この6月、国が美容医療に関する初の検討会を始めたことが大きく注目されるが、美容医療の市場規模は拡大が続いているようだ。
矢野経済研究所の最新調査によれば、2023年の日本の美容医療市場は前年比108.8%の5940億円に達した。コロナ禍をきっかけに急成長している美容医療市場は、非外科的治療の需要拡大などによりさらなる成長を遂げている。
非外科的治療の人気
- 美容医療市場の拡大→ 日本でも美容医療の市場拡大が続いている。
- 急成長の背景→ コロナ禍でのマスク生活や在宅勤務の普及により、目元や肌のケアを重視する傾向が強まった。
- 非外科的治療の人気→ 医療脱毛やボツリヌス療法、ニキビ治療、美肌関連の施術などが中心で人気が高まった。
- オンライン診療の普及→ オンライン診療の普及やドクターズコスメの取り扱い強化、SNSマーケティングに力を入れる医療施設の増加、新しい施術の台頭、韓国初の医療材料や化粧品、施術の普及が市場拡大に寄与。
ヒフコNEWSでは、世界や米国美容医療の件数についてのニュースを伝えたが、日本でも同じように美容医療の市場拡大が続いている。
振り返ると、20年の美容医療市場は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で19年の4070億円から4050億円に減少し前年を下回った。その後、21年以降は市場が回復基調に転じ、同研究所では22年には市場規模が5460億円に達していたと推測している。23年にはさらに成長し、5940億円になった。この急成長の背景には、コロナ禍でのマスク生活や在宅勤務の普及により、目元や肌のケアを重視する傾向が強まったことが挙げられている。
非外科的治療の人気が高まったのも大きい。非外科的治療は手術をせずに行う美容医療で、医療脱毛やボツリヌス療法、ニキビ治療、美肌関連の施術などが中心となる。これらがさまざまな診療科で提供されている。オンライン診療の普及やドクターズコスメの取り扱い強化、SNSマーケティングに力を入れる医療施設の増加、「スネコス注射」や「ポテンツァ」、「リップリフト」などの新しい施術の台頭、韓国初の医療材料、化粧品、施術の普及が市場拡大につながっているという。
従来、サブスクリプションによる月額払いが利用者を増やしたと指摘されていたが、エステサロンや医療機関の経営難が大きく報じられるなどして以前ほど注目されていない可能性もある。同研究所ではサブスクについて昨年は触れていたが、今年は触れていない。
医療機関の選別が進む可能性も
- 市場成長の要因→ 男性の美容医療需要の拡大や女性の心理的ハードルの低下が市場成長を後押し。
- 利用者の選別力→ 増える美容クリニックの中で良い施設を見極める目が重要。
- 厚生労働省の対応→ 厚生労働省は6月から初の研究所を開始し、年内にも方向性をまとめる予定。
- 安全な美容医療の普及→ トラブル解決と安全で安心な美容医療の普及が課題。
同研究所では、今後も、美容医療市場は拡大基調を続ける見通しを示している。男性の美容医療需要の拡大や、女性の心理的ハードルの低下も市場成長を後押ししていると見られる。
そうした中で、利用者から見ると、増える美容クリニックの中でどこがより良い施設なのか見極める目を持つことがますます重要になるといえるだろう。HIFU(高密度焦点式超音波治療)によるトラブルや、医療脱毛クリニックの突然の閉院など、美容医療をめぐるトラブルが大きく注目されている。厚生労働省は初の研究所をこの6月から開始し、年内にも方向性をまとめると見られている。美容医療の市場は広がっているが、利用者の見る目が厳しくなるとすれば、医療機関の選別が進む可能性もある。
国内外で美容医療へのニーズは高まっているが、トラブルが発生している状況は世界共通になってきており、そうした課題をどう解決しつつ、効果があり、しかも安全で安心な美容医療を普及させていくことができるかが問われることになる。