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美容だけではなく「身体の悩みの解決」の要素も大きい乳房縮小術、バストのサイズダウンという選択肢の実際、神戸大学客員教授の原岡剛一氏に聞く 後半

カレンダー2025.10.30 フォルダーインタビュー

 前回は、加齢や授乳で位置が下がったバストの位置を引き上げるバストリフトについて取り上げた。バストの手術というとバストのサイズを大きくする豊胸の印象が強いかもしれないが、胸の大きさを好みのサイズに整える発想もある。今回は「乳房縮小術」を取り上げる。文字通り、バストを小さくする手術だが、その効果はどういうものなのだろうか。引き続き、神戸大学客員教授の原岡剛一氏に、乳房縮小術を中心としたバストの手術のバリエーションと実際について話を聞いた。(聞き手/ヒフコNEWS編集長 星良孝)

原岡剛一(はらおか・ごういち)氏。(出典/原岡氏)

原岡剛一(はらおか・ごういち)氏。(出典/原岡氏)

原岡剛一(はらおか・ごういち)氏
神戸大学形成外科客員教授

  • 大きすぎる胸の悩み → バストが大きすぎて、見た目だけでなく日常生活にも支障をきたすケースがある。
  • 乳房縮小術の目的 → 胸を小さくするだけでなく、乳輪・乳頭の位置や形・ハリのバランスを整えることが重要。
  • 術後の満足度 → 外見の変化だけでなく、生活改善の声が多く、QOL(生活の質)の向上が実感されている。

──大きすぎる胸に悩む人がいる。

原岡氏: バストの美容医療と聞くと、「より大きく」する豊胸というイメージを抱く人は多いかもしれません。実は「胸が大きすぎて困っている」という悩みをお持ちの方も、決して少なくはないのです。

 バストが大きな方の中には「むしろこの胸がなければ」と思い悩んでいる方もたくさんおられるのです。見た目の問題だけでなく、日常生活への支障も大きいからです。背中や肩の痛み、下着が食い込む不快感、皮膚のかぶれ、運動のしづらさ。単なる審美目的ではなく、切実な生活上の悩みとして相談に来られます。

──胸を小さく整える手術。

原岡氏: 乳房縮小術は、バストのボリュームを適正に減らすだけでなく、同時に乳輪や乳頭の位置を調整し、バストのハリと形、位置のバランスを整えていくことが重要だと考えています。

 単に小さくするだけの術式もありますが、それでは満足につながりませんので、総合的にバランスを考える必要があります。決して簡単な手術ではありませんし、術式によってはとても長い距離を丁寧に縫合する必要があるので、手術時間もある程度必要です。

 どのように切開するかは、本人のご希望に、最終的なできあがり、乳頭や皮膚への血行を考慮しながら決定します。乳輪周囲のドーナツ状切除、縦切開、さらに乳房下溝に沿う横切開を加えた逆T切開などをおすすめしています。

──満足度が高い。

原岡氏: この手術は、外見の変化以上に「身体が軽くなった」「生活が変わった」と実感される方が多いです。「20年来の悩みが解決しました」「服を選ぶのが楽しみになりました」といった声に加え、「子どもと走れるようになった」という方もおられました。

 胸の大きさという悩みはなかなか理解しづらいのですが、「胸の重さから解放された」との声もお聞きしますし、「これまで胸の下にタオルを当てて、汗を吸わせてきましたが、それも不要になりました」という方もおられました。

  • 広まらない理由 → 手術を担える医師が少なく、形成外科的技術と美容外科的経験の両方が求められる。乳房再建経験を持つ医師でないと難しく、現状では受け皿が限られている。
  • 自由診療の強み → 自由診療だからこそ、胸の形・大きさに合わせたカスタムメイドの設計が可能。整容性を重視した仕上がりで満足度を高めることができる。
  • 美容医療としての意義 → 乳房縮小術は「美しさ」だけでなく「生活のしやすさ」を改善する手術であり、QOL(生活の質)の向上に寄与する。

──なぜこの手術は広まらないのか。

原岡氏: 最大の課題は、手術を担える医師が少ないことです。これはバストリフトとも共通した課題です。形成外科の技術、乳頭や皮膚の血流を保つための解剖学的理解、瘢痕を最小限に抑える皮膚縫合の技術など、いずれも一朝一夕では身につきません。形成外科での修練に加え、美容外科の知識と経験も必要になります。

 実際、私が神戸大学に勤務していた当時、この手術を希望して全国から女性が来院しておられました。今はまだ、このような手術を定期的にこなしている医療機関は多くないのが現状です。悩みを抱えている女性が希望していても、受け皿が少ないのです。

 乳がんの患者さんには乳房切除術が必要になることが多いのですが、最近は乳房再建手術が一般的になってきたこともあり、多くの患者さんが乳房再建を選択されます。たとえば右乳房にがんが生じ、右乳房を切除した患者さんが再建する場合に、元々のバストがとても大きい場合には左右のバランスを整えるために、乳房縮小術によって左乳房を縮小することも検討します。このような手術を経験してきた医師でないと、乳房縮小術を提供するのは難しいでしょう。逆に、そのような乳房再建外科医を経て、美容外科に進んだ美容外科医も増えていますので、今後さらに一般的な手術になることを期待しています。

──自由診療だからこそできることもある。

原岡氏: 自由診療だからこそ、整容性にこだわる必要があります。胸の形やサイズは千差万別ですから、一様な型にはめるのではなく、カスタムメイドで考える必要があります。それがより良い手術の仕上がりと、満足度の高さにつながります。

──「美容医療」の一つだが…

原岡氏: この手術を受けられた多くの方が「生活しやすくなった」と表現されます。単にきれいになったという以上に、生活の質(Quality of Life =QOL)が向上したことを実感できる手術なのだと思います。外見の変化が内面の変化を促すことも多いと感じています。

 残念ながら、乳房縮小術は、病気に対する治療ではなく、「外見」を変化させるだけ治療として考えられているので、美容医療の一つとして扱われ、健康保険は適用されません。が、実は乳房縮小術は外見を変化させるだけでなく、QOLを向上させることができる医療なのです。バストリフトや乳房縮小術はもっと多くの人に知ってもらいたいし、社会としてもサポートの仕組みがあってもいいと考えています。

プロフィール

原岡剛一(はらおか・ごういち)氏

原岡剛一(はらおか・ごういち)氏

原岡剛一(はらおか・ごういち)氏
神戸大学形成外科客員教授。1994年大阪市立大学医学部卒業。形成外科医として乳房再建を含む多くの領域を学び、美容外科に進む。神戸大学医学部附属病院美容外科診療科長などを経て、2023年より現職。ソウル大学形成外科客員教授兼務。現在Zetith Beauty Clinic大阪院(大阪心斎橋)、プリモ麻布十番クリニック(東京麻布十番)で美容外科診療を行っている。日本形成外科学会専門医・評議員・美容医療に関する委員長、日本美容外科学会(JSAPS)理事・専門医・学術教育委員長、日本美容医療協会理事・市民公開講座委員長などを歴任。美容医療のエビデンス確立と啓発に注力している。

記事一覧

  • バストのアンチエイジング、豊胸ではなく若返り、位置・張り・形を取り戻す、知られざるバストリフトの世界、神戸大学客員教授の原岡剛一氏に聞く 前半
    https://biyouhifuko.com/news/interview/15041/
  • 美容だけではなく「身体の悩みの解決」の要素も大きい乳房縮小術、バストのサイズダウンという選択肢の実際、神戸大学客員教授の原岡剛一氏に聞く 後半
    https://biyouhifuko.com/news/interview/15152/

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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