ヒフコNEWS 美容医療に関する最新ニュースをお届けするサイト

「異物肉芽腫、しこり形成」が美容治療の合併症では最多、厚労省研究班報告

カレンダー2023.5.5 フォルダー 国内

ポイント

  • 厚生労働省研究班の2021年調査で合併症や後遺症が公開されている
  • 被害は20代以下の女性に多く、しこり、傷跡、変形や左右差などが報告された
  • 厚労省研究班は引き続き合併症や後遺症の調査を進めている
顔を気にする女性。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

顔を気にする女性。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 医療機関が対処した美容医療で起こった合併症や後遺症は何か。厚生労働省の研究班が行った「美容医療における有害事象の実態に関する全国調査2021」の調査結果からその詳細が公開された。さらなる調査も行われているが、公開された情報からは少なからず合併症や後遺症が発生している状況が分かる。

他の医療機関で起きたトラブルの対処件数を調査

不安。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

不安。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 この調査は19年度に行われた第1回に続く第2回。研究班は21年1月~12月に医療機関3093施設を対象に調査を行い82施設から回答を得た。調査で報告されたのは、回答した医療機関で発生した合併症や後遺症を調査対象としたわけではなく、他施設で発生したものに対処したケースが含まれる。そのため回答率は調査対象者の2.7%にとどまったものの、大学病院形成外科の回答率が82.8%と高く「美容医療を原因とした合併症の治療を大学病院形成外科が主に担っている可能性が示された」(研究班)という。

 報告された333件の中には死亡例はなかった。

 性別は女性が85.3%と大半を占め(男性12.3%、2.4%は不明)、年代は20代以下が30.3%と最も多く、次いで30代(26.1%)、40代(16.5%)が続いた。

 合併症の発生件数が最も多い都道府県は東京都(167件)。次いで兵庫県(50件)、神奈川県(9.3%)、愛知県(15件)、福岡県(12件)。複数院がある場合には、東京が回答をまとめている場合もある。

 重症の合併症が64.6%(215件)が半数を超え、軽度の合併症は19.6%(66件)、重度の後遺症は13.5%(45件)だった。

 美容整形により起こった重度の合併症は、「異物肉芽腫、しこり形成」が49件と最も多く、重度の後遺症は「ケロイド・肥厚性瘢痕、重度の瘢痕」が13件で最も多かった。軽度の後遺症は「軽度の変形、左右差」が19件で最も多かった。

※肉芽腫(にくげしゅ)は、体が異物などに反応して周りに作る細胞のかたまり。しこりとは細胞のかたまり、こぶを指す言葉。瘢痕(はんこん)とはケガが治った後に皮膚に残る傷跡で、瘢痕はコラーゲンを多くふくみ、正常な皮膚とは異なる見た目になる。

 有害事象の原因を見ると、外科的処置で最も多かった原因は「その他の鼻形成術」。その他の鼻形成術は、隆鼻術(注射を除く)以外の鼻の整形を指している。

 非外科的処置で最も多かった原因は「注入剤・ヒアルロン酸」だった。

 有害事象の原因として77種類の医薬品・材料・機器が特定された。最も報告が多かったのは豊胸術で用いられるアクアフィリングで8件だった。アクアフィリングに関してはヒフコNEWSでインタビューを掲載した問題の指摘されている施術である(「やってはいけないフィラー豊胸術」、世界が認めていないのに日本でいまだに行われている理由)。

 重度の後遺症45件のうち7件(15.6%)が国内で行われた施術関連で、35件(77.8%)が海外で行われた施術関連だった。

23年の調査結果も今後公開見込み

調査。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 なお、19年に行われた第1回調査では、72の医療機関から合計1535件の合併症および後遺症が報告された。しかし、第2回調査では報告数が大幅に減少した。減少の理由は、前回報告をした医療機関の多くが、今回回答していなかったためと考えられている。第1回、第2回の両方の調査に対して回答した施設は19施設にとどまり、2回の調査で回答した施設の内訳の差は大きい。

 一例として、第1回調査では、重度の後遺症の88.8%が日本で行われた美容整形手術によるもので、海外で行われた美容整形手術によるものは12.4%だった。しかし、第2回調査では、重度の後遺症のうち、日本で行われた美容整形手術によるものは15.6%にとどまった。この対比には調査に参加した医療機関の違いが寄与していると考えられる。

 これらの制約などから、日本国内における美容整形の合併症の全体的な発生率を把握することは難しい。しかし、研究班は継続的な調査が重要と指摘する。23年時点で、さらなる調査が行われ今後公開の見込みだ。引き続きヒフコNEWSも同様な調査に注目する。

参考文献

美容医療における合併症実態調査と診療指針の作成及び医療安全の確保に向けたシステム構築への課題探索
https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/158585

全国美容医療実態調査
https://biyo-chosa.jp/2022/

「やってはいけないフィラー豊胸術」、世界が認めていないのに日本でいまだに行われている理由
https://biyouhifuko.com/news/interview/277/

ヒフコNEWSは、国内外の美容医療に関する最新ニュースをお届けするサイトです。美容医療に関連するニュースを中立的な立場から提供しています。それらのニュースにはポジティブな話題もネガティブな話題もありますが、それらは必ずしも美容医療分野全体を反映しているわけではありません。当サイトの目標は、豊富な情報を提供し、個人が美容医療に関して適切な判断を下せるように支援することです。また、当サイトが美容医療の利用を勧めることはありません。

Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

お問い合わせ

下記よりお気軽にお問い合わせ・ご相談ください。