日本のメイクはいま、「自然体+絶妙な洗練」に向かっている。そのような傾向を、花王ビューティリサーチ&クリエーションセンター(BRCC)が2025年9月に公開した日・韓・中の比較レポートが明らかにしている。
対する韓国や中国は、質感の出し方や見せ場の作り方にそれぞれの個性を発揮する方向となっている。光の置き方、メイクの載せ方の強弱など、国ごとの美しさの考え方が反映されている。
こうしたメイクのトレンドは、美容医療で語られる「ナチュラルルッキング」とも地続きになっている可能性もある。自然さを大切にしつつ、どこをどのように洗練させるかが鍵になるようだ。
2000年代初頭のギャル文化に注目も
- トレンドキーワード → 「肌になじむ色」「透け感」「個性」。ナチュラルさの中に洗練と個性を加えるバランス重視の流れ。
- 4つのメイクタイプ →
- くすみ色で上品に仕上げる「ミュートメイク」
- 青みピンクでピュアさと色気を演出する「大人バブみメイク」
- ラメや発色で遊ぶ「Y2Kメイク」
- 自然なつやで幸福感を表す「多幸感メイク」
- 3つの新提案 →
- 上品なニュートラルカラーに柔らかな光を重ねる「Meta-Demure(進化型ミュート)」
- 自然な雰囲気の中に、透明感と遊び心を両立させる「Clear Nostaldolly(大人dolly)」
- 立体とつやで存在感を演出する「Composite Modernity(Neo Y2K)」
花王BRCCではストリート観測と国内外のメイクアップアーティストや美容高感度層への取材を通じ、2025年の日本を貫くキーワードを導き出している。
レポートを見ると、日本のトレンドとして浮かび上がるワードとしては「肌になじむ色」「透け感」「個性」などが挙げられる。大きな流れとしては、ナチュラルな感じの延長に、個性や洗練を加えていく。この流れの中でバランスを取るメイクが主流となっている。これらの傾向を踏まえ、花王BRCCは4つのメイクタイプを挙げている。
一つは、ピーチベージュなどの派手さを表に出さないくすみ色を工夫してワントーンに仕上げる「ミュートメイク」。ナチュラルと上品さがあり、控えめながら印象に残るスタイルとなる。
もう一つは、青みピンクのにじみチークとつやリップで、ピュアさと色気を同時に演出する「大人バブみメイク」。これはやはり肌の元々の雰囲気を生かしつつも、赤ちゃんのようなかわいらしさを表現したスタイルとなる。
さらに、ナチュラル路線と一線を画するのが「Y2Kメイク」。2000年代初頭のギャルカルチャーを再解釈して、ラメや鮮やかな発色、涙袋やつけまつげで遊び心もプラスするスタイルとなる。
そして4つ目は、頬や唇に自然なつやを宿し、幸福感や健康的な印象を与える「多幸感メイク」。ナチュラルさを大切にしつつ、光を味方に付けて内側から輝くような印象を実現したメイクとなる。
これら4タイプを踏まえて、花王BRCCは、日本のメイクのこれからについて3つの新しい提案を示している。
一つは、上品なニュートラルカラーに偏光パールを含むハイライトやパール・ラメ感のあるアイラーナーなどにより光を重ねる「Meta-Demure(進化型ミュート)」。気品を軸に、柔らかな光を重ねるようなスタイルを示している。

「Meta-Demure(進化型ミュート)」。(出典/花王BRCC)
もう一つは、明るく透明感のある肌を見せつつも、W字型に見えるように目の下から鼻にかけてチークを入れて遊び心も両立する「Clear Nostaldolly(大人dolly)」。目尻、目頭、下まぶた、眉、唇など、細部に工夫を凝らし、自然な雰囲気の中に洗練された印象を与える。
さらに、マットな影と湿度あるつやをレイヤーして立体を演出する「Composite Modernity(Neo Y2K)」。2000年代初頭のギャルカルチャーを引き継ぎつつ、やり過ぎない存在感を狙って、色・質感・配置で個性を微調整する洗練されたスタイルとなる。

「Composite Modernity(Neo Y2K)」。(出典/花王BRCC)
韓国コスメの動きは日本にも影響

TikTok。SNSの影響がある。(写真/Adobe Stock)
- 共通点 → 韓国・中国ともにSNSの影響を強く受け、トレンドが急速に広がるのが特徴。
- 韓国のトレンド →
- ナチュラル志向の中に工夫を取り入れた洗練スタイルが主流。
- 白く透明感のある肌にやわらかな色をのせる「ポヨンメイク」が人気。
- 元の肌色を生かしてラメやリップを加える「ミュートメイク」も注目。
- 中国版TikTok発「ドウインメイク」は目もと強調+セミマット肌が特徴。
- 「MLBB」「トッキヒョリップ」「タンフルリップ」など特徴的なリップが話題。
- 中国のトレンド →
- SNSの影響で華やかさを重視する傾向。
- 「ワンホンメイク」=セミマット肌+高チーク+オーバーリップで存在感を演出。
- 伝統美を取り入れた「新中華メイク」は上品で洗練された印象。
- 「寒冷地メイク」や「Y2Kメイク」も人気拡大中。中国版Y2Kはスモーキーブラウンの囲み目と陶器肌が特徴。
- 2025年の共通テーマ → 自然さを洗練させる方向に進化。美容医療で求められる「美」とも共鳴する可能性。
レポートでは、韓国と中国のトレンドについても分析している。2国ではSNSの影響がメイクトレンドにも及んでいるのは特徴だろう。
まず韓国では、日本と同じようにナチュラル志向の中に光や血色を感じさせる、メイク感を感じさせない雰囲気の中に洗練された工夫を盛り込んだスタイルが主流になっている。
一つは、白く透明感のある肌に、いちごミルクのようなやわらかな色をのせる「ポヨンメイク」が人気を集めている。ポヨンというのは、韓国語で白みたっぷりのパステルカラーを表現したものということで、ピンク系や珊瑚色のコーラル系などの色みを取り入れたり、涙袋をプラスしたりするスタイルとなる。
このほか「ミュートメイク」も人気で、元の肌色を生かしながら、ラメやアイシャドウ、リップを取り入れて作り上げるのが韓国の特徴という。
さらに、SNS発の「ドウインメイク」も話題になっている。ドウインは中国のTikTokのこと。目もとを強調しつつ、セミマットな白い肌を表現し、リップなどに鮮やかさを足したメイクとなる。
韓国では、「My Lip But Better(MLBB)」と呼ばれる、自分の唇の色を引き立てるリップカラーの人気も根強い。このほか「トッキヒョリップ(ウサギの舌のようなホワイティッシュピンク)」や「タンフルリップ(りんごあめのようにみずみずしくつやのある唇)」なども話題となっている。
一方で、中国のメイクは、SNSの影響もあり、華やかさが特徴となっている。
SNSインフルエンサーを意味する「ワンホン」に倣った「ワンホンメイク」は、セミマットな陶器肌に高い位置のチーク、オーバーリップや目尻のキャットラインで強調する華やかなスタイル。若年層の間で人気を集める。
また、伝統的な要素を取り入れた「新中華メイク」も注目で、上品な仕上がりが特徴だという。
このほか寒色系で彫りの深さを際立たせる「寒冷地メイク」や、アジアと欧米の要素をミックスした「Y2Kメイク」もトレンドとして拡大している。中国のY2Kは日本と異なり、スモーキーブラウンの囲み目やマットで陶器肌のようなベースが特徴。
2025年のメイクのトレンドは、美しさに関する感性を反映していると考えられる。なお、ヒフコNEWSの記事でも、ナチュラルメイクを進化させる流れは既に報告されている。例えば、韓国のトッキヒョリップなど日本で既に受け入れられているトレンドもある。
このようなメイクで見られる美しさのとらえ方は、美容医療における美の方向性とも一致する可能性があり、今後の動向が注目される。
