今年3月に厚生労働省が改訂した「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書」(第4版)のポイントを解説する連載。
最終回は、SNSや動画における医療広告で、禁止される例や不適切な例について紹介していく。
SNSや動画サイトにおける広告形態と主な違反形態
メディアによっても異なるが、SNSでは次の構成によって医療広告が行われている。
- プロフィール
- 投稿
- 返信
投稿に文字制限があるメディアの場合、自らの投稿に返信を行うことで、一連の医療広告として情報提供を行うケースもある。
また、動画サイトにおいては、次の構成によって医療広告が行われている。
- 動画
- タイトル
- 概要欄
SNSや動画サイトにおける主な違反形態は、これらの構成のいずれかに虚偽広告・誇大広告・比較優良広告・体験談等のガイドラインに抵触する内容が含まれているもの。
また、自由診療に関する「限定解除要件」の記載が不足している広告や、詳細な情報提供がなされていないビフォーアフター写真を掲載している場合も違反とみなされる。
※限定が解除される要件とは、制限がなくなり、その広告ができるようになるための条件のこと。基本的に、広告が規制されている事柄でも、一定条件を満たすと広告できるようになることがある。逆に言うと、その条件を満たさないのに広告している場合は問題となる。
限定解除要件の説明については、下の記事にて詳しく解説している。
限定解除要項と注意したい内容は?「ここをチェックして危ない美容医療から身を守ろう」vol.3
https://biyouhifuko.com/news/column/1968/
SNSにおいて禁止される体験談掲載の例
これまでの連載でも取り上げてきた通り、医療広告ガイドラインでは治療等の内容または効果に関して、患者自身の体験や家族等からの伝聞に基づく主観的な体験談の広告を行ってはならないことになっている。
SNSにおける医療広告においても、体験談の広告は禁止となっている。それにもかかわらず、体験談を広告として掲載しているケースがあり問題となる。
SNSで、投稿欄に他者の投稿を引用することは一般的に行われている。しかし、クリニックのSNSアカウント上で、他者の体験談を引用してサービスの広告とすることは禁止されている。
そのような引用を用いた投稿はガイドライン違反となり、広告として禁止されていることを知っておくと良いだろう。
詳細説明のないビフォーアフター写真
ウェブサイトにおける事例の紹介でも取り上げたが、ビフォーアフター写真については、詳細な説明が記載されておらず、治療等の内容又は効果について患者等を誤認させる恐れがあるものについては、広告として使用することはできない。
これはSNSや動画サイトにおいても同様である。では、どのようなケースがガイドライン違反になるのか。
まず、ビフォーアフター写真のみが掲載され、説明が一切ないものについては違反となる。また、説明が付されているが、通常必要とされる治療内容・費用、主なリスク・副作用に関する説明が不足している場合も違反となるようだ。
さらに、説明はされているが、それが写真に直接付されておらず、自院のホームページ等のリンク先に記載されている場合も違反となる。
自由診療における限定解除
ウェブサイトにおける事例の紹介でも取り上げたが、自由診療については一部の例外を除いて広告可能事項には該当しないため、原則として広告できない。
しかし、広告可能事項の限定解除要件を満たし、かつ誇大広告などの禁止される広告に該当しない場合は広告できる。これはSNSや動画サイトにおいても同様である。
では、どのようなケースがガイドライン違反になるのか。
- 治療内容 SNSのプロフィールや動画のタイトル等で施術について記載しながら、治療等の内容の説明がない場合や、SNSの投稿や動画やその概要欄での補足説明が不十分な場合。
- 治療期間・回数 最低限の治療期間および回数しか記載されていない等、通常必要とされる治療期間や回数が記載されていない場合。
- 標準的な費用 最低金額のみが記載されている等、治療等に必要な標準的な費用が記載されていない場合。
- リンク先での説明 通常必要とされる治療内容、標準的な費用、治療期間および回数が、自院ホームページ等のリンク先でないと確認できない場合。
これらを違反のケースとして位置づけ、SNSであればプロフィール・投稿・返信の一連の広告の中で、動画サイトであれば動画・タイトル・概要欄の一連の広告の中で、通常表示されるべき治療内容、標準的な費用、治療期間及び回数を説明する必要がある。
3回の連載を通し、ウェブサイトやSNS、動画などの情報の中で、医療広告ガイドライン違反に当たる事例を見てきた。
消費者の気を引くような内容ばかりを前面に出し、消費者が警戒するような情報を積極的に開示しない広告は禁止されている。
トラブルに巻き込まれないよう、美容医療サービスに伴うリスクを正しく認識するとともに、事業者がそれを誠実に開示しているかを判断する視点を持つと良いだろう。