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生のままの細胞がもたらす再生医療の新たな可能性、美容医療にも新風?

カレンダー2023.6.16 フォルダー 国内

ポイント

  • 再生医療で使われる細胞は凍結されたもののほか、生のまま供給されるものもある
  • 福岡市で、生のままの細胞が再生医療に使われ、実績が出てきている
  • 病気やリハビリだけではなく、美容医療へ応用も進められている
第23回日本抗加齢医学会総会の会場となった東京国際フォーラム。写真/編集部

第23回日本抗加齢医学会総会の会場となった東京国際フォーラム。写真/編集部

 美容医療にも使われている再生医療だが、使用される細胞として「生」の細胞が注目されるかもしれない。2023年6月10日、第23回日本抗加齢医学会総会で、九州のASメディカルサポート代表取締役専務の櫻井由美氏が、供給している細胞の特徴を解説した。なお、同社は22年に第4回ヘルスケアベンチャー大賞(日本抗加齢協会主催)の学会賞を受賞した。

「生のままの細胞は動きがよい」

第23回日本抗加齢医学会総会で発表するASメディカルサポートの櫻井由美氏。(写真/編集部)

第23回日本抗加齢医学会総会で発表するASメディカルサポートの櫻井由美氏。(写真/編集部)

 櫻井氏は臨床検査技師として大学をはじめとした研究室で28年間にわたって細胞の培養を手掛け、ASメディカルサポートでも再生医療のための細胞を供給する仕事に取り組む。ASメディカルサポートは2021年から福岡市で九州再生医療細胞培養センターを運営し、クリニックと連携して治療用の細胞を供給する。

 櫻井氏たちが手掛けているのは脂肪幹細胞の培養。脂肪幹細胞は、脂肪から採取できる幹細胞で、他のタイプと比べて体から採取しやすい。

 冒頭に紹介したように、同社の提供している幹細胞の大きな特徴は、生のままの細胞であること。

 再生医療では、凍結された細胞がクリニックなどに届けられ、使う前に解凍して使われる場合もあるが、ASメディカルサポートでは凍結された細胞を解凍して培養し、培養液に浮遊させた状態で生のままの細胞を増やして、それをクリニックなどに供給している。

 櫻井氏によると、生の細胞として供給することで、「細胞が足を伸ばしてしっかり張り付いて増え始める」と言い、細胞の動きがよくなり、増殖もしやすいと説明する。

病気の治療から美容医療まで対応

第23回日本抗加齢医学会総会。写真/編集部

第23回日本抗加齢医学会総会。写真/編集部

 講演で櫻井氏は、脳卒中で体をうまく動かせなくなった人に対して幹細胞を注射して投与した実例を紹介した。

 例えば、ある人は4年前に脳卒中を発症して、初めて来院したときには、目配せしかできなかった。それが1年間の幹細胞治療とリハビリに取り組んでもらうことで、運動能力を取り戻し、自分の見た目を気にするまでに、精神面の健康状態も改善したという。もっともこうした治療において、生の細胞を使った場合と、凍結した細胞を使った場合の効果を比べるにはさらなる研究が必要になる。しかし、もし生の細胞の方が効果が高いと確認されれば、使用する細胞の選択が注目されることがあるかもしれない。

 櫻井氏によると、生の細胞は美容医療にも使われていると説明する。再生医療は美容医療の分野にも広がっている中で、病気の治療やリハビリテーションへの再生医療の応用が進み、実績が増えることで、美容医療で行われる治療もより安心で安全になってくることが期待される。

参考文献

第4回 ヘルスケアベンチャー大賞結果のご報告
http://www.ko-karei.com/healthcare-v/hcv04.html#link99

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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