
相川佳之(あいかわ・よしゆき)氏。SBCメディカルグループホールディングス CEO(写真/村田和聡)
相川佳之(あいかわ・よしゆき)氏
SBCメディカルグループホールディングス CEO
──湘南美容クリニックなどグループ医院に入職を希望する医師も多いといわれる。
相川氏: 私が経営支援を行う湘南美容クリニックには、約450人の医師が在籍しています。グループの中でも規模の大きなところと小さなところがありますが、規模の大きな医院で医師が多数在籍している場合もあれば、小規模な医院で1~2人で運営している場合もあります。例えば、新宿などの主要拠点では20人以上在籍していますね。
2024年時点で年間のべ326万件の施術を行っています。医師1人当たりの数は相当な数字ですが、非外科的治療、特に脱毛はリピート率が高いためです。皮膚科系の施術では、一度満足された方が継続して通うケースが多く、新規の増加と合わせて施術数は着実に伸びています。
──美容医療の需要は年々高まっているが、医師数も増加し競争は激化している。
相川氏: この20年ほどで美容医療市場は3000億円から6000億円に拡大しましたが、美容医療に参入するドクターは3倍以上に増えています。市場の伸びより医師の増加率が上回っており、結果として競争が激しくなっていると実感しております。
──いわゆる「直美」の経歴を持つドクターを積極的に採用している。
相川氏: 私たちのグループでは、直美の先生が入職した場合だけではなく、美容医療未経験の医師でも安全に診療に取り組めるよう、当院は25年間にわたり教育システムを構築してきました。
私たちは新任医師にはまず皮膚科治療の研修を実施しています。外科と皮膚科など元の所属を区別せず、皮膚科の基本的な注射治療を習得してもらうのです。その後、徐々に外科治療に対応できるようプログラムを整えています。
具体的には、習得の段階を4ランクに分け、「施術件数はどのくらいか」、「テストに合格したか」といった基準をクリアすることで、次のステップに進める仕組みを採用しています。
一般的な治療、例えば、二重術、目の下のたるみ、豊胸手術など、全体の7〜8割の治療についてはこの段階的プログラムの中で習得できるような体制を整えています。
一方で、もっとも難易度の高い手術については、所属している医師約450人の中でも、高度な技術を持つ30人が担当する体制を敷いています。

相川佳之(あいかわ・よしゆき)氏。SBCメディカルグループホールディングス CEO(写真/村田和聡)
──未熟さがトラブルにつながる指摘もある。
相川氏: トラブルには、麻酔や手術、皮膚科治療に関するものなど、様々な種類があります。
救命救急の現場で研修を積んだ医師の方が緊急対応はスムーズかもしれませんが、直美であるがゆえに対応力が欠けるわけではありません。
例えば、眼科分野の豊富な経験があっても、救命救急の訓練を受けていなければ同じように難しいですし、形成外科の分野での長年の経験があっても、救命救急に触れていなければ急な対応は困難です。
大切なのは、手術時のトラブルを未然に防ぐために、しっかり人体の構造を正しく理解している医師が対応することです。また、若手を含む多様なバックグラウンドの医師が、得意分野ごとに連携できる体制を整えることも極めて重要です。
──トラブル関連では施術後のアフターケアも重要になる。
相川氏: トラブルの中には仕上がりに対する不満の声もあります。そこで、業界内でも早い段階で保証制度を整えました。例えば、ボトックスの効果が不十分な場合は無料で再施術を行い、脂肪吸引で満足のいかない結果が出た場合は再施術、また二重のラインが不十分な場合も無料で修正対応を行っています。
モニターとして協力いただく方々には一定期間の経過観察を実施し、定期的に写真で状態をチェックするなど、徹底したアフターケア体制を整えています。
──美容医療分野でトラブルが多いことから、国がリードして業界ガイドラインの整備を進めている。ガイドラインの規制には期待が寄せられているが、美容医療全体を見ると依然として多くの課題が残る。
診断や治療方針の決定は医師が行うべきですが、実際にはそうしていない施設もあると聞いています。
医師以外の外部企業が美容医療に参入するケースもあり、業界全体としてルール逸脱が懸念されています。
私も日本美容外科学会(JSAS)の理事として意見を発信しております。新たなガイドラインの策定が進んでおり、私たちもガイドラインに従います。今後の業界ルール整備にも協力していく所存です。(続く)