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「見た目の大切さ」とは?──美容医療の第一人者 日本抗加齢医学会の山田秀和理事長と語るVol.1

カレンダー2023.4.25 フォルダーインタビュー

ヒフコNEWSでは第一線の医師に美容医療の課題や展望について話を聞いていく。今回は、近畿大学医学部皮膚科客員教授で、近畿大学アンチエイジングセンターファウンダー、日本抗加齢医学会理事長の山田秀和氏。日本では美容整形への抵抗が強いとも言われたが、現在、美容医療への関心が高まっているとされる。山田氏は「外見への投資が重要視されている」と言うが、それはどういうことだろうか。

見た目の大切さについて語る山田氏。(写真/編集部)

見た目の大切さについて語る山田氏。(写真/編集部)

山田秀和(やまだ・ひでかず)氏
近畿大学医学部皮膚科客員教授
近畿大学アンチエイジングセンターファウンダー
日本抗加齢医学会理事長

──「見た目の大切さ」をどう考える?

山田氏 社会における外見の重要性が認識されるようになった背景には、2000年代前半にイギリスの社会学者キャサリン・ハキームが提唱した「エロティック・キャピタル」という考え方があると思います。この概念は、人々が自分自身や他人を評価する際に、外見が重要な役割を果たすことを明確に示したものです。

 人を見た目で判断することはリスクを伴い、また、差別につながる恐れもあります。ですが、エロティック・キャピタルは、個人や集団が性的魅力によって得る価値をポジティブに捉えました。

──見た目の大切さとエロティック・キャピタルがつながっている?

山田氏 そうですね、エロティック・キャピタルは、外見の魅力によって付加的な資産を得ることができることを示すメカニズムです。

※エロティック・キャピタルという考え方は、性的魅力を持つ人々が、お金や社会的地位など、さまざまな種類のアドバンテージを得るためにその性的魅力を使う様子を現したものである。権力を得るために性的魅力を利用するようなことは否定的に捉えられがちだが、半面で社会の一部がこの種の力をあえて使えないように制限する側面もあることを著者は指摘している。

 私はこの概念を知ることで、自分の仕事の背景や社会における外見の価値についてより深く理解することができました。

 美容医療という点から言えば、この理解により、私は社会における外見の重要性と、自己実現の手段として医療技術を使って望ましい外見を実現することの価値を認識することができたのです。

 日本では美容医療に対する批判もありますが、人は外見が価値に結びつくからこそ、より多くの投資をしようとするのだと考えています。

──医療技術の進歩も目覚ましい。

山田氏 私が日々の診療で常に心がけているように、美容医療従事者は常に最新の医療情報や技術に触れることが必要です。私は常に最新の情報を入手し、日々の診療に取り入れるよう心がけています。

 しかし、新しい技術を導入するためには、時間と労力がかかります。さらに、美容医療は保険適用外であるため、希望しても受けられない治療もあります。そのため、コミュニケーションを第一に考え、それぞれの治療のリスクや効果、費用などを納得していただけるまで説明しています。

 美容医療では、一人ひとりのニーズを把握し、最新の技術や方法を用いて、一人ひとりに合った治療を提供することが重要です。一人ひとりの肌質、体質、症状が異なるため、オーダーメイドの治療が欠かせません。また、治療後のアフターケアも重要視し、安全性と快適性を重視しています。

──美容医療も変化している。

山田氏 そうですね、美容医療は確かに変わってきています

 かつてのアンチエイジング医療は、シワやたるみといった外的な問題を治療することに重点を置いていました。

 しかし、最近のアンチエイジング医療は、加齢による身体機能の低下やホルモンバランスなどの内的要因に着目し、それらを改善することで全体的な若返りを図るというアプローチをとっています。また、栄養、運動、睡眠などの生活習慣の改善も積極的に提案されています。

 アンチエイジングの原則は、栄養、運動、ストレスマネジメント、良質な睡眠、そして十分な日光浴です。紫外線や汚染物質などの外部環境は、酸化ストレスに大きく影響し、加齢とともに体に悪影響を及ぼします。健康的な生活習慣を身につけることは、あらゆる年齢層の人々にとって重要であり、健康寿命の延伸に貢献するものです。

──見た目を考えると、体の内側にも気配りが必要になる。

山田氏 はい。美容医療では、「エピジェネティクス」の制御をターゲットにした製品や治療法の開発にも取り組んでいます。

 エピジェネティクスの制御とは、遺伝子のオンとオフを制御する仕組みのことです。このエピジェネティクスの変化が遺伝子発現を変化させ、老化や病気のリスクを変化させる重要な役割を担っています。

 例えば、ヒト幹細胞由来の成長因子を含む美容液や、ヒト由来のプラセンタエキスを用いた治療薬が開発されています。これらの成分は、肌細胞の再生を促し、老化やシミ、シワの改善に効果を発揮します。

──見た目を改善する新しい手段が登場している。

山田氏 レーザー治療は、皮膚表面の問題だけでなく、その下にある組織の状態にも対応できる、汎用性の高い治療法です。シミやそばかす、肝斑の除去、シワやたるみの改善、傷跡や妊娠線の治療などが可能です。

 そのほか、ボツリヌス療法、ヒアルロン酸注入、PRP(多血小板血漿)療法などがあります。

 新しい化粧品や医療技術は常に開発されています。私たちは、より良い結果を得るために、最新の知識を学び、新しい技術を取り入れるように努めています。

 新しい技術を導入する際には、その安全性と有効性を慎重に検討することが重要です。また、治療を受けようとする人のニーズや期待を理解し、個々の状況に応じた適切な技術を選択することを優先しています。

──美容医療はあくまでリスクを伴う医療行為であることを忘れてはいけない。

山田氏 美容医療は、人々のQOL(生活の質)を高めるために重要な役割を担っており、医療と切り離すことはできません。美容医療の重要性は増すばかりで、医療と同じレベルの品質が求められます。

 しかし、美容医療は自費診療であるため、治療を受けようとする方の選択肢は限られるかもしれません。そこで、自費診療であっても、安価で最適な治療方法を提供することが重要だと考えています。(Vol.2に続く)

プロフィール

山田秀和(やまだ・ひでかず)氏
近畿大学医学部皮膚科客員教授
近畿大学アンチエイジングセンターファウンダー
日本抗加齢医学会理事長

1981年近畿大学医学部卒業。1981年オーストリア政府給費生(ウィーン大学皮膚科、米国ベセスダNIH免疫学)。1989年近畿大学医学部皮膚科講師。1996年近畿大学在外研究員(ウィーン大学)。1999年近畿大学奈良病院皮膚科助教授。2005年近畿大学奈良病院皮膚科教授。2007年近畿大学アンチエイジングセンター副センター長(併任)。2022年近畿大学客員教授。日本抗加齢医学会理事長。

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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