美容医療の新常識「エピジェネティック・クロック」が教える、あなたの本当の年齢
ポイント
- 客観的にその人の老化の程度を測ることができる日が近づいている
- 人の老化を判定する方法として「エピジェネティック・クロック」が注目されている
- 美容医療の効果についても数字で示されるようになる可能性がある
私たちの外見について、「実年齢よりも老けて見える」、逆に「若く見える」といった指摘を受けることがある。そうした本当の年齢、つまりどれだけ老化しているのかを客観的に測れる新たな時代が到来するかもしれない。
2023年6月11日、第23回日本抗加齢医学会総会では、近畿大学医学部皮膚科客員教授で同大学アンチエイジングセンターファウンダー、また日本抗加齢医学会理事長でもある山田秀和氏が自らシンポジウムに登壇し、美容医療の新常識とも言える「エピジェネティック・クロック」について解説した。
「暦年齢」よりも「生物学的年齢」
ヒフコNEWSで山田氏のインタビューをお伝えしたが、今、美容医療の領域では「アンチエイジング」から「若返り(rejuvenation)」へと関心が移っている。
そのときに重要なことの一つは、どれくらい若返ったかが確かな数字で理解できることだ。例えば、最近話題になることが多いNMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)といったサプリメントも、それを飲んだ場合に、何歳、何カ月、何時間若返るのか、数字で分かった方が良い。そのほかにも何らかの若返りの治療を受けたときに、漠然と、若返ったと言われただけでは不十分だろう。
山田氏は、「暦年齢よりも生物学的年齢へと考え方を変える必要がある」と指摘する。
※生物学的年齢とは、生まれてからの年月によって決まる「暦年齢」とは異なり、体の組織や細胞の老化の度合いによって決まる年齢のこと。
治療を受けた結果として「生物学的年齢が50日分若返りました」「寿命が50日分延びました」などと言われれれば、その効果を客観的に理解することができる。治療を受ける意味も明確になるだろう。
そのときに、さまざまな方法が開発されているが、特に注目されているのが、「エピジェネティック・クロック」という方法である。これはDNAの「メチル化」の状態を利用する方法だ。
※「DNAのメチル化」とは、遺伝情報を収めているDNAにメチル基と呼ばれる分子が付くことで、遺伝子の発現のオン、オフと調整する仕組みのことである。このようなDNAの調節の仕組みは、エピジェネティックな変化と呼ばれている。
このエピジェネティック・クロックは、DNAのメチル化の状態を、その人の老化の程度を示す、文字通り「時計」として利用するものだ。山田氏は、「2013年に、米国UCLA教授のスティーブ・ホバース氏が開発したHorbath時計以来、第1世代、第2世代と登場し、第3世代以降も出ている」と解説した。具体的には、2018年にPhenoAge、2019年にGrimageといった第2世代、さらにダニーデンPACEという老化の速度を測る第3世代のエピジェネティック・クロック、その後も複数の方法が発表されている。
美容医療の効果も目に見えるように
山田氏によると、このほかにも体の炎症の状態、歩くスピード、握力、呼吸の能力などが、生物学的年齢を測るために有効であることが確認されつつあるという。日本人独自のエピジェネティック・クロックにつながる、東北メディカル・メガバンクと呼ばれる研究や100歳を超える人たちを対象にした研究も進んでいる。山田氏は、「生物学的年齢と見た目との関係も分かってきている」と説明する。
エピジェネティッククロックなどの指標を使って、美容医療の効果が測定される時代がすぐ目の前まで来ている。
参考文献
「見た目の大切さ」とは?──美容医療の第一人者 日本抗加齢医学会の山田秀和理事長と語るVol.1
https://biyouhifuko.com/news/interview/1082/
美容医療と美しさ──美容医療の第一人者 日本抗加齢医学会の山田秀和理事長と語る Vol.2
https://biyouhifuko.com/news/interview/1100/
寿命400歳まで示唆する最新研究、慶應義塾大学の早野元詞氏が解説するアンチエイジングから若返りへの最新トレンド、第111回日本美容外科学会(JSAS)
https://biyouhifuko.com/news/japan/1439/
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