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肝斑治療はいきなりレーザーに行かない、まず整える期間、慎重なレーザー判断を「長期戦」で、Mスキンクリニック院長の中田元子氏に聞く Vol.4

カレンダー2025.12.5 フォルダーインタビュー
中田元子(なかた・もとこ)氏。Mスキンクリニック院長。(写真/中田氏)

中田元子(なかた・もとこ)氏。Mスキンクリニック院長。(写真/中田氏)

中田元子(なかた・もとこ)氏
Mスキンクリニック院長

  • 肝斑は「再燃を繰り返す長期戦」 → 紫外線・摩擦・ホルモンなど複数の因子が絡み、改善と再発を繰り返す。
  • まずは悪化因子の除去からスタート → 遮光の徹底やスキンケア指導を行い、トラネキサム酸内服やハイドロキノン外用などの保存的治療を基本とする。
  • レーザーは保存的治療の延長として慎重に追加 → 保存的治療で肌の状態を安定させた後、低出力レーザートーニングを検討。安全性を重視し、段階的に進めるのが原則。

──肝斑はどういう病気?

中田氏: 肝斑は、紫外線や摩擦、女性ホルモンなど様々な悪化因子があり、改善したり再燃したりを繰り返す、「長期戦」の疾患です。

 ですから最初に、肝斑は「いろいろな手段を組み合わせながら長期でコントロールしていくもの」という前提をきちんと共有することが大切だと思っています。

 ただし、その定義や捉え方にもよりますが、肝斑は決して特別な疾患ではなく、軽症例も含めれば、日常診療でよく目にするありふれた疾患であることも事実です。

──治療はどこからスタートする?

中田氏: まずは、遮光の徹底やスキンケア指導で悪化因子を排除することです。化粧やクレンジングで肝斑を悪化させている方は少なくありません。肌診断の画像をお見せしながら、現在の状態を詳しく説明します。その上でトラネキサム酸内服や、ハイドロキノンなどの外用から始めます。

 ケミカルピーリングやエレクトロポレーションもほぼ同時に始めることが多いです。肝斑の治療の原則はあくまでも、このような保存的治療です。保存的治療で肝斑の状態をある程度コントロールしたあとに、必要があればレーザー治療(低出力の「レーザートーニング」)を追加するというスタンスです。

中田元子(なかた・もとこ)氏。Mスキンクリニック院長。(写真/中田氏)

中田元子(なかた・もとこ)氏。Mスキンクリニック院長。(写真/中田氏)

  • レーザーは「肌が整ってから」慎重に開始 → 炎症を落ち着かせ、肌状態を安定させた上で「Wピコトーニング」を実施。通常のトーニングよりもゆっくり、1〜2カ月に1回のペースで経過を見ながら進める。
  • 肝斑だけでなく「光老化皮膚の改善」も視野に → 肝斑は皮膚の土台の老化と関係しており、真皮の線維芽細胞にもアプローチする治療が重要。色の改善だけでなく、肌全層の再構築を目指す。
  • 治療のゴールは「トータルな肌の印象改善」 → 肝斑の完治を目指すよりも、再燃を防ぎつつ肌全体のトーンや質感、ハリを整えることを重視。

──レーザーを使うタイミングが来る?

中田氏: 優先するのはお話したように、炎症を落ち着かせて、肌状態を整え「今ならレーザーを使っても大丈夫」という状態に持っていくことです。肝斑がある方はほぼ間違いなく、紫外線による光老化を伴っています。つまり、くすみやシミもあれば、ハリの低下や小ジワもあります。

 私は、肝斑のみを治療する目的ではなく、このような光老化皮膚の改善も含めて「Wピコトーニング」を行っています。これは、通常の「レーザートーニング」よりもゆっくり、1~2カ月に1回くらいのペースで毎回の肌の変化を確認しながら慎重に進めます。

──肝斑は肌の土台の問題とされる。

中田氏: 老化した皮膚では、皮膚全層を、つまり土台からしっかり立て直していくことが、肝斑のみならず様々な症状の改善につながるということは、学会でもよく話題になっています。

 色の改善だけに意識を向けずに、真皮の老化した線維芽細胞にもアプローチしていく治療が必要なのです。

──肝斑治療では何を目指していけば?

中田氏: 肝斑を完治に導ける治療があればよいのですが、なかなか難しいのが現状です。ですから、最初にお話したように、再燃しやすく長期でコントロールしていく必要があるという肝斑の性格を理解していただき、肝斑そのものだけでなく肌全体の印象を改善していくことを一緒に目指したいことをお話します。

 ご本人と医療側で同じゴールを設定しないとお互いに苦しい治療になってしまいますから。

 そして、「Wピコトーニング」などで、肝斑だけでなく、光老化皮膚を同時に改善していくことを提案します。これは他の症状に対しても言えることなのですが、肌を健康的に美しく見せるためには、一つの症状にとらわれず、全体を見て、色調や質感をバランスよく整えていくことが重要だと私は思っています。

 突出して優れた要素は必要なく、大きなマイナス要素がなくて、あとはそこそこでも良いということです。

 診察では、「肝斑だけを見るのではなく、肌全体を見てください」とお伝えしながら、写真を一緒に確認します。肝斑が消退していなくても、「全体のトーンが上がっている」「毛穴が目立たなくなっている」「ハリ感が変わってきた」などの変化にも目を向けていただくことで、「トータルでどう変わったか」を共有するようにしています。(終わり)

プロフィール

中田元子(なかた・もとこ)氏。Mスキンクリニック院長。(写真/中田氏)

中田元子(なかた・もとこ)氏。Mスキンクリニック院長。(写真/中田氏)

中田元子(なかた・もとこ)氏
Mスキンクリニック院長。1996年東京女子医科大学医学部卒業、同年同大学形成外科に入局。2004年より東京医科大学皮膚科、2007年より東京女子医科大学東医療センター美容医療部に勤務し、皮膚科・美容医療の診療経験を重ねる。2019年にMスキンクリニックを開設し、2021年には医療法人社団Mスキンクリニックとして法人化。日本レーザー医学会、日本美容皮膚科学会、日本医学脱毛学会、日本臨床皮膚外科学会、日本皮膚科学会、日本形成外科学会、日本美容外科学会(JSAPS)などの学会に所属し、形成外科と皮膚科の両面から美容医療に取り組んでいる。

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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