ヒフコNEWS 美容医療に関する最新ニュースをお届けするサイト

美容医療関連の新学会が第1回の学術総会どのような会になるか、TCB東京中央美容外科の演者が46%で大学病院などからも、より良い医療へ学会の役割は大きい【編集長コラム】

カレンダー2024.10.15 フォルダー連載・コラム

 10月11日に第1回日本美容医療学会の会場を訪ね、講演を取材した。今回のコラムでは、新しい学会ということもあり、学会の雰囲気について伝える。また、2024年における美容医療関連の学会の役割についても考える。

当日直接訪ねて取材した

 今回の学会は、一般社団法人日本美容医療学会が初めて開催した学術総会。同学会の代表理事は、TCB東京中央美容外科エリア統括院長の寺西宏王氏が務めている。この学会は2024年6月までは「日本美容外科手術手技研究会」という名称だった。

 美容医療に関連する学会としては、日本美容外科学会が、「JSAS」と「JSAPS」の2つの団体があるほか、日本美容皮膚科学会、日本美容内科学会などが存在している。日本形成外科学会や日本皮膚科学会、日本抗加齢医学会も関連が深い学会だ。国際的なAMWCといった会議も開催されている。そうした中で、日本美容医療学会はどのような学会として運営されていくのかが気になったポイントだ。

 私は医療関連の学会には25年間くらい、国内外多数の医学会に取材してきた。その経験から、学会による取材の受け入れ方は、その学会の特徴を知る一つの目安になると考えている。

 最近では、事前に取材を申し込んで、取材可能となる学会が多い。それでも、事前申し込みの締め切りが、開催の数日前の学会もあれば、約1カ月前に設定されている場合もある。過去には、取材ができない学会もあった。参加料については、取材に費用を取らない学会が多いが、費用を取る学会もある。

 日本美容医療学会の場合は、ウェブサイトには取材についての案内はなかったが、9月24日に取材依頼の問い合わせをした。しかし返信がなかったため、取材を受け入れていない学会なのかと思った。それでも、初回の学術総会でもあり、単純に忙しいなど特別な理由があるかもしれないと考え、当日会場に直接行ってみることにした。すると、取材受付をして、費用負担なく参加することができた。

 その後、開会式では、会長を務めた寺西氏が、参加者に対して準備段階で連絡がうまくいかなかったという趣旨の詫びの言葉を述べた。取材の問い合わせに返答がなかったのは忙しいなどの事務的な問題があったと理解した。

3つの部屋で19の演題

第1回日本美容医療学会学術総会のプログラム。(写真/編集部)

第1回日本美容医療学会学術総会のプログラム。(写真/編集部)

 学会自体は都内ホテルでA、B、Cの3つの部屋に会場が設けられ、午前午後、1日で行われた。

 美容医療関連の一般的な学会と比べると、第1回ということもあるだろうが、小規模だった。例えば、手元に日本美容皮膚科学会のプログラムがあるが、それを見ると、講演会場が9つあり、ハンズオン会場も5つ。この会場で2日にわたって行われるので、講演の数はかなり多くなる。

 なお、日本美容医療学会は、企業展示が通路で行われるスタイルであったが、日本美容皮膚科学会では展示のためだけの会場があるほか、通路でも企業展示が行われている。

 これらは特に期間の長さや会場の多さの良し悪しを言いたいわけではなく、あくまで学会の雰囲気を伝えるために書いているものだ。

 講演の日程表を見て気が付いたのは、顔についての講演が多いこと。眼瞼下垂手術や二重の手術などのまぶたに関する手術手技、フェイスリフト、糸リフト、フィラー注射などの顔の施術について、実際の施術がビデオや画像を交えながら発表されるものが多いように見えた。実際に数えると、全体で19の演題が設定されていたが、顔に関するように見える演題が12あると見られた。

 堀江貴文氏が「ビジネスと医療」のテーマで講演したり、形成外科の資格に関する演題があったり、年長医師のしくじりを語る教育的な演題、女性のキャリア形成の演題があったり、医師の働き方を考えるような演題が目立った。このほかは再生医療や内科、美容外科手術に関連する演題が設定された。

顔の施術が中心のプログラム

厚生労働省の会議では学会の役割が求められている。(写真/Adobe Stock)

厚生労働省の会議では学会の役割が求められている。(写真/Adobe Stock)

 実際に参加すると、現場の医師が、自分自身の施術経験をスライドを使って説明し、聴講する医師が質問をするという一般的な学会と変わらない。

 聴講していた参加者には、TCB東京中央美容外科の医師が複数おり、質問するときも「○○院の○○」と、TCB東京中央美容外科の院名と名前を名乗るというスタイルが定着していた。一方で、聴講する医師にも、講演をする医師にも、TCB東京中央美容外科の医師が多いと見られたが、講演する医師の中ではTCB東京中央美容外科に所属する医師は全体の半数以下だった。演者を数えると延べ48人が確認できたが、TCB東京中央美容外科の医師は22人で46%と計算された。TCB東京中央美容外科の医師が中心的であるが、外部の医師も積極的に招き入れていることを示している。

 今後、同学会がより幅広い医療機関からの参加を促進し、美容医療業界全体の発展に寄与することが期待される。日本には美容医療に関連した学会が多く存在し、それぞれが異なるニーズや情報を提供している。日本美容医療学会がその中でどのような位置づけとなり、どのような役割を果たすのか、参加する医師や業界関係者にとって重要な関心事である。

 厚生労働省では「美容医療の適切な実施に関する検討会」を開催し、美容医療に関連したトラブルの解決に向けて学会の協力にも期待が寄せられている。

 日本美容医療学会がこれらの課題にどのように取り組み、美容医療の質の向上や安全性の確保にどのように貢献できるかは注目される。

 美容医療をより良くしていくために、学会の果たす役割は大きい。

参考文献

美容医療医師「直美」の経歴とは?美容医療チェーン院長の独自調査、初期研修後すぐに美容クリニックに入職4人に1人も
https://biyouhifuko.com/news/japan/7018/

厚労省会議で美容医療ガイドライン拡充を求める意見、「直美対策」「カウンセリング制度廃止」 も議論に、第2回美容医療の適切な実施に関する検討会
https://biyouhifuko.com/news/japan/8862/

「直美廃止」と「美容クリニック開業規制」へ新たな動き、都道府県や分野などでの医師の偏りを是正、9月5日「厚生労働省医師偏在対策推進本部」発足
https://biyouhifuko.com/news/japan/8964/

美容医療と形成外科医、専門資格の価値が競争激化とトラブル対応の中で重要視される動きも、日本形成外科学会を振り返って 【編集長コラム】
https://biyouhifuko.com/news/column/6780/

多様化する美容医療クリニック、情報発信の時代を迎えて、第112回日本美容外科学会JSAS総会も良いきっかけに、NHKが美容医療クリニックトラブルに注目【編集長コラム】
https://biyouhifuko.com/news/column/7567/

ヒフコNEWSは、国内外の美容医療に関する最新ニュースをお届けするサイトです。美容医療に関連するニュースを中立的な立場から提供しています。それらのニュースにはポジティブな話題もネガティブな話題もありますが、それらは必ずしも美容医療分野全体を反映しているわけではありません。当サイトの目標は、豊富な情報を提供し、個人が美容医療に関して適切な判断を下せるように支援することです。また、当サイトが美容医療の利用を勧めることはありません。

Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

お問い合わせ

下記よりお気軽にお問い合わせ・ご相談ください。