
宮田成章(みやた・なりあき)氏。みやた形成外科・皮ふクリニック院長。(写真/編集部)
宮田成章(みやた・なりあき)氏
みやた形成外科・皮ふクリニック院長
- 注入治療の変化→ 「自然な仕上がり」が重視され、正しい部位・量・製剤の選択が重要に。
- レオロジーの活用→ ヒアルロン酸製剤の特性を「弾性」と「粘性」など多面的に評価し、適切に使い分ける動きが進む。
- 顔全体への対応→ 骨・脂肪・皮膚の変化を読み解き、総合的に注入を設計する精緻なアプローチが求められている。
──最近、注入治療の潮流が変わってきた。
宮田氏: 適当に入れると「ヒアルロン酸を入れた顔」になってしまうという反省が大きい。よりナチュラルに仕上げるため、理屈を理解し、正しい部位に、正しい量を、正しい製剤で入れる、という設計が重要になりました。
では製剤の違いをどう見分けるのか。その時に出てきたのが製剤の特性である「レオロジー」を知ろうという話です。
──レオロジーというのは「硬い」「柔らかい」とどう違うのか。
宮田氏: 日本では極端に「硬いヒアルロン酸」「柔らかいヒアルロン酸」と言いがちですが、その表現は不正確です。実際には、ポロっと崩れるようなものから、糸を引くように伸びるものまで幅があります。
さらに追随性(動きについていく)、外力で潰れる、柔らかいのに潰れない、といった要素も絡みます。固まりやすい(凝集性が高い)はずなのに狙った形が作れない製剤もあれば、弾性があるのに積み上げるように形を作れる製剤もある。単一の言葉では語れません。
──簡単ではない。
宮田氏: レオロジーの基本は「弾性」と「粘性」という二つの軸で捉えることです。
しかし、実際の物性評価はそれだけでは収まりません。論文で基本指標として用いられるのはG′(弾性)、G″(粘性)、それらのバランスを示すtanδ(タンデルタ)ですが、これらだけでは説明切れない要素がありますから、最近では、コヒーシビティ(凝集性)に関する指標も提唱されています。
つまりヒアルロン酸の「物性評価」はどんどん複雑になっているのです。
──ヒアルロン酸を使い分けることも必要に?
宮田氏: 本来は複数メーカーの製剤を持っていて適切に使い分けるのが施術を受ける方々のためになります。現状では、そこがうまく回っていません。だからもう少し変えたほうがいいのではないか、という問題意識があります。
私はレオロジーという共通言語をベースに、きちんと見分けようとお話ししています。レオロジーを道具として使って考えていくと、製剤の本当の特性が見えてきます。
──顔の状態に合わせて製剤を使っていく。
宮田氏: まず骨の変化に注目します。老化に伴う骨の萎縮の具合を理解し、それをベースに顔の状態を考えます。骨の変化としては、目の周りのアイホールが大きくなり、頬や顎の骨が萎縮していくなどがあります。端的に言えば「疲れた顔」になるのです。こうした変化は20代から起こってきます。若いのに老けて見える背景には、骨などのボリュームが少なくなっていることがあります。
特に中顔面は、骨の影響が大きくなります。骨の見極めができると、デバイスによる治療などを受けても変化が乏しかった若い方でも、適切なポイントに少量の注入を行うだけで変化が出て喜ばれることがあります。
脂肪の減少は、「量」だけでなく「位置の移動」が問題になります。どの脂肪パーツが減っているか、どの脂肪がどう下がっているかまで解剖学的に捉える必要があります。
糸リフトで上げる方法もありますが、注入で対応するなら、下がった組織を下から支えてリフトアップさせるような入れ方が必要になります。
骨の変化を主に治すときと、脂肪のポジション変化を面で支えるときでは、注入の位置や深さといった設計が変わってきます。皮膚の柔らかさや弾力といった皮膚側の情報に加え、骨の形や萎縮、脂肪パーツの量と位置変化を総合して読むのです。
──きめ細かく、顔の変化に対応する必要がある。
宮田氏: そうです。それを支える判断軸がレオロジーで、深い層で動きの少ない部位に用い、突っ張りや持ち上げを狙う製剤など、性質に応じて使い分けます。
最近、ヒアルロン酸のニーズは「顔全体」に広がっています。従来は「ほうれい線を直してください」といった顔の1点の相談が中心でしたが、いまはそこを入口に顔全体をデザインしていく。
しかも、周囲に注入していることがバレたくない、というニーズも非常に強く、一方で「バレたくないのに、はっきり変わりたい」という要望もあります。そのギリギリのラインをどう設計するかが医師の腕次第となります。
ここで重要なのは「綺麗にする」と「若くする」を混同しないことです。本人が望んでいるのが「若い頃の自分に近づくこと」なのに、こちらが綺麗方向に寄せ過ぎると「作った顔」になってしまう。
だから、骨の萎縮がどこに起きているのか、脂肪のどのコンパートメントが減っているのか、どこが下がっているのか、皮膚の厚みや弾力、肌質、筋肉の状態まで含めて統合して答えを出していく必要があります。
どの深さに、どの性質を持った製剤を、どのくらい入れるか。そこを冷静に決めていくために、レオロジーを使う。
その「顔の解析」と「レオロジー」の二つが並行して、ぴったりマッチングしたとき、誰にもバレない若返りが成立する。いま私が一番面白いと感じているのは、まさにそこです。
- フィラーの再定義→ 従来の「形づくり」から「肌質改善」や「育肌」へと用途が広がっている。
- 新たな注入剤→ バイオスティミュレーターやスキンブースターなど、コラーゲン生成を促す製剤が増加中。
- 効果の理解→ コラーゲン生成の仕組みは多様で、製剤ごとのメカニズムや持続性に違いがある点が重要視されている。
──「フィラー」は繊細に調整するように変わっている。
宮田氏: いま「フィラー」という言葉の中身自体が変わってきたと感じています。
従来のヒアルロン酸は、形を作る、ボリュームを作るという意味合いが中心でした。でも今は、日本的に言うなら「肌を育てる」方向、英語圏ならフィラー(filler)というよりインジェクタブル(injectable)の一部として、肌質改善を狙った注入も登場しています。
純粋なフィラーではなく、フィラー要素を持ちながら別の目的を担う注入物が増えている、ということです。「バイオスティミュレーター」や「スキンブースター」「コラーゲンブースター」などと呼ばれる製剤が増えています。
──「コラーゲンを増やす」と聞くことが増えている。
宮田氏: 世の中では何でも「コラーゲンが増える」と言われがちですが、実際にはそう単純ではないです。
コラーゲンを増やす、いわゆる「コラーゲンブースター」と呼ばれるものの中には、ポリ乳酸系のように生体反応を引き出して、それは素材が消えた後にも組織反応が続くこともあります。
一方で、肌を育てる、肌質改善という意味でのフィラーは、ヒアルロン酸などを注入することで、細胞外基質としてのコラーゲンやアミノ酸を増やしつつ、環境を整えるという考え方です。(続く)
プロフィール

宮田成章(みやた・なりあき)氏。みやた形成外科・皮ふクリニック院長。(写真/編集部)
宮田成章(みやた・なりあき)氏
みやた形成外科・皮ふクリニック院長
1990年防衛医科大学校卒業。卒後、防衛医科大学校形成外科および関連施設で研修・勤務し、在籍中に美容外科クリニックでも研修を積む。1997年札幌医科大学形成外科に勤務。同年11月、市立室蘭総合病院形成外科医長。2000年5月、スキンケア・美容外科の啓蒙と普及を目的に医療法人のもと虎ノ門形成外科・皮ふクリニックを開院し院長に就任。2004年5月、医療法人の事業再編に伴い独立し、みやた形成外科・皮ふクリニックを開設。日本専門医機構認定形成外科専門医。日本創傷外科学会認定創傷外科専門医。日本美容皮膚科学会代議員。日本美容外科学会(JSAPS)評議員。日本抗加齢医学会、日本医学脱毛学会各会員。医学博士。
記事一覧
-
自然な若返りを実現する 製剤選びは骨や脂肪を見ながら「作られた顔」を避ける注入の考え方 みやた形成外科・皮ふクリニック院長の宮田成章氏に聞く Vol.1
https://biyouhifuko.com/news/interview/16706/ -
高周波は「広く」「立体的」に縮める治療、層の見極めと「治療半分・予防半分」の考え方 サーマクール以後の選択肢が増えるRF みやた形成外科・皮ふクリニック院長の宮田成章氏に聞く Vol.2
https://biyouhifuko.com/news/interview/16713/ -
若手の医師に伝えたい「海外で学ぶ」価値 学会に求める科学的な視点 次の美容医療につながる「新しいコンセプト」 みやた形成外科・皮ふクリニック院長の宮田成章氏に聞く Vol.3
https://biyouhifuko.com/news/interview/16722/
