
「臨床医学・歯学の教育及び研究におけるご遺体の取扱いに関する共同声明 」を発表。(出典/日本医学会連合)
2024年12月に海外で献体を用いた外科手術手技研修(Cadaver Surgical Training、CST)を行った美容外科医が、そのときの写真を遺体が映り込む状態で撮影し、SNS投稿したことで、社会の大きな非難を浴びる事態が起きた。
それから9カ月を経た2025年9月、一般社団法人日本医学会連合、日本歯科医学会連合、全国医学部長病院長会議など17団体が連名で、「臨床医学・歯学の教育及び研究におけるご遺体の取扱いに関する共同声明」を発表した。
悪質な場合は刑事罰の対象となる可能性

医学や歯学の教育、研究などに献体は不可欠な存在。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 献体制度の特徴→日本独自の「篤志献体制度」は無条件・無報酬で運営されており、国民感情や文化的背景への配慮が求められる
- 画像データの取扱い→死者や臓器を含む画像データの不適切な共有を禁止
- 違反時の対応→学内で不適切な行為が発覚した場合は懲戒処分、悪質な場合は刑事罰の対象となる可能性があるとし、厳正な姿勢を示した
声明は冒頭で、「死者に対する畏敬の念は、文化・宗教・時代を超えて多くの社会で共有されてきた普遍的な倫理観であり、すべての者が保持すべき基本姿勢である。人の尊厳は死後も失われることなく保持されるべきであり、いかなる場合においてもご遺体を取り扱う際には、深い敬意と特段の配慮が必要である」と明記した。
また、篤志献体制度は日本独自の制度で、無条件、無報酬で運営され、制度を維持、発展させるためには、「ご遺体に関わるわが国の国民感情や社会的・文化的背景にも十分に配慮しつつ、献体者やそのご家族の信頼を裏切らぬよう、またご意向を尊重するよう、関連教育機関及び学協会は誠意をもって行動することが求められる」と訴えた。
さらに、死者や臓器を含む画像データの不適切な共有を禁止し、「学内で不適切な行為が発覚した場合には懲戒処分等を行い、極めて悪質な場合には刑事罰の対象となる可能性がある」として、厳正な対応を取る姿勢を示した。
国内外で規範遵守を求める

日本解剖学会、篤志解剖全国連合会、日本篤志献体協会が2025年3月31日、「献体解剖倫理指針」をまとめた。(出典/日本解剖学会)
- 声明の背景→美容外科医がSNSに献体を含む画像と軽率なコメントを投稿し、医師や医療機関全体が社会的批判を受けた
- その後の対応→美容医療系学会の声明、日本解剖学会や篤志献体関連団体による倫理指針の発表につながった
- 共同声明の特徴→美容医療に直接言及はしていないが、教育・研究の場すべてに適用されるべき規範であると明記
今回の声明の背景には、美容外科医によるSNS投稿問題が影響していると見られる。米国グアムで行われた外科手術手技研修中に、背景に献体が写り込んだ写真や頭部が多数写り込んでいると表現した軽率なコメントを添えた写真をSNSに投稿し、医師や関連の医療機関、美容医療業界が社会的批判を浴びた。
この件は「敬意や倫理観の欠如」としてメディアでも大きく取り上げられ、美容医療分野に限らず、医学全体の信頼性を揺るがしかねない事例とされた。
その後、美容医療系の学会による声明の発表、日本解剖学会、篤志解剖全国連合会、日本篤志献体協会による「献体解剖倫理指針」などにもつながった。
今回の共同声明は直接、美容医療分野で起きた外科手術手技研修での問題に言及していないが、国内外での教育・研究に共通して適用されるべき規範である点を強調している。例えば、「遺体を用いた教育・研究を行う際は、わが国の篤志献体制度の理念を尊重し、国内外を問わず、いわゆる『遺体ビジネス』と誤解されることのないよう、透明性・公正性ならびにわが国の篤志献体制度への影響に十分配慮すること」と注意点を挙げている。
声明では「死者の尊厳と献体者やそのご家族の意思の尊重」、「法令及び倫理指針、ガイドライン等の遵守」、「ご遺体の適正な取扱いとガバナンスの徹底」の3点から、解剖の教育や研究、外科手術手技研修を行う際に守るべき事項を掲げている。
