堀田和亮(ほった・かずあき)氏
医療法人社団SMILE LAND理事長/BIANCA CLINIC
- 健康と美容の一体化→ 肌の改善には内科的アプローチが重要。血液や体調、メンタル面を含めた総合的な治療を行い、健康的な美しさを目指す。
- 日本の課題→ 欧米に比べ、健康医療やアンチエイジング分野での取り組みが遅れており、ホルモン療法やサプリメント療法への理解が不足している。
- 美容内科の重要性→ データに基づいた個別化治療を提供し、美容医療の安全性と信頼性を高める取り組みが必要。
──日本の美容医療の状況をどう捉えている?
堀田氏: 私たちのクリニックは、美容外科クリニックの枠を超えた「ライフスタイルカンパニー」として医療を提供しています。
美容医療といえば「二重」「鼻」「肌治療」といった外見を整える施術が注目されがちです。しかし、これらは現在、ほとんどのクリニックで一定以上のクオリティで提供できる時代です。私たちもかつては施術を前面に打ち出していたことがありましたが、今ではどの施術が得意かを問うよりも、「来院された方のライフスタイル全体にどう寄り添うか」を考えるようになりました。
個々の悩みには、単なる美容的な要望を超えた背景があることが多いです。例えば、「クマを治したい」と相談される方でも、その背後には「若々しく見られたい」「自信を持ちたい」という深い願望が隠れています。ただクマを治すだけではなく、その方が本当に求めているものを理解し、全体的な満足度を高めることが私たちの目指す医療です。
また、肌を美しくする一つの目標をとっても、内科的なアプローチが必要になることがあります。血液の状態、体調、さらにはメンタル面まで総合的に見て治療を進めることが、より良い結果につながるのです。
こうした内科的な視点で健康的な美しさを追求することも、私たちが重視している点です。いくら外見を整えていても、不健康な状態では真の美しさとは言えません。私は、内側からオーラがあふれるような健康美を理想としています。その実現には、新しい医療技術も取り入れています。
私たちのクリニックでは、来院された方が複数の診療科を回遊し、総合的な治療を受けられる環境を整えています。例えば、婦人科的な悩みを抱えた方が皮膚科や内科の治療を受けることで、全身的な改善を図ることも珍しくありません。このような包括的なアプローチは、従来のクリニックではあまり見られないものですが、利用される方々に大きな価値を提供していると感じています。
──専門家が協力する。
堀田氏: 例えば、婦人科的な悩みで来院した方が、皮膚科や内科の治療を通じて全身的な改善を目指すケースも珍しくありません。こうした包括的なアプローチは、従来のクリニックでは見られない価値を提供しています。
日本全体の美容医療を見渡しても、健康医療やアンチエイジング分野での取り組みはまだ発展途上です。欧米に比べると大幅に遅れていると言っても過言ではありません。例えば、ホルモン療法やサプリメント療法に対する理解が進まず、それらが健康や美容にどれほど貢献するかの認識がまだ広がっていないのが現状です。これを改善することで、日本の美容医療全体がさらに発展すると信じています。
また、美容内科という分野は、今後さらに重要性を増していくと考えています。単なる処方で終わるのではなく、データに基づいた個別化治療を提供する必要があります。内科的なアプローチは、美容医療の安全性や信頼性を高める上では非常に重要な鍵だと思っています。
結局のところ、美容医療も健康的な基盤がなければ真の美しさは実現しません。だからこそ、私たちは外見の美しさだけでなく、心身の健康を追求した治療に取り組んでいます。この考え方をより多くの方々に届けるため、私たちはクリニックの垣根を超えた勉強会や研究会を開催し、美容医療の未来を切り開いていきたいと思っています。
- データに基づく治療→ 血液検査やエピジェネティクス解析を活用し、体内のビタミン・ミネラルバランスや生物学的年齢を測定。データを基に、具体的かつ科学的な治療を提供。
- 「ロンジェビティ」への注目→ 2025年には、健康的な長寿を目指す「ロンジェビティ」が注目され、暦年齢を超えた細胞年齢の若返りが目標となる。
- 治療法の標準化→ 日本美容内科学会などを通じて、再生医療やペプチド療法のデータを共有し、信頼性の高い治療を普及させることを目指す。
──美容内科や再生医療に注目している。
堀田氏: 美容内科や再生医療は、日本の医療を変革する重要な役割を担うと信じています。しかし、これらの分野はまだエビデンスが十分ではなく、不確かな治療法や製品が市場に出回っているのが現状です。この課題を解決するためには、適切なエビデンスの確立と、淘汰が欠かせないのです。
私たちのクリニックでは、治療を行う前に必ず詳細な血液検査を実施しています。例えば、「オーソモレキュラー療法」を活用し、体内のビタミンやミネラルのバランスを分析するほか、エピジェネティクスの視点から生物学的年齢を測定します。これにより、「良くなった気がする」といった主観的な感覚ではなく、具体的なデータに基づいた治療が可能になります。例えば、生物学的年齢は若返りが可能なので、暦年齢が増えても、細胞年齢は若返るということを伝えたいです。2025年は、健康的な長寿を目指す「ロンジェビティ(Longevity)」が注目されるでしょう。
さらに、こうしたデータを活用し、学会や専門団体を通じて治療法の標準化を推進することも重要だと考えています。例えば、日本美容内科学会のような場で、再生医療やペプチド療法のデータを示し、医師の間で共有することで、信頼性の高い治療を普及させる環境を整えていきたいと思います。
また、美容医療において「流行」や「トレンド」に過度に依存しない姿勢を持つことも必要です。ヒアルロン酸やカルシウム製剤など、新製品が登場するたびに話題になりますが、それらは一時的なものに過ぎません。1年後には別の製品が注目されるサイクルです。そのため、私たちが重視しているのは、一人ひとりのニーズに応じた治療を提供し、個々の満足度を高めることです。これこそが、私たちの医療の核であり、目指すべき方向性だと考えています。(続く)