレミアムPRP皮膚再生療法」と公表されている。
その裁判では、有効性や安全性そのものよりも、リスク説明を怠った説明義務違反が問題となった。
今回の裁判でも危険性の説明が争点となっており、説明義務がどのように判断されるかが注目される。一方で、安全性や有効性そのものについてどこまで踏み込むかは不透明だ。
美容医療では未承認製剤を用いた施術が広く行われており、PRP+bFGFに限らず副作用の報告はある。医療側にはリスク説明の徹底が求められ、受ける側も合併症の可能性を事前に理解する姿勢が不可欠だ。
また、美容製剤やデバイスの承認制度を整備する必要性も指摘される。韓国やオーストラリアなどの制度を参考に、日本でも実態把握と適切なルール整備が求められる。ただし規制強化が過度になれば市場の停滞を招く恐れもあり、バランスの取れた仕組みづくりが課題となる。
参考文献
PRP+bFGF、施術後しこりの訴えで美容クリニックが解決金、「リスクなどの説明義務を怠った」と裁判所は指摘、業界ガイドラインでトラブル防止目指せ【編集長コラム】
https://biyouhifuko.com/news/column/10825/
