
人気を集めた「ミャクミャク」。動脈と静脈はモチーフの一つ。(写真/Adobe Stock)
2025年10月13日、大阪・関西万博は184日間の会期を終えて閉幕した。
大阪府市のパビリオンの総合プロデューサーを務めた大阪大学臨床遺伝治療学寄附講座教授の森下竜一氏と、アンチエイジングのテーマづくりにも協力した近畿大学医学部客員教授の山田秀和氏がコメントを寄せた。
「万博終点ではなく、大阪を健康産業都市に」

来場者最多になった大阪ヘルスケアパビリオン。(写真/Adobe Stock)
- 万博のテーマと来場状況 → 「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、医療・アンチエイジング関連の展示が多数。10月13日時点で累計来場者約2900万人、チケット販売数は約2207万枚に達した。
- 大阪ヘルスケアパビリオンの成果 → 森下竜一氏(大阪大学教授)総合プロデュースのもと、延べ553万人が来場し最多記録を達成。「REBORN」をテーマに、未来の自分=アバターと出会う体験型展示を実施。
- 今後の展望 → 万博をきっかけに、大阪を「健康産業都市」として再生し、大学発スタートアップ支援や医療データ都市構想、ヘルスケアDX社会への移行を目指す。
大阪・関西万博は「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマとしており、医療やアンチエイジングとも関連した展示が多く運営されていた。人気キャラクター「ミャクミャク」も、動脈と静脈をモチーフの一つにしており、健康が象徴的に表現されていた。
公式発表では、10月13日現在で累計来場者2901万7924人を記録した。関係者を除くと2557万8986人となった。累計チケット販売数は2206万9546枚となった。
ヒフコNEWSでは、美容医療において、老化を防ぐという意味からの発展が見込まれることから、大阪・関西万博に注目してきた。閉幕を受けて、アンチエイジングという点から万博に注目してきた2人にコメントを求めた。
大阪大学の森下氏は、「昨日、世界の注目の中で会期を終えました。多くの方にご来場いただき、万博を盛り上げてくださったことに深く感謝いたします。私が総合プロデューサーとして監修した大阪ヘルスケアパビリオンには、延べ553万人の皆様にお越しいただき、万博パビリオンの中で最多の来場者数となりました。一方で、予約が最も取りづらいパビリオンとも言われ、来館を希望されながら予約できなかった方が多くいらっしゃったことについては、お詫び申し上げます」と述べた。
その上で「大阪ヘルスケアパビリオンでは『REBORN』をテーマに、2050年の未来の自分=アバターと出会う体験型ヘルスケア演出を通じて、未来の自分と対話するという、これまでにない健康体験の形を提示しました」と語った。
REBORNは、来場者が自らの情報を入力すると、その条件に基づいて50年後の自分のアバターをシミュレーションし、目に見えるようにディスプレーで映し出す。
森下氏は、「アバター生成の基盤となるカラダ年齢測定ポッドでは、50万人以上のライフデータを自発的な参加型で収集しました。市民参画型としてこの規模のデータ取得は世界的にも稀有であり、エイジングクロック、未病予測モデル、デジタル治療の社会実装に向けた、万博の重要なレガシーとなります。『REBORN』には、万博を終点ではなく、大阪が健康産業都市として再生・進化していく出発点と捉えるメッセージを込めています。今回の共創が、大学発スタートアップの支援、国際医療データ都市構想、そして2050年を見据えたヘルスケア・デジタルツイン社会への本格的移行につながっていくと考えています」と答えた。
2030年のリヤド万博では理論がさらに深化へ

多くの来場者が巡った大阪・関西万博の大屋根リング。(写真/編集部)
- アンチエイジング分野の国際的広がり → 山田秀和氏(近畿大学アンチエイジングセンター)は、近年エピジェネティクスや生物学的年齢の理解が進み、世界的に「Longevity Clinic(長寿医療クリニック)」が台頭、アンチエイジング医学が夜明け期を迎えていると説明。
- 大阪ヘルスケアパビリオンの意義 → 子どもたちにも人気で、生物学的年齢を体験的に理解できる場に。現在の取り組みが未来世代で開花する長期的プロジェクトとして期待を寄せた。
- 今後の展望 → 山田氏が提唱する「健康の資産化・証券化・債権化」やAI×エイジング研究が国際的に進展。2030年のリヤド万博での深化を見据えている。
近畿大学アンチエイジングセンターの山田氏は、「始動当初は厳しい評価もありましたが、実際には多くの国の研究者や政策決定者が訪れ、活発な議論が生まれました。近年はエピジェネティクスへの理解が進み、生物学的年齢という概念も広く認知されつつあります。とくにこの1年で、世界では『Longevity Clinic(ロンジェビティ・クリニック、長寿医療クリニック)』が存在感を高め、標準化の動きも始まりました。アンチエイジング医学には大規模な投資が進み、まさに夜明けの段階にあると言えるでしょう」と展望した。
その上で、「大阪ヘルスケアパビリオンは子どもたちにも大変人気で、生物学的年齢の意味を体験を通じて理解してもらえるはずです。いま芽吹いた取り組みが、10歳の方であれば50年後に花開く。そんな長い時間軸での成長が楽しみです」と期待を込めた。
万博の成果について、「万博を契機に各国の科学者と対話を重ね、健康寿命の延伸や少子高齢化が世界共通の課題であるとの認識を共有できました。とりわけ日本、韓国、香港、中国、シンガポールなどでの深刻さが指摘されています。人口動態の変化、経済発展、教育水準の向上と加齢の関係など、経済問題との接点も増えています」と語った。
山田氏は、「私の提唱するエピジェネティクスを起点とした『健康の資産化・証券化・債権化』に関する議論も、国際的に急速に広がりつつあります。2030年のリヤド万博では、こうした理論がさらに深化していくでしょう。私たちも、AIとエイジングの研究を一層推進していきます」と述べた。
老化への認知度を高める機会となった万博をきっかけに、今後、より良く生きるための研究は一層注目される可能性がある。
