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ボトックスビスタ偽造品が日本で初確認、米国で4月に警告、違法美容医療の摘発続く中で新たな問題、厚労省がメーカー文書発信

カレンダー2024.7.7 フォルダー 国内
正規品と偽造品の比較。(出典/厚生労働省、アラガン・エステティックス)

正規品と偽造品の比較。(出典/厚生労働省、アラガン・エステティックス)

 ボツリヌス療法で使われる「ボトックスビスタ」の偽造品が日本国内で初めて確認された。

 2024年7月3日、厚生労働省がメーカーであるアラガン・エステティックスの注意喚起文書を医療関係者向けに配布したことで明らかになった。

 国内外で違法美容医療の摘発が続く中で、違法医薬品にも注意が必要になっている。

米国で確認された偽造品と製造ロット番号が一致

厚労省が配布したメーカーによる注意喚起。(出典/厚生労働省、アラガン・エステティックス)

厚労省が配布したメーカーによる注意喚起。(出典/厚生労働省、アラガン・エステティックス)

  • アラガン・エステティックス→ A型ボツリヌス毒素製剤「ボトックスビスタ注用50単位」(ボトックスビスタ)の偽造品が国内で確認されたと注意喚起。
  • 偽造品の特徴→ 海外で使われている100単位バイアルに入っており、米国で警告された偽造品のロット番号「C3709C3」と一致。
  • 健康被害の報告→ 健康被害などの有害事象の報告はないが、非正規ルートで購入すると偽造品が届く可能性や届かない可能性があり、違法取引や健康被害のリスクがある。
  • 米国での健康被害→ 偽造ボツリヌス注射により、目のかすみ、飲み込みにくさ、便秘や失禁、息切れなどの症状が複数の州で報告。

 注意喚起文書では、アラガン・エステティックスがA型ボツリヌス毒素製剤「ボトックスビスタ注用50単位」(以下、ボトックスビスタ)の偽造品が国内で確認されたことを説明した。

 同社の社内調査によると、偽造品は海外で使われている100単位バイアルに入っており、4月に米国で警告が出された偽造品に印字されて製造ロット番号「C3709C3」と一致していた。

 同社によると、ボトックスビスタは国内唯一の眉間のシワ治療に承認された医薬品。同社が正規のルートを通して販売し、同社が製造から販売、納品までを管理している。

 見つかった状況から、偽造品は非正規のルートで取引されていると予想され、違法な取引が存在していると見られる。

 これまでに健康被害などの有害事象の報告はないというが、同社では非正規ルートから製品を購入しようとした場合、偽造品が届く可能性があったり、そもそも届かない可能性があったりすると指摘。さらに違法取引に関わる恐れや健康被害を引き起こすリスクがあると注意を促している。

 米国では4月に偽造のボツリヌス注射によって健康被害が複数の州から報告された。発生した有害事象は、目のかすみ、飲み込みにくさ、便秘や失禁、息切れなどの症状だった。

 偽造品による健康被害が発生したことを受けて、米国皮膚科学会(AAD)と米国食品医薬品局(FDA)は、偽造ボツリヌス注射が原因で重大な健康問題を引き起こす可能性があると警告した。

世界的な問題としての違法美容医療

偽造ボツリヌスの容器。(写真/米国食品医薬品局=FDA)

偽造ボツリヌスの容器。(写真/米国食品医薬品局=FDA)

  • 米国での特徴的な健康被害→ 被害者が全員、医療機関以外で施術を受けていた点。
  • 各国の違法美容医療→ 英国で不正なフィラー製剤の摘発、タイで違法美容医療施設の摘発、日本でも無資格の施術者による美容注射の摘発が相次ぐ。
  • 医薬品の課題→ 偽造医薬品は国内外で問題となっている。さらに、美容クリニックでの医薬品の詰め替えや薄めての使用などの問題も指摘されている。
  • 注意点→ 美容医療で非外科的治療を受ける際には、使用される医薬品に関心を持つことが重要。

 米国で起きた偽造品による健康被害で特徴的だったのは、被害者が全員、医療機関以外で施術を受けていた点だった。

 米国では医療機関以外で行われる違法な美容医療が他の問題も引き起こしている。例えば、「メディカルスパ」「メドスパ」と呼ばれる医療機関とは異なる業態で行われた美容医療を原因として、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)の感染発生が明らかになっている。メドスパは、医療機関とリラックス目的のスパを組み合わせた新しい施設として宣伝されているが、少なくない施設が違法美容医療を提供している実態もあり、専門家が警鐘を鳴らすようになっている。

 こうした違法美容医療の動きは米国だけにとどまらない。英国でも5月に不正なフィラー製剤が摘発されているほか、タイでも違法な美容医療施設が2月に摘発された。さらに、日本でも違法な美容医療の摘発が相次いでいる。昨年以来、フィリピンやベトナム国籍の施術者が無資格で美容注射を行い、医師法違反で摘発される事件が続いている。

 国内外で違法な美容医療が水面下で広がっている可能性があるが、こうした違法業態では、正規の医薬品を入手することが困難である可能性が高い。これらの施設では、不正なルートから入手された偽造品を使わざるを得ないと推測される。

 このように、偽造医薬品の問題は国内だけでなく、世界的な課題である。またこれとは別に、ヒフコNEWSの取材によると、美容クリニックで医薬品の詰め替えや薄めての使用という問題が起こっているという話もある。美容医療で非外科的治療を受ける際には、使われる医薬品にも関心を持つことが重要となる。

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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