
解約条項を巡って差止請求。(出典/消費者庁)
美容医療をめぐって、予約のキャンセルや遅刻を理由に一定の費用を請求されたという話題が、SNSなどで話題になっている。
こうした中、消費者庁は2025年12月、横浜市の美容外科が使用していたキャンセル料条項について、適格消費者団体との間で差止請求に関する協議が調ったことを公表した。
美容医療の契約を考えるときに参考になる可能性がある。
理由を問わないキャンセル料は「無効」

解約するために来院が必要という条項は問題に。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 美容外科のキャンセル規定に差止請求 → 適格消費者団体「消費者支援かながわ」が、YBC横浜美容外科の「一律キャンセル料」などの条項を問題視。
- 消費者契約法第10条が根拠 → 消費者の権利を不当に制限し、義務を加重する条項は「信義則に反し無効」と判断された。
- 美容外科側が是正対応 → 消費者団体の申入れを受け、同クリニックは条項を見直し協議を終了。
消費者庁の公表によると、適格消費者団体「消費者支援かながわ」は、YBC横浜美容外科が使用していた「施術のご予約とキャンセル料の取り決め」に問題があるとして、差止請求を行っていた。
問題とされたのは、予約キャンセルの理由を問わず一律にキャンセル料を請求する条項や、キャンセル料の支払いをしなければ解約が成立しないとする内容、解約は来院して手続きしなければならないなど。
消費者契約法では、消費者の権利を不当に制限したり、義務を重くしたりする条項は無効とされる。
今回の協議では、やむを得ない事情を一切考慮せずに損害賠償を求める点や、解約の自由を制限する点が、信義則に反して消費者の利益を一方的に害すると判断された。
今回の判断では次のような法律の条文が参考にされた。以下に引用する。消費者契約法 (消費者の利益を一方的に害する条項の無効) 第十条 消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。 注)上記の差止請求が行われた日現在の規定
その結果、同美容外科は申入れの趣旨に沿った対応を行い、協議は終了している。
「遅刻で30万円」がSNSで拡散、契約の指針とは?

解約のルールを明確にするのは重要。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 自由診療ゆえの契約の曖昧さ → 医療行為でありながら民間契約として扱われるため、キャンセル料や遅刻時の対応ルールが分かりにくい現状がある。
- キャンセル料の「正当性」が問われる → 消費者保護の観点から、理由を問わず高額請求する条項は不当とされる可能性がある。
- ガイドライン整備の必要性 → 業界全体で統一的かつ透明な契約ルールを設けることが、トラブル防止と信頼確保につながる。
美容医療をめぐっては「手術に1時間遅れた結果、30万円を請求された」という話がちょうど2025年12月にSNS上で拡散された。
今回の事案は遅刻そのものを対象としたものではないが、美容医療をめぐる費用請求のルールが、契約条項として妥当かどうかが問われた点で通じた部分があると見られる。SNS上で話題となっている遅刻の際の請求を考える際にも参考になる可能性がある。
また、ヒフコNEWSでは、解約を巡った問題について継続的に伝えており、過去の記事も参考になる部分があるだろう。
美容医療は自由診療である一方、医療行為を伴う特殊な契約でもある。消費者にとっては、どこまでが正当なキャンセル料で、どのような場合に請求されないのかが分かりにくい。
手術の遅刻や直前キャンセルをめぐる混乱が続く中、業界全体として分かりやすいガイドラインを示すことが、トラブル防止につながる可能性がある。
美容医療を受ける立場としては、契約が分かりやすいかどうかに注意すると良いだろう。
