
韓国在住美容インフルエンサーのスアオンニさん。(写真/スアオンニさん)
- 失敗から学んだ教訓→ ボツリヌス注射で口角が下がる、脂肪溶解注射でホルモンバランスが崩れるなどのトラブルを経験。
- 下調べの重要性→ 副作用への説明がなく、信頼できる情報やクリニックを見極める必要性を痛感。
- チェックポイント→ クリニック選びでは、受付、看護師、室長、院長それぞれの対応を重視している。
──多くの失敗を経験してきたと聞いた。
スアオンニさん: 本当にいろいろな施術を受けて、反省の連続でした。むしろ、失敗ばかりだったといってもいいくらいです。
そのような中、もともとフェイスブックで情報発信を始め、自身の経験を伝えることで、SNSのフォロワーさんが増え、気が付いたらインフルエンサーと呼ばれるようになりました。スアオンニという名前も、フォロワーさんから「韓国名があった方がいいのでは」と勧められたことから、投票によって決めたのです。韓国のよくある名前である「スア」と、お姉さんを意味する「オンニ」を組み合わせています。
──フォロワーの支持も厚い。
スアオンニさん: 私の情報発信が広く知られるようになったきっかけとなる出来事がありました。イスラエル「InMode(インモード)」の高周波照射器を韓国でいち早く体験し、情報を発信したことです。米国で先に流行し、その後、韓国でも広まり始めました。私もその流行が始まった頃に、実際に体験しました。これは脂肪細胞を熱で破壊する施術で、数週間後にフェイスラインが目に見えて引き締まりました。日本ではほとんど知られていない時期で、私の情報発信を通じて、日本でも知られるようになりました。これが日本の美容皮膚科で導入が進むきっかけの一つとも聞いています。
──これまでにどんな失敗が?
スアオンニさん: 美容医療を最初に受け始めたのは2020年頃でした。シミやシワも気になっていたのですが、「まず顔の輪郭が気になったため、ボツリヌス療法を受けに行ったのです。
このときは本当に知識がなく、家から近いというだけで選んだ一般の皮膚科で打ってもらいました。美容医療を専門としていないようなクリニックです。この時、施術の後から口角が下がって2カ月ほど笑えなくなりました。クリニックから副作用の説明を受けておらず、医師に笑えなくなったことを訴えても「そのうち戻るから大丈夫」と言われるばかりで、対応してもらうのをあきらめるしかありませんでした。
韓国は美容医療が進んでいると言われていますが、そういう副作用に悩まされることあるのです。
脂肪溶解注射を受けたこともありましたが、同じように痛い経験をしました。ステロイドが含まれた製剤を何度も注射し、ホルモンバランスに影響が出たのです。施術のせいで不正出血が起きました。いったい何だろうと思っていたのですが、そのときも副作用について教えてもらえませんでした。私は下調べをせずに施術を受けていました。
このような失敗を経て、手軽な施術にもリスクがあると学び、慎重にクリニックや施術を選ぶようになりました。
──美容医療の受け方が変わった。
スアオンニさん: 美容医療への興味そのものは消えませんでした。失敗の悔しさを感じながら、韓国語のレビューを読むなどして、ひたすら情報を集めました。情報は玉石混交で、広告にまぎれたステルスマーケティングも多く見られます。書かれている内容が本当かどうか疑いながら、ひとつひとつ確認しました。
クリニックの設備、技術力、医師が専門医資格を有しているかどうかを確認しながら、実際に足を運び、良いクリニックを探しました。
例えば、シミの治療一つ取っても難しく、あちこち通ってもなかなか良くなりませんでした。調べた挙げ句、いくつかの施術を組み合わせて複合的な治療を行うクリニックに、2週間に1回の頻度で10回ほど通い、大きく改善しました。
本当に気に入るクリニックに出会うまでには、多くを学びました。
クリニックを選ぶ際にチェックするのは、4つの点です。受付、看護師、室長、院長それぞれの対応です。

韓国在住美容インフルエンサーのスアオンニさん。(写真/スアオンニさん)
- 室長の役割→ 韓国では院長によるカウンセリングは少なく、カウンセリングは主に「室長」が担当。
- 室長の影響→ 室長の対応次第でクリニック全体の評価が変わる。押し売りのない誠実な対応が信頼とリピーターを生む。
- 室長の課題→ ノルマを優先して不必要な高額施術を勧める室長も存在。事前に役割を理解し見極めが必要。
──「室長」は韓国ならではの存在。
スアオンニさん: 韓国では、来院してきた方には、院長によるカウンセリングはほとんどありません。カウンセリングの中心になるのが室長です。場合によっては室長が院長を呼び、同席することもありますが、基本的には室長がカウンセリングを担当します。
例えば、韓国では最初にカウンセリングルームに案内され、室長によるカウンセリングが始まります。室長が3Dの画像を撮影する機械で肌の状態を把握し、それを基にシミや毛穴などの数値化をします。
それを見ながら、本人に肌の状態を理解してもらった上で、どこが気になるかを確認し、本人の希望とクリニック側の提案を照らし合わせ、施術内容を案内します。
──室長の役割は正しく認識されている?
スアオンニさん: 韓国で室長の役割が重要であることは、日本ではあまり知られていないかもしれません。室長によって、そのクリニックの評価が大きく変わることもあります。
相手の立場になって提案できる室長がいることが重要だと考えています。「今日は試しに来ているだけ」「お悩みを本格的に解決したい」など、相手の悩みを的確に見抜く力がある室長もいます。押し売りを一切しない姿勢から信頼が生まれ、その結果、リピーターが増えるという良い流れにつながります。
これは日本のカウンセラーにおける課題にも共通すると思いますが、韓国でも来院した方のニーズにかかわらず、売上ノルマを優先し、高額な施術など、自分が売りたいものを無理に勧めてくるような室長もいます。
韓国における室長の役割は、事前に理解しておくべきだと思います。
──クリニック選びでは特に院長と室長の見極めが重要。
スアオンニさん: 特に室長と院長がどんな人物かが、そのクリニックの質を左右すると考えています。
それが難しいのは、室長は良いが院長が良くない場合や、逆に室長は良くないが院長が良いというケースもあります。両方が良いというクリニックは、非常にまれだと感じています。
美容医院を選んで思うのは、完璧な医師もクリニックも存在しないという前提で、探すしかないのだということです。そのような状況下でも、できる限り対応の良いクリニックを選ぶことが大切です。
最終的には、信頼できるクリニックに出会っていただきたいと思います。不快な経験をされる方が、これ以上増えないことを心から願っています。(終わり)
