ステマと美容医療 Vol.6 はじめしゃちょーも発言、インフルエンサーとステマ防止 消費者庁による検討会を振り返って考える⑥
ポイント
- 動画クリエイターの中には、ステマについて深く理解していない人もいるという
- ステマを防止することがインフルエンサーを守ることにもつながる
- クリエイターやインフルエンサーに対する啓蒙活動も行われている
2023年10月1日から、ステルスマーケティング(以降ステマと表現)は、景品表示法違反となった。
ステマ規制するにあたり、2022年9月16日から12月27日まで8回にわたって行われた、消費者庁による「ステルスマーケティングに関する検討会」を振り返りながら、消費者が注意するべき点について考えていく。今回は第6回。
動画クリエイターが語るステマの実際
連載の第1回で紹介したように、ステマには、大きく分けて「インフルエンサーによる紹介」と「不正レビュー」の2つがあるという。
美容医療に関する情報を収集する際においても、インフルエンサーによるコメントを参考にすることがあるかもしれない。では、インフルエンサーたちはステマをどのように認識しているのだろうか。
6回目の検討会は、YouTuberのマネジメント会社であるUUUMから、ステマを防止するための取り組み状況やステマ規制に対する考え方をヒアリングする内容で行われていた。また、デジタルコンテンツを作るクリエイターとして、UUUMに所属している動画クリエイターのはじめしゃちょーさんもヒアリングに出席した。
はじめしゃちょーさんによると、動画制作においては、視聴者のために撮るというよりも、むしろ自分が面白い、作りたいと思うコンテンツを作って見てもらうというスタンスを大切にしてきたという。
その中で動画の視聴者数や再生回数が増えたり、安定してきたりした結果、企業とのタイアップの仕事が増えてきたという。
企業とのタイアップの仕事については、必ずPRの表示をする、ステマにならないように気をつけるなど、さまざまな決まりがあるが、基本的には所属しているUUUMに相談し、守るべきことを決めてもらうようにしているという。
その結果、分からないことがクリアになり、安心して動画を制作することができるとはじめしゃちょーさん。一方で、クリエイターの中にもステマの何が悪いのか、何をしたらステマになるのか、あまり深く理解していない人もいると述べた。
インフルエンサーが世の中に与える影響
続いて、はじめしゃちょーさんが所属するUUUMから、ステマ防止の取り組みに関する説明がなされた。
UUUMの主力商品として「タイアップ動画」というものがある。これは、クライアントとクリエイターの両者で対話しながらコンテンツを制作し、クライアントのサービスや商品の紹介をするもの。
コンテンツを流す先はYouTubeに限らず、他のソーシャルメディアに展開したり、SNSに投稿したりと、さまざまな形があるそうだ。UUUMの商品には、タイアップ動画以外にもテレビCMやデジタル広告などがあるという。
そのような商品を制作する際に重視しているのは、クリエイターのアカウントから情報発信するものについては、広告主と会話をしつつも、クリエイター自身の声を伝えられているかどうかを考えているという。
クリエイター自身も、有名になればインフルエンサーとして世の中に影響を与える存在となるため、世の中に悪影響を与えないように、また誤解を招かないように、様々な角度から審査をしながらコンテンツを制作することを心がけているという。
クライアントとの関係性の明示については、特に重要視しながら活動しているという。
クリエイターやインフルエンサーが法に触れるようなことをしてしまうと、彼らの人生に影響することになるため、クリエイターやインフルエンサーをサポートする会社として、UUUMでは彼らを守ることを重要視しながらサポートにあたっていると強調する。
クリエイター・インフルエンサーへの啓蒙活動
検討会の委員とUUUMとの間で質疑応答が行われていた。その内容の一部を紹介する。
新経済連盟事務局政策部の片岡康子氏からは、「メーカーから無償提供された商品を動画で見せることや、そのような商品の取り扱いについて、クリエイターに注意喚起していることはあるか」という趣旨の質問があった。
これについて、「費用をもらってプロモーションする場合には関係性の明示が必要」とした上で、無償提供された商品を紹介する際には、“強制があるか、ないか”が重要であり、強制がない状態でクリエイターやインフルエンサーが自分の感情に正直に情報発信するのであれば全く問題がないという考え方が示された。
弁護士(北尻総合法律事務所)の壇俊光氏からは、「ステマを規制すると自由な表現ができなくなるという意見について、そのようなやりにくさを感じているか」といった疑問についての質問があった。
これについて、「インフルエンサーやクリエイターと話し合いをしており、正直な感情からの情報が発信できていない場合は、きちんとクリエイターやインフルエンサー自身の言葉に変換するようにしている。ステマの規制が自由な表現を奪うとは特に感じていない」という考え方が示された。
神戸大学大学院法学研究科教授の中川丈久氏からは、「個人で活動しているクリエイターやインフルエンサーに対して、ステマ防止についてどのように周知していくべきか」という点について、アイデアが求められた。
これに対して、ステマを防止するための啓蒙活動として、事務所に所属しているクリエイターやインフルエンサーを対象に、年に2回の研修を行っているという取り組みが紹介された。個人で活動しているクリエイターやインフルエンサーにも研修の内容が伝わっていくよう、今後も活動を続けていくことがステマ防止に繋がっていくのではないかという考えが述べられたようだ。
「パフィング」の問題と美容医療
あらかじめ広告とわかっている情報に関しては、「広告ならば事実を多少誇張した表現(パフィング)が行われている」ということを、美容医療の消費者は了承しているだろう。
だからこそ、広告ではない「自由な発言」に注目が集まる傾向があり、レビューやインフルエンサーのコメントには、そのような忖度のない意見が求められていると言えそうだ。今回の議論を踏まえると、インフルエンサーに強制するような動きがあれば、それは問題ととらえられる可能性がある。
このような「正直な感情」の情報発信が健全に行われるためにも、消費者が「情報に安易に踊らされない」という視点を持ち続けることが必要なのだろう。
消費者が情報を吟味する習慣をつけることで、ステマのような悪質な情報が少しずつでも淘汰されていく可能性がある。
広告主やクリエイター、インフルエンサーに適正な啓蒙が行われると同時に、消費者も騙されない土壌を作ることで、健全かつ有意義と言える発信が増えていくのだろう。
参考文献
ステルスマーケティングに関する検討会
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/meeting_materials/review_meeting_005/
第6回 ステルスマーケティングに関する検討会(2022年11月11日)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/meeting_materials/review_meeting_005/030681.html
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