
アジア国際美容医学フォーラム(AFAS)の講演会場。(写真/編集部)
韓国の美容医療は進んでいるとされるが、実際、日本ではまだあまり知られていない新しい美容施術や関連製剤が導入されているケースも少なくない。
2025年11月16日、都内でアジア国際美容医学フォーラムが開催され、韓国および日本の医師による講演が行われた。韓国の医師からは、韓国で実際に行われている最新技術が紹介された。
韓国で実践が始まる施術とは

アジア国際美容医学フォーラム(AFAS)理事長の林鍾学(イム・ジョンハク)氏。(写真/編集部)
- hADM(人由来無細胞皮膚マトリクス) → 人の皮膚由来の細胞外マトリクス製剤で、コラーゲンブースターより人体に近い素材として紹介。感染リスクはあるが、韓国では一定の支持を得ている可能性。
- 瞳拡大術(シリコンリング) → 目の中にリングを入れて黒目を大きく見せる施術。12人中4人で炎症が続き除去されたが、満足度は高かったと報告。
- その他の新技術 → 高周波併用脂肪吸引、ニードルRF様レーザー、PRP・エクソソームの簡易処理装置、PDOパウダー注入、膣フィラーなど、多様な技術が発表。
一つは、ヒフコNEWSでも既に伝えている「hADM(人由来無細胞皮膚マトリクス)」。人の皮膚から採取した細胞外マトリクスを製剤化したもので、アックジョンリーダース皮膚科医院院長のユン・ソンジュ氏がコラーゲンブースターより人体に近いという位置づけで紹介していた。ランチョンセミナーなので、スポンサーのある講演ではあるが、韓国では一定の支持を得ている様子がうかがえた。
前にAMWCの講演を伝えた際には、hADMは感染症のリスクが存在していることが紹介されていたので、どのように日本でとらえられるかは未知数ではあるが、韓国では存在感を高める可能性もあるように見えた。
また、アックジョン・ヨンセイ眼科院長のリ・ドンホ氏は、「シリコンリング」を用いた瞳拡大術について講演した。日本ではあまり聞かないが、三白眼を修正するもので、カラーコンタクトレンズによって瞳孔を大きく見せる方法では目に負担になることから、目の内部に黒い輪を入れるというアプローチ。黒目の周囲にリング上のインプラント挿入する手術を示していた。12人に実施した結果では満足度は高かったが、4人は炎症が継続したため、インプラントを除去したという。
チョンダム・ジェネックスクリニック院長のソン・キス氏は、脂肪吸引のための高周波の応用として、脂肪吸引の前に、棒状の電極を脂肪内に挿入し、そこで45~50度に加熱してから脂肪を吸引する方法を紹介していた。脂肪が軟らかくなることで吸引しやすくなる。皮膚の中で直接熱するのが特徴だ。二重あごなどの改善例が示された。
今回の会長を務めた韓国ソウルのKAIROS院長、AFAS理事長を務める林鍾学(イム・ジョンハク)氏は、ニードルRFのような形であるものの、ファイバーが針に仕込まれており、そこを通して980nmのレーザー照射ができる施術を紹介した。これにより、シワや傷跡などの治療ができるというもの。さらに、PRP(多血小板血漿)やエクソソームのため自己血の処理をコンパクトな機器で実現できる装置の可能性について紹介していた。
このほかの講演者は、糸リフトの材料で知られるPDO(ポリジオキサノン)パウダー注入してコラーゲンを増やす施術、膣フィラーの製剤などを紹介していた。
安全性の情報共有は重要

アジア国際美容医学フォーラム(AFAS)の講演会場。(写真/編集部)
- 安全性と情報共有の重要性 → 新しい施術が次々と登場する中で、安全性の理解と情報共有の必要性が改めて指摘された。
- ヒアルロン酸注入の壊死例 → ヒアルロン酸が血管に侵入する「動脈タイプ」と、血管を圧迫する「非動脈タイプ」に分類して説明した。
- 韓国の現状 → 新技術・新製剤の導入が加速する一方で情報は不足しがち。効果と安全性の両面で理解を深める必要がある。
新しい施術が次々と登場している中で、安全性の情報は必ず共有され理解した上で受けることが重要だ。
ヒアルロン酸が血管に入り込んだり、ヒアルロン酸が血管を圧迫したりして、壊死を起こすというケース。ジョン氏は、血管に入り込むタイプを動脈タイプ、圧迫するタイプを非動脈タイプと分けて解説した。いずれも速やかな対処が必要になるが、動脈タイプの方が緊急を要する。壊死が起これば手術で治さないといけない。ジョン氏は手術で修復する過程をスライドで多数提示していた。
美容施術は新しい施術が次々と出ており、韓国は特に新しい機器や製剤の開発が活発でもあり、今後も注目される。一方で、こうした新技術は情報が少ない場合も多いと見られ、その効果と併せて安全性情報への関心と理解を深めることがますます重要になるだろう。
