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改正医療法が順次施行 美容医療の監視と情報公開が制度化へ 美容クリニックは安全管理体制の報告必要に 医師偏在解消へ開業規制も導入、オンライン診療が法律で位置付け

カレンダー2025.12.20 フォルダー 国内
国が改正医療法を公布。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

国が改正医療法を公布。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 2025年12月12日、医療法等の一部を改正する法律が公布され、順次施行されることになった。

 改正医療法により、美容医療に関わる安全管理や報告体制が制度上、より明確に位置づけられることになる。

美容クリニックは安全管理体制を報告必要に

厚生労働省「美容医療の適切な実施に関する検討会」報告書。(出典/厚生労働省)

厚生労働省「美容医療の適切な実施に関する検討会」報告書。(出典/厚生労働省)

  • 改正医療法の柱 → 医療提供体制の見直しが中心。中でも美容医療の安全管理体制の報告制度が重要項目として位置付けられた。
  • 新たな制度 → 「美容を目的とした治療」を行う医療機関に対し、医療安全指針・事故防止策などの報告義務を新設。
  • 報告内容と公表 → 各医療機関は都道府県知事に報告し、安全確保に関する情報は公表される見通し。

 改正医療法では、日本国内で医療がどう提供されるかという体制を見直すことが柱になっている。

 国は12月18日に全国の都道府県や市町村に改正医療法の通知を出したが、この通知の中で2番目に示されたのは、美容医療に関係する安全管理体制の報告制度。美容医療のルールを強化することの優先順位を高く見なしていることがうかがえる。

 美容医療のルールをめぐっては、2024年に「美容医療の適切な実施に関する検討会」が開催され、この中で美容医療のルールが話し合われた。ヒフコNEWSでも伝えているが、この時に注目されたのは、美容医療を提供する医療機関が、国に安全管理体制を定期的に報告する仕組みを作るという方針だった。

 今回の改正で、美容医療に直接関係する部分として、「美容を目的とした治療」を行う医療機関に対する新たな報告制度が作られることが法律上も正式に位置付けられた。

 美容を目的とする治療は、皮膚や歯の美化、身体の整容、体重減少などを目的とした医療行為とされ、これらを行う病院や診療所の管理者は、「医療安全を確保するための指針や体制」「事故防止策」などについて、都道府県知事に報告しなければならないとされた。

 その上で、安全確保と強く関係する事柄は、都道府県によって公表される見通しになっている。

 虚偽の報告や未報告があった場合には、是正命令を出すことも可能になる。

 美容医療は自由診療が中心で、実態が見えにくいことが問題視されてきた。死亡事例や重い合併症が発生する中で、最低限、安全に関連した情報が表に見えるようになると予想される。

オンライン診療や開業のルールも

東京都など都心部では医師偏在の改善のため、医師の開業に当たって一定のルールが適用される。(写真/Adobe Stock)

東京都など都心部では医師偏在の改善のため、医師の開業に当たって一定のルールが適用される。(写真/Adobe Stock)

  • オンライン診療の法制化 → 改正医療法により、オンライン診療が正式に法律上の医療行為として位置付けられた。医師・歯科医師が映像や音声で患者の状態を確認しながら行うことが要件。
  • 開業規制の明確化 → 医師偏在の是正を目的に、外来医師が過剰な地域では、開設6カ月前の届出義務を導入。地域医療への貢献が求められる場合がある。
  • 都道府県の権限強化 → 必要医療の提供を拒む場合、協議要請・説明義務・勧告・公表が可能に。

 改正医療法では、これまで通知やガイドラインに基づいて運用されてきたオンライン診療が、医療法上に明確に位置づけられた。

 オンライン診療は法律上、医師や歯科医師が患者と映像や音声などにより状態を確認しながら行う医療行為と位置付けられた。ヒフコNEWSで、以前、厚労省の美容医療に関する通知を紹介し、この中で、リアルタイムであることが重視されたが、単純なメッセージアプリなどでのオンライン診療は難しくなる可能性がある。改正医療法では、オンライン診療を行うに当たって病院や診療所の施設などの条件が定められることになった。急変時に対応するなど、安全性の視点からルールが厳しくなる可能性がある。

 また、「オンライン診療受診施設」という施設が新設されることになった。その開設後10日以内の届出が求められる。美容医療の観点から、このオンライン診療受診施設が関係していく可能性がある。

 このほか、開業規制についてのルールも法律で明確に示されることになった。開業規制は、医師が都市部に集中して地域に少なくなっているという「医師偏在」の問題を解決する観点から行われる。いくつかのルールが示されたが、外来で対応する医師が過剰と判断された地域「外来医師多数区域」では、新たに診療所を開設しようとする医師に、開設の6カ月前までに都道府県への届け出を義務付ける。しかも、地域に必要とされる医療を提供しない意向が示された場合には、協議の場への出席要請や説明義務が課される。都道府県が地域外来医療の提供を要請できるようになる。都道府県は最終的には勧告や公表も可能となる。

 美容医療は都市部への集中が顕著な分野であり、今後はこうした制度の影響を受ける可能性がある。美容医療は自由診療ではあるものの、保険診療も提供しているところは多い。保険診療を提供しようとすれば、改正医療法の影響を受ける可能性がある。美容クリニックの開業に一定の影響が及ぶ可能性もある。

 あるいは美容クリニックが、地域の医療にどのように貢献するのかという点で、説明責任が求められるようになることも考えられる。今後、美容医療を含めた医療機関を取り巻く環境は大きく変わる可能性がある。

参考文献

「医療法等の一部を改正する法律」の公布及び一部施行について(通知)
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T251218G0030.pdf

厚労省通知「メールやチャットの診療」違法の恐れ、オンライン診療はリアルタイム情報が必要、キャンセル不可や高額処方などトラブル増加の報告も【連載・厚労省通知】
https://biyouhifuko.com/news/column/14644/

厚生労働省、美容医療7つの対応策、検討会がまとめる、25年からガイドライン整備、直美の検討は別会議で継続、「美容医療の適切な実施に関する検討会」報告書案
https://biyouhifuko.com/news/japan/9883/

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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