
シミの要因を分析する技術を開発。(出典/ポーラ化成工業)
シミの治療では、見た目の濃さや場所で判断されることが多いが、少量の皮膚を採取し、遺伝子やタンパク質の情報を解析することで、要因を推定する技術が開発された。
ポーラ化成工業が2025年11月に発表した。
ごく少量の皮膚細胞から要因を推定

AIを用いた分析。(出典/ポーラ化成工業)
- シミの発生要因 → メラノサイトの過剰活性化、メラニンの過剰生産、表皮細胞への輸送促進、メラニン蓄積などが関与する。
- 新技術「マイクロバイオプシー」+AI解析 → 直径0.25mmの極細針で皮膚を採取し、DNA・RNA・タンパク質を解析。シミの発生要因をAIで推定。
- AIによる「シミ形成要因スコア」 → 遺伝子発現データからAIが「メラニン代謝」「角化」「メラニン蓄積」などを数値化し、シミのタイプを特定可能にした。
ポーラ化成工業によれば、シミの要因は多岐にわたる。シミができるプロセスでは、メラノサイト(色素細胞)で作られた色素の元となるメラニンが、ケラチノサイト(表皮細胞)に移っている。
シミの主な4つの要因として、メラノサイトの過剰な活性化、メラニンの過剰生産、メラニンの表皮細胞への輸送促進、表皮細胞へのメラニン蓄積がある。
ポーラ化成工業は、直径0.25mmの極細針で皮膚をわずかに採取する「マイクロバイオプシー」とAI解析を組み合わせ、シミ一つずつがどのような要因で生じたかを推定する技術を開発した。
このシステムでは、細胞のDNAやRNA、タンパク質を分析して、遺伝子の働きを調べることができる。
今回の研究では、マイクロバイオプシーで採取した皮膚から遺伝子発現をAIで解析して「シミ形成要因スコア」を計算する仕組みを作った。
集められた膨大な遺伝子情報をもとに、AIがシミごとに「メラニン代謝」「角化」「メラニンの蓄積」などの要因を数値化できるようになり、見た目では判別できなかったシミのタイプが明らかになる。
レーザー治療後の変化を数字で示す

マイクロバイオプシーで皮膚細胞を採取。(出典/ポーラ化成工業)
- AIの新たな応用 → ポーラ化成のAIシステムが、美容医療のレーザー治療効果の評価にも活用され始めた。
- 研究結果 → 日本人女性を対象に調べたところシミ部位の識別が可能となり、治療を受けた11人では、施術後に「メラニン蓄積スコア」が大幅に低下。
- 意義と展望 → レーザーがメラニン過剰細胞を減らすことを遺伝子レベルで実証。化粧品企業の技術が美容医療のカスタマイズ化を加速させる可能性がある。
興味深いのは、このAIシステムを美容医療のレーザー治療の評価にも使い始めている点だ。
日本人女性120人を対象に調べたところ、シミの部分とシミではない部分を判別することができた。
その上で、レーザー施術で改善が見られた日本人女性11人の施術前後にマイクロバイオプシーを行い、AIでメラニン蓄積スコアを比較したところ、治療後はスコアが大きく低下していた。
これは、レーザーがメラニンを過剰に含む細胞を実際に減らしていることを、遺伝子レベルで裏付けた形となる。
今回の研究には、日本色素細胞学会会長、国際色素細胞学会会長、美容皮膚科・レーザー指導専門医委員長などを歴任した池袋西口病院・美容皮膚科の船坂陽子氏も参加している。
ヒフコNEWSでは、皮膚のRNAから肌の状態を推定する他の化粧品企業の技術も紹介したことがある。化粧品企業が独自の技術で皮膚の状態を可視化し、それを美容医療にも応用するという流れは、シミ治療のカスタマイズをより進化させる可能性がある。
