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福岡のクリニックが無届けで再生医療提供、厚労省が法令違反で処分、九州厚生局が計画未提出や品質管理不備など指摘、福岡MSC医療クリニック運営医療法人に改善命令

カレンダー2025.3.6 フォルダー 国内
厚生労働省。(写真/Adobe Stock)

厚生労働省。(写真/Adobe Stock)

 厚生労働省は2025年3月5日、医療法人聖慈会が運営する福岡MSC医療クリニック(福岡市中央区)および同クリニックの細胞培養センターに対し、安確法に基づき改善命令を発出した。

※「安確法」は「再生医療等の安全性等確保に関する法律」の略称である。再生医療法とも呼ばれることがある。

審査を受けずに提供された再生医療

行政処分。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

行政処分。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 国内で自由診療で再生医療を行う際には、再生医療を行う前に計画を作成し、専門の委員会で審査を受け、厚生労働大臣に提供計画を提出する必要がある。

 認定再生医療等委員会のウェブサイトを確認すると、同クリニックが過去に審査を受けていた記録があった。ただし、すべての再生医療について審査を受け、厚生労働大臣に提供計画を提出しなければならない。厚労省の発表によると、処分対象となった医療法人では、法的な手続きを経ずに一部の再生医療が提供されていた。

 厚生労働省によると、九州厚生局による立ち入り検査の結果、次のような複数の法令違反が明らかになった。

  • 再生医療提供計画の未提出(法第4条第1項違反)
  • 再生医療提供計画の確認不実施(法第13条第1号違反)
  • 特定細胞加工物の品質管理基準の不遵守(法第3条第3項違反)
  • 救急医療の体制確保の不実施(法第3条第3項違反)
  • 記録作成および保存義務の不履行(法第16条違反)

 これらの違反を受け、厚生労働省はクリニックに対し、再生医療の提供計画を適切に提出し、安全基準を満たしているかを定期的に確認する体制を整備するよう命じた。適正な品質管理の実施、医師による提供計画の確認徹底、記録の作成および保存の徹底などの是正措置を求めている。

 今後、同クリニックは改善計画を策定し、厚労省に提出する必要がある。

ホームページは一見すると法令違反が分かりづらい

国際幹細胞学会が日本の再生医療に改善を求める。(出典/国際幹細胞学会)

国際幹細胞学会が日本の再生医療に改善を求める。(出典/国際幹細胞学会)

 いったいどのような問題が存在したのか、処分されたクリニックのホームページを確認してみた。

 今回処分されたクリニックのウェブサイトを見ると、ウェブサイト上では提供内容の詳細は明らかではなく、今回指摘された法令違反が見えにくい。

 同サイトによると、提供しているのは、「再生医療」「エイジングケア」「各種検査」と示されている。その内訳は次の通りだ。単語はホームページのまま記載しているが、「繊維芽細胞」とあるのは、正しくは「線維芽細胞」である。

  • 「再生医療」:「ヒト自己活性化NK細胞」「免疫細胞療法」「歯槽骨再生治療」「繊維芽細胞」「自家多血小板血漿」
  • 「エイジングケア」:「ヒト脂肪由来間葉系幹細胞培養上清液」「高濃度プラセンタ注射」「水光注射」「N-COG」
  • 「各種検査」:検査だけではなく、NMN点滴療法が含まれている。

 また、プラセンタや糸リフトであるN-COGは、再生医療と無関係で美容施術が行われた可能性がある。

 このように多彩な内容を掲げていたが、実態は法令違反が複数確認されたことになる。

 折しも、国際幹細胞学会が日本の厚生労働大臣に対し、再生医療の審査体制の改善を求める書簡を公表したところだ。不適切な再生医療が放置されている状態では、再生医療の信頼が低下する恐れもある。

 再生医療は美容医療の分野で注目されているが、受ける側も提供施設を選ぶ際には慎重に検討する必要があるだろう。

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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