
化粧品の開発が進む。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)
化粧品が医療との結びつきを強めている。
この10月には、ポーラ・オルビスグループが都内の診療所と連携を発表したが、化粧品メーカーが医療機関と協力するケースは増えている。
国立大学法人佐賀大学は2026年に化粧品関連部門を設置するが、ここでは医学部とも協力する。
今後、美容医療との関連を深める可能性がある。
医療現場の学びから化粧品

科学的な開発。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- ポーラ・オルビスグループの動き → ポーラ化成工業が大森駅前皮膚科(鈴木民夫院長)と共同研究を開始。皮膚科現場の知見を製品開発に反映していく方針。
- 海外連携の拡大 → ポーラメディカルがTomorrow Medical社、ハノイ医科大学、国立中央皮膚科病院と連携し、白斑や老人性色素斑などの色素異常症をテーマに研究を推進。2026年初頭から本格始動予定。
- 業界全体の潮流 → 資生堂は中国・上海第九人民医院と形成外科領域でメディカルビューティー研究を展開。ロート製薬も藤田医科大学と再生医療分野で共同ラボを設立し、医療と化粧品の連携が進展している。
2025年10月、ポーラ・オルビスグループの研究開発を担うポーラ化成工業は、東京都大田区の大森駅前皮膚科と共同研究を開始した。同医院の院長である鈴木民夫氏は2023年まで山形大学皮膚科教授を務め、現在は山形大学名誉教授。
今後、皮膚科の現場で得られた学びを製品づくりに生かすという。
また、同グループのポーラメディカルは2025年8月、Tomorrow Medical社と、ベトナムのハノイ医科大学および国立中央皮膚科病院と連携を発表している。研究テーマは、白斑や老人性色素斑などの色素異常症などだ。2026年初頭から本格的に活動を開始する予定だ。
化粧品と医療機関の協力関係は広がりを見せている。
資生堂は2023年に中国の上海第九人民医院と提携し、形成外科と連携したメディカルビューティー研究を推進することを発表した。
また、ロート製薬は藤田医科大学と合弁会社を設立して、東京都内に再生医療分野での共同研究のためのラボを開設した。
先に見えるのは製剤開発

佐賀大学はコスメティックサイエンス学環を設置。(出典/佐賀大学)
- 佐賀大学の新設学環 → 2026年4月、国立大学として初の化粧品関連学部「コスメティックサイエンス学環」を設置。理工学・農学・医学・経済・芸術などを横断し、化粧品の開発や機能評価を科学的に学べる体制を構築。
- 学際的な教育 → 皮膚科学、分子薬理学、毒性学など医科学的知識を取り込み、化粧品と医療の橋渡しとなる人材育成を目指す。
- 海外との比較 → 韓国では製剤メーカーが美容医療用製品と化粧品の両方を手がけており、日本の動きはこれに遅れた形といえる。
佐賀大学は2026年4月、国立大学として初となる化粧品関連の学部となる「コスメティックサイエンス学環」を設置する。
ここでは、理工学や農学のほか、医学部や経済学部、芸術地域デザイン学部など複数の学問が連携、協力して、化粧品の開発や機能評価を科学的に学べるようにしていく。ここでは皮膚科学や分子薬理学、毒性学といった医科学的な知識も取り込まれると考えられる。
医療機関との連携によって、化粧品メーカーはより医学に近づいていく。化粧といっても、いわゆる製剤に近いものが開発される可能性も考えられる。
これは海外に遅れた動きといえるだろう。韓国では、製剤メーカーが多数存在し、そこで作られたさまざまな製品が、美容医療に使われ、世界中で展開されている。こうした製剤メーカーは化粧品も開発販売していることは珍しくない。
美容医療で使われる製剤は、科学的な根拠が不足しているとも指摘されている。日本で研究された製剤が、科学的な根拠をもって美容医療に利用可能となれば、それは美容医療をより発展させる動きとみなすことができる。
今後、化粧品は医療との結びつきを一層強くしていく可能性がある。
