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美容医療と美しさ──美容医療の第一人者 日本抗加齢医学会の山田秀和理事長と語る Vol.2

カレンダー2023.4.26 フォルダーインタビュー

ヒフコNEWSでは第一線の医師に美容医療の課題や展望について話を聞いていく。今回も、近畿大学医学部皮膚科客員教授で、近畿大学アンチエイジングセンターファウンダー、日本抗加齢医学会理事長の山田秀和氏。前回は外見をより良くする意味について聞いたが、今回は美容医療と密接に関わる美しさについて話を聞いた。山田氏は美の概念の移り変わりを踏まえつつ、美しさや美容医療の利用についての考え方を語った。

「美」について語る山田氏。(写真/編集部)

「美」について語る山田氏。(写真/編集部)

山田秀和(やまだ・ひでかず)氏
近畿大学医学部皮膚科客員教授
近畿大学アンチエイジングセンターファウンダー
日本抗加齢医学会理事長

──外見への関心が高まる中、「美」をどのように捉えている?

山田氏 「美」とは、外見だけでなく、感情や経験、芸術や建築なども含めた複雑で多面的な概念です。

 最近、サイエンスライターのガイア・ヴィンスさんが、著書『進化を超える進化』の中で、私たち人類であるホモ・サピエンスとそれ以前の人類の集団について調べているうちに、私たちの祖先のひとつであるネアンデルタール人もネックレスを作っていたことがわかったと述べています。

 つまり、人類はその時代から自分の外見に気を遣っていたことになります。私たちホモ・サピエンスが進化したのも、美しさが決め手だったと言われています。

 人類は常に美に関心を持っていたのです。ネアンデルタール人も追随したこの美への関心は、美術、建築、ファッションなど、歴史の中でさまざまな形で進化・拡大してきました。美容医療への関心も、その延長線上にあると言えるでしょう。

──現在、美容医療への関心の高まりが指摘されます。

山田氏 美容医療の観点で言えば、1930年代、40年代、50年代、60年代、70年代と、それぞれの時代に美容整形手術を受けていたら結果は違っていたかもしれませんね。

 やはり、新しいものは格好いい。そう考えると、美しさは外見を変えるだけで決まるのではありません。

 1970年代に『太陽の塔』を初めて観たときには、「これはいったい何なんだ?」と思ったものです。そうアーティストは、かなり早い時期から新しいコンセプトを模索してきたのです。岡本太郎は、これからの美を先取りしていたのでしょう。

 また、食生活や環境など、いくつかの要素が美しさに影響します。私が生まれた頃と比べると、今の日本の若者はずいぶん魅力的に見えるようになりました。外見に大きな変化があります。それに加えて、たとえば大阪の人がパリに3年間留学して帰ってきたり、アメリカの名門大学に留学したりすると、印象が変わることもある。

 なぜそのような変化が起こるかというと、背景には「エピジェネティクス」の変化があるのです。

 遺伝情報が同じでも、遺伝子のオンとオフを調節するエピジェネティクスが生活環境などの影響で変化するために差が現れるのです。一卵性双生児であっても外見に違いが生まれる理由はそれですね。

 それこそ食生活や環境、遺伝子、外見がすべてつながってくるわけです。遺伝学の分野においても、美の研究は進んでいます。

──美は主観的なものであり、しかも遺伝的にも変化する。

山田氏 神経美学は、ニューロビューティクスとも呼ばれ、私たちが美を感じる仕組みの背後にある神経科学を探求する学問です。美の知覚をはじめとする美的体験に関わる脳領域や神経メカニズムを明らかにすることを目的としています。

 見る人の立場から、美を感じる中心がどこにあるのかを探ろうとしているのです。それもまた、興味深い分野だと思います。

 変化や成長の時代には、見る側の美の概念も変化することがあります。例えば、昔は美しいと思われていたものが、今はそう思われないこともあります。

 社会が変化し、進化するにつれて、私たちの美に対する認識も変化していく。

──そうした中でアンチエイジングと若返りをどうとらえるとよい?

山田氏 アンチエイジングは、老化の進行を遅らせたり戻したりすることを目的とし、若返り=リジュベネーションは、より若々しい外見を取り戻すことを目的とした美容医療のことを指します。

 アンチエイジングでは、健康的な食事や運動などの生活習慣の改善、ホルモン補充療法、幹細胞療法、さまざまな美容整形などの医療行為が行われます。

 一方、若返りでは、フェイスリフト、ボトックス注射、フィラーなどの処置が行われます。

 これらの治療法は美容的な効果をもたらしますが、老化現象は人生の自然な一部であり、完全に元に戻すことはできないことを忘れてはいけません。

 また、治療法を決定する前に、リスクや潜在的な副作用を注意深く考慮する必要があり、資格のある医療専門家との相談が不可欠です。

 一方、医療技術の進歩により、美容整形ではより自然で長持ちする結果を得ることができるようになりました。また、レーザーや超音波治療などの非侵襲的な治療法も普及しています。

※メスなどを使って体に傷を付けて行われる外科手術のような治療は「侵襲的(しんしゅうてき)」と言う。それに対して、体に傷を付けることなく行われる治療は「非侵襲的」と言う。

──美容医療のクリニックはどのように選べばよいか?

山田氏 良いクリニックを見つけるのは簡単ではありません。費用や医師の資質だけでなく、教育投資をしているか、国際学会に参加して新しい技術を学んでいるか、なども考慮する必要があります。すべての医師が美容外科の専門知識を持っているわけではなく、中には資格すら持っていない場合もあります。クリニックを探す際には、特定の施術に特化しているか、専門の診療科があるかなども考慮するとよいでしょう。例えば、唇を微妙に変えるだけで、その人の見た目は劇的に変わります。熟練した外科手術の素晴らしさには目を見張るものがあります。注射によるフィラー治療も、少量で大きな違いが出るため、専門知識が必要です。

──わずかな違いに大きな意義がある。

山田氏 そうですね、その通りです。個人の価値観も、美容整形手術の目的に影響を与えます。特に就職や結婚など、外見が変わればその人の印象が良くなります。外見をどう見るかは、価値観が大きく影響するのです。そのため、見た目の重要性を判断するのは難しい。しかし、私は、自分の価値観の範囲内で、医療行為によって外見を変えることは許容されると考えています。行き過ぎると問題が生じますが、社会が外見に関心を持ち、美容整形の需要が高まるのは良いことだと思います。

 最終的には、アンチエイジングや若返りの治療を受けるかどうかは、個人の目標や興味、健康状態などに基づいて決定する必要があります。現実的に考えて、これらの治療法の潜在的なリスクと利点を理解することが重要です。適切な治療法を決定するためには、資格を持った医療専門家に相談するのが最も良い方法でしょう。

プロフィール

山田秀和(やまだ・ひでかず)氏
近畿大学医学部皮膚科客員教授
近畿大学アンチエイジングセンターファウンダー
日本抗加齢医学会理事長

1981年近畿大学医学部卒業。1981年オーストリア政府給費生(ウィーン大学皮膚科、米国ベセスダNIH免疫学)。1989年近畿大学医学部皮膚科講師。1996年近畿大学在外研究員(ウィーン大学)。1999年近畿大学奈良病院皮膚科助教授。2005年近畿大学奈良病院皮膚科教授。2007年近畿大学アンチエイジングセンター副センター長(併任)。2022年近畿大学客員教授。日本抗加齢医学会理事長。

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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