
オンライン診療の相談が増えている。(出典/東京都)
オンライン診療の普及が進む一方で、診察不足のまま薬が処方されたり、高額な定期購入が行われたりするなどのトラブル相談が増えている。
2025年11月、東京都消費生活総合センターが報告した。
説明不足のまま薬が届く

薬の処方でトラブル。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- オンライン診療の相談件数が急増 → 東京都によると、2025年度上半期の相談は159件と前年の約2倍に。
- 説明不足・高額契約・解約困難などの問題が共通 → 医師の診察不足や副作用説明の欠如、定期購入契約による高額請求など、利用者が不利益を被るケースが報告されている。
- 利用者にも「情報確認と自己防衛」が求められる → 医療機関名・所在地・医師名・連絡先を事前に確認し、薬代以外の費用や契約条件を把握することが重要。副作用時の相談先確保も求められる。
東京都によれば、オンライン診療をめぐって、都内の消費生活センターへの相談は年々増えている。
2024年度は上半期に86件だったが、2025年度の上半期には159件に増加した。
ダイエット薬を希望してオンライン診療を受けた20代女性のケースでは、医師から体調や持病の確認が行われず、わずかなやり取りで2カ月分、2万5000円相当の薬が処方された。
このケースでは後になって、半年間の定期購入契約だったことが判明した。副作用の説明も十分にないまま高額の契約を結ばされ、解約も難しいと伝えられた。
都によれば、こうした事例は一部ではなく、説明不足、連絡先不明、想定外の高額請求といった問題が共通して起きている。
東京都は、オンライン診療を利用する側からも、体調、持病、服薬の状況などを正確に伝え、医師から治療目的、効果、リスク、処方期間などの説明を受ける必要があると指摘する。
どの医療機関が関与しているのか、所在地や医師名、連絡先を確認しておくことも重要で、副作用が出たときに相談できる相手を確保しておくことが求められると説明している。
さらに、オンライン診療では薬代以外に送料などが加算されるケースがあるため、総額や解約条件を事前に確認することが不可欠だとしている。
メール診療は医師法違法の可能性

オンライン診療は適切に行われている?画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 厚労省が「チャット診療」を明確に問題視 → 2025年通知で、メールやチャットのみでの診断・処方は「無診察治療」に該当する可能性が高いと明言。医学的診察には問診・視診・聴診などの行為が必要とされた。
- リアルタイム性が必須要件に → 写真やチャットのみのやり取りは診療と認められず、オンライン診療は映像・音声による双方向コミュニケーションを前提とすることが求められる。
- 美容医療・ダイエット薬・AGA領域にも影響拡大 → GLP-1薬や美肌・育毛治療薬のチャット処方も指針違反と判断される可能性。適切なルール整備が今後の課題となる。
厚生労働省の2025年通知では、美容医療クリニックのオンライン診療に関して、「メールやチャットのみでの診断・処方」は医師法第20条が禁じる無診察治療に該当する可能性が高いと明確に示された。
診察とは問診、視診、聴診など、医学的に診断を行うための行為を含むとされる。文字や写真だけでは十分な診察情報を得られないため、診療とは認められないとされる。
オンライン診療はリアルタイムの視覚・聴覚情報を伴う通信が求められ、記録された写真や動画、チャットだけで処方を行う行為は指針違反になる可能性がある。
この方針は、美容医療で普及してきたGLP-1受容体作動薬のダイエット目的処方、美肌の治療薬、AGA治療薬などにも影響すると考えられる。一部サービスではオンライン処方をAIチャットが代行するケースも見られ、リアルタイム性や診察行為の要件を満たすかどうか、今後行政が判断する領域となる。
一方で、適切な指針の下でオンライン診療が整備されれば、安心して利用できる仕組みが広がる可能性もある。
オンライン診療のトラブルに遭わないよう、利用時には注意が必要だろう。
