
咲くらクリニック院長の小林直隆氏。(写真/編集部)
小林直隆(こばやし・なおたか)氏
咲くらクリニック院長
- 診療体制→ 開業当初は保険診療8割・美容診療2割だったが、現在は保険診療5割・美容診療5割に変化。20室の処置室と30台超の機器を導入し、効率的な治療を目指している。
- Sofwaveの導入→ 日本国内でも初期に導入し、自身でも最長使用者と思われるほどの経験を持つ。
- 施術導入の姿勢→ 新機器は医師本人・家族・スタッフで効果と副作用を検証後、納得できたものだけを患者にも使用する方針。
──愛知県安城市で開業して21年。現在の診療体制は。
小林氏: 開業当初は保険診療が8割、自由診療としての美容診療が2割でしたが、ここ数年で美容のニーズが急増し、現在は保険診療が5割、美容診療が5割ほど(人数)となっています。院内には診察処置部屋が20室あり、レーザー、高周波、超音波など、大小合わせて30台を超える美容医療機器を導入しています。過去には一部屋に4台の機器を詰め込んだこともありますし、廊下には使われなくなった機器が眠っていることもあります。自分でも「機械オタク」だと自覚していますが、新しい技術を取り入れることで、最短距離で治すための選択肢が広がると考えています。最短距離で治すとは、正確な診断のもと、必要かつ十分な手段を選び、無駄に通院を長引かせないことです。
──例えば、Sofwave(ソフウェーブ)をいち早く導入した。
小林氏: ソフウェーブを導入したのは、日本国内でもごく初期、数台目に入るほど早かったと思います。また医師自身でソフウェーブの施術を受けている期間が最も長いのは私ではないかと思います。
現在一般的にたるみ治療で知られているHIFUについては、一昔前から価格が下がったことで、多くのクリニックで導入が進みました。もちろん当院でも所有しています。実際に使ってみると、HIFUにはいくつかの課題もありました。施術直後にはフェイスリフト効果が見られる一方で、1カ月ほど経つと効果が失われ、持続性に乏しい印象があるのです。私は当初から、HIFUは狙った効果が出づらいと感じていました。また施術を受けたスタッフの頬がこける変化が見られたため、以降は積極的な使用を控えるようになりました。
──最近では、そのソフウェーブを評価している。
小林氏: Sofwaveは、真皮の中層に向けて超音波並行ビームを照射し、表皮には同時に冷却機能が働く設計になっています。導入当初はHIFUと同様に、1カ月程度で効果が薄れるのではないかと予想していました。しかし、一番最初に妻に施術を行ったところ、4時間後には明らかなリフトアップ感が現れ、それが約8カ月間も持続したのです。その効果には正直、驚かされました。それが2021年の秋のことです。以来、HIFUは部分的な脂肪減少目的で使用を継続しつつ、リフトアップ施術の中心にはSofwaveを据えるようになりました。
新しい機器を導入する際には、まず私自身が試し、また、スタッフや家族など身近な人にも受けてもらって評価します。
そこで効果や副作用の有無を慎重に検証します。自信を持って他人にも勧められると判断できた段階で、実際の診療でも積極的に使っていくようにしています。

咲くらクリニック院長の小林直隆氏。(写真/編集部)
- 中京圏と東京の違い→ 東京でブームが落ち着いた施術が、2〜3年後に中京圏で人気化する傾向がある。
- 東京進出の目的→ 収益だけでなく、遠方通院の患者への配慮と、結婚や出産で職場を離れた医師への教育支援を重視。
- 個人クリニックの強み→ 医師が全行程を一貫して担当し、顔面の解剖を熟知した上で安全性と効果を両立。診断と施術の質を重視する姿勢が明確。
──中京圏と東京でトレンドに差はある?
小林氏: あります。東京で一度ブームが沈静化してから、2〜3年後に中京圏でその施術に火がつくという例は少なくありません。安城本院では東京でのブームが落ち着いた頃に「これをやってみたい」と希望されることがよくあります。
──そうした中で東京にも進出した。
小林氏: 首都圏など遠方から愛知県安城市の本院まで通院される方が増え、そのご負担を思うと、大変申し訳なく感じていました。ちょうどその頃、ニキビ治療で実績のある名門クリニックを継承するという話をいただき、2024年に正式に引き継ぎました。
もう一つ、私が東京に進出した理由として、教育に力を入れたいという思いがあります。これまでにさまざまな医師と出会いましたが、中には結婚や出産をきっかけに職場を離れる方もいます。その結果、復帰の場を失ってしまうケースも少なくありません。医師として高い能力を持ちながら、キャリアを中断したことで学ぶ機会すら得られなくなっている方も多くいます。私は、そうした医師たちに学び直す機会を提供し、現場への復帰を支援したいと考えています。
東京に出たのは、収益を高めることだけが目的ではないのです。
──チェーンクリニックが増える中、個人クリニックの強みは。
小林氏: 私は形成外科で顔面の解剖を徹底的に学び、特にリスクの高い部位について深く理解しています。診断から照射設定、アフターケアに至るまで、一貫して私自身が担当しており、その積み重ねた経験が施術の質に直結しています。
美容医療機器は、ただ導入するだけでは意味がありません。出力、照射深度、照射方法を正しく理解し、神経や血管の走行を把握した上で、安全かつ効果的に使用する必要があります。そうしたきめ細やかな対応が可能な点は、個人クリニックならではの大きな強みだと考えています。
チェーンクリニックの中にも優良な施設はありますが、中には診療がカウンセラー主導で進められ、医師は診察や説明を行わずに同意と署名だけする、といったケースも見受けられます。だからこそ、「誰が実際に診断や施術を行うのか」は、受診する本人が必ず確認しておくべきポイントだと思います。
プロフィール
小林直隆(こばやし・なおたか)氏
咲くらクリニック 院長
1996年三重大学医学部卒業。東京大学形成外科、山梨大学皮膚科、自治医科大学形成外科などで診療経験を積んだ後、2003年に咲くらクリニックを開設。アトピー性皮膚炎、ニキビ、酒さなどの慢性皮膚疾患をはじめ、美容レーザーなどの医療機器の導入を進め、保険診療としての皮膚科診療と自由診療としての美容医療の両面で幅広い治療に携わる。シネロンキャンデラ社、サイノシュア社、マルホ、サノフィー社などの講師として全国で多数の講演を行う。
