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「性善説では回さない」美容医療の教育と研修、来院者からのフィードバック即時反映も、大手ならではの強みの生かし方とは、湘南美容クリニック皮膚科全体統括の西川礼華氏に聞く Vol.4

西川礼華(にしかわ・あやか)氏。湘南美容クリニック皮膚科全体統括。(写真/湘南美容クリニック)

西川礼華(にしかわ・あやか)氏。湘南美容クリニック皮膚科全体統括。(写真/湘南美容クリニック)

西川礼華(にしかわ・あやか)氏
湘南美容クリニック皮膚科全体統括

  • 段階的かつ体系的な教育体制→入職直後から集合研修・座学・実技試験を経て合格した医師のみが施術を行い、いきなり現場に出ない仕組みを徹底。
  • 施術難易度と権限の厳格管理→施術ごとに難易度ランクを設定し、経験・研修修了など複数条件を満たした医師のみが施術できるシステムを構築。
  • 継続的な評価とトラブル防止→患者アンケートによる即時フィードバックを活用し、問題を早期に可視化・改善することで組織的に安全性を担保。

──2024年以降、いわゆる「直美」議論もあり、美容医療の教育や研修の体制が注目されている。

西川氏: 教育というのは本当に肝だと思っています。湘南美容クリニックは創業して25年かけて、多くのアプローチで教育に取り組んできました。

 例えば、医師は入職してから、集合研修や座学、実技の試験があります。いきなりお客さまに注射することはなく、マネキンなどを使い実技の試験をするなど、ステップアップできた人が現場に出て施術を行えます。研修プログラムを確立しています。現場に出る前に、段階を踏むというのは徹底しています。

 現場に出て実際に注射を行う段階になっても、施術の難易度をランク分けしています。外科だと6つ、皮膚科だと4つ、施術ごとに難易度のランクが分かれ、入職してすぐには高難易度の施術は行えない仕組みです。

 例えばヒアルロン酸注入ならば、目の下のヒアルロン酸注入を行うためには、入社後に一定期間を経ていることや、特定の症例を経験していること、所定の研修を修了していることなど、複数の基準を設けています。条件を満たさずに医師が申請すると、却下される仕組みになっています。

──基準を設けて運用されている。

西川氏: 本部のシステムとしてできるようになっています。条件を満たした医師だけ、予約が入る形になっているのです。

 その点については、性善説というよりも性悪説に立ち、トラブルを未然に防ぐことを重視した守りの姿勢で仕組みづくりを行っています。全員が不正や問題行動を起こすわけではありませんが、仮に誰かが無理をしたり、判断を誤ったりした場合でも、重大なトラブルに発展しにくい設計にしておくことが重要だと考えています。

──中堅以降も研修は続く。

西川氏: もちろん、新人のフェーズだけではなくて、ドクターが施術をする中で技術レベルを高める必要もあります。湘南美容グループでは、フィードバックをかける仕組みがあります。

 一つは、施術を受けた当日や翌日にお客さまへ「ドクターアンケート」が入る仕組みです。「今日の先生はどうでしたか」という評価が届き、それが本人だけでなく、上長にも共有される。5段階のうち1や2が付いた時点で、すぐにメールで通知が飛ぶようになっています。

 問題が小さい段階で必ず可視化され、組織として対策が打たれます。本人も「次はどう改善するか」を考えざるを得ない。これは、現場任せにしないための仕組みです。

  • NPSによる満足度の可視化と抑制設計→治療別・医師別にNPSを可視化し人事評価にも反映することで、無理な高難易度施術に走りにくい仕組みを構築。
  • 意欲ある医師を伸ばす学習環境→オンライン座学や研修に加え、海外トップ医師やメーカーと連携した実践的な研修を実施し、技術向上と安全性向上を両立。
  • 全国規模での教育と品質標準化→スキルチェッカー・マイスターなど5段階の教育ピラミッドを構築し、地域を越えて同一品質の医療提供を実現。

──アンケートがその日に反映される。

西川氏: もう一つは、満足度のスコア、先にお話ししているNPS(ネット・プロモーター・スコア)を治療別、医師別に可視化していることです。

 「この治療のスコアは高い」また「この先生は低い」といった状況が、組織として把握できます。NPSは人事評価にも反映しており、「経験を積みたいから」と無理に高難易度の施術へ取り組むといった行動が起こりにくい仕組みになっています。

 とにかく、お客さまにご満足いただけることを大切にしています。

──意欲が高い医師を伸ばす仕組みも必要になる。

西川氏: そこも意図的に作っています。研修やオンライン座学など、学ぶ場は複数の形式で用意しています。

 場合によっては海外のトッププレイヤーの先生に来ていただき、注入の研修に立ち会って助言をいただくこともあります。学会前日に突然研修が組まれることもあります。

 それについて「どのように交渉しているのか」と聞かれることもあるのですが、これは正直、湘南だからこそできる部分が大きいと思います。

 例えばボツリヌス療法など、私たちのグループは使用量が多い。そのグループ全体の技術力が上がれば製剤がより安全に、より良い評判で使われることになります。

 その結果、メーカーにとってもメリットがあるため、メーカー側から「このような研修を実施しませんか」といった提案をいただくケースも多くあります。

 私たちからしても、医師を集めてスキルアップの場を作れる。医師の技術が向上すれば、安全性も上がり、お客さまの満足度も上がる。そして、製品の評判も上がり、メーカーもハッピーになる。

 結果として、Win-Winの関係性を築きやすくなります。

──全国展開しているからこそ教育と標準化の難易度が上がる。

西川氏: 医師も看護師も含めオンラインを活用して教育をしていますが、本部側でも教育を担当するスタッフが各院を回る仕組みを持っています。

 看護師については、グループに3000名以上所属しています。これだけの人数を一人が教育するのは難しいので、現場には施術者のスキルをチェックできる称号を持つ「スキルチェッカー」と呼ぶグループ内の資格者をおよそ5人に1人の割合で配置しています。

 さらに、そのスキルチェッカーを指導する「マイスター」、その上に地域の「エリアマイスター」、さらに本部という階層を設けています。そのため階層は5段階くらいのピラミッド構造になっています。

 この仕組みにより札幌で受けても、別の地域で受けても、同じ品質になるように担保しています。

 例えば5回コースを契約したお客さまが、初回は銀座院、次は出張先の梅田院、その次は豊洲院、というのは珍しくありません。

 「院ごとに品質が違う」と感じられるのは致命的です。院内の統一以上に、院を超えた統一が重要になり、組織として本気で取り組んでいます。(続く)

プロフィール

西川礼華(にしかわ・あやか)氏。湘南美容クリニック皮膚科全体統括。(写真/湘南美容クリニック)

西川礼華(にしかわ・あやか)氏。湘南美容クリニック皮膚科全体統括。(写真/湘南美容クリニック)

西川礼華(にしかわ・あやか)氏
湘南美容クリニック皮膚科全体統括
2013年横浜市立大学医学部医学科卒業。2015年国立病院機構東京医療センターで臨床研修修了後、湘南美容クリニックに入職。2018年湘南美容クリニック皮膚科全体統括。2023年SBC東京医療大学客員教授。日本美容皮膚科学会、日本美容外科学会(JSAS、JSAPS)、日本再生医療学会、日本先進医療医師会、日本抗加齢医学会、日本医学脱毛学会、日本レーザー医学会、ASLMS(米国レーザー医学会)など所属。

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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