厚生労働省は2024年8月27日、都内で「第2回美容医療の適切な実施に向けた検討会」を開催した。
議論では、美容医療関連のガイドラインのでカバーする課題の範囲を拡大するように求める声が出ていた。
「直美」ではトラブル対応が難しいという意見
- 第2回検討会の概要→日本形成外科学会理事長の貴志和生氏や日本皮膚科学会理事の渡辺大輔氏が、美容医療の現状と課題について意見を述べた。
- 「直美」の問題→「直美(ちょくび)」とは、初期研修を終えた直後から美容医療に進む医師のこと。技術不足や合併症対応ができない問題が指摘された。
- 渡辺氏の意見→トラブル事例増加の原因として、教育や研修を受けていない医師や歯科医師による施術を問題視。専門資格の設置やガイドラインの作成が進められていると説明。
- 青木氏の指摘→安心して受診できる医療機関の認定や、未承認医薬品の評価基準の整備が必要。また、インフルエンサーに対する資格制度の必要性も提案された。
- カウンセリングの問題→無資格者によるカウンセリングが横行し、希望しない施術を強制されるケースがあるため、医師の診察を義務化する意見が出された。
第2回の検討会では、日本形成外科学会理事長の貴志和生氏や日本皮膚科学会理事の渡辺大輔氏が意見を述べ、美容医療の現状と課題が共有された。特に注目されたのは、「直美」の問題だ。これは「なおみ」ではなく「ちょくび」と読む。ヒフコNEWSでも伝えているが、直美は、医学部を卒業した後に2年間の初期研修を終えた直後から、美容医療に進む状況を指す。
貴志氏は、直美の医師が増え、美容医療に技術が乏しい医師が参入していることを問題視した。直美の医師は合併症への対応ができないことを問題にし、医師の合併症対応能力を向上することが急務だと強調した。その上で、貴志氏は、日本形成外科学会が関連する日本美容外科学会(JSAPS)の専門医を、公的な専門医として認めることが重要と求めた。
渡辺氏もトラブル事例が増加していることを指摘し、教育や研修を受けていない医師や歯科医師が美容医療の施術を手掛けていることを問題視した。こうした課題に対して、日本皮膚科学会でも専門資格を設けたりガイドラインの作成に協力していることを説明した。
さらに、検討会の構成員であるグリーンウッドスキンクリニック立川院長の青木律氏も情報提供し、安心して受診できる医療機関を認定する仕組みの必要性を指摘。未承認の医薬品や医療機器が使われる美容医療で、未承認の中にも良いものと悪いものが混在していることを説明し、悪い物は非推奨とする仕組みが求められると指摘。インフルエンサーに対する資格制度も必要ではないかと述べた。
さらに、カウンセリングの問題も注目された。美容医療の現場では、医師による診察が十分に行われず、無資格者によるカウンセリングが横行し、希望していない施術を強制されるケースがあると紹介された。構成員である共立美容外科理事長の久次米秋人氏からは、こうした背景を踏まえて、そもそもカウンセリング制度を廃止して、医師の診察が必ず行われるようにすべきだという意見も出された。
ガイドラインが扱う課題を増やす
- ガイドラインのカバー範囲拡大の提案→日本医師会常任理事の宮川政昭氏などが、美容医療関連のガイドラインでカバーする範囲を拡大する必要性を指摘した。
- 浮き彫りになった課題→医療行為の基準、医師の倫理問題、同意の取り方、医師から看護師への指示など、幅広い課題に対応する必要がある。
- 未公表の重大事故と契約トラブル→重大事故が公にされていない問題や、詐欺的な契約強要が行われている可能性が指摘された。
このような美容医療をめぐる問題が山積している状況を受け、日本医師会常任理事の宮川政昭氏など検討会の構成員からは、美容医療関連のガイドラインでカバーする範囲を拡大する声が出た。
美容医療の領域では、2019年に令和元年版美容医療診療指針が作られ、その後令和3年版が改定されているが、これは美容医療で行われる施術の安全性や有効性についての方針を示したもの。
それに対して、美容医療で問題になっている課題はさらに幅広い。例えば、どんな美容施術がそもそも医療行為であるのか、不適切であるのかという基準、医師の倫理的な問題、施術を受ける際の同意の取り方の問題、医師から看護師への指示の問題など、さまざまな課題が浮き彫りになっている。
そうした多くの課題に幅広く対応できるガイドラインが必要だという意見が出た。
このほか美容医療関連のトラブルが起きたときに、どのような施術が違法または不適切かを判断する課題についても話し合っていた。新宿区保健所主査の宮沢裕昭氏は、美容医療関連の相談を受けたときには施設に立入検査を行っていると説明。この際に、厚生労働省や学会などの方針が示されると、取り締まりが容易になるという意見が出た。
また、美容医療で起きている重大事故が交渉により公にされておらず表面化していない問題、詐欺や恐喝まがいの契約の強要が行われている可能性についても意見が出ていた。
今後、医師や医療機関の質を確保するために、美容医療分野のガイドラインをさらに幅広い問題に適用し、公的に適切な美容医療の基準が示されることが求められているといえるだろう。
ただし、現在の美容医療診療指針は、日本美容外科学会(JSAPS)、日本美容皮膚科学会、日本美容外科学会(JSAS)、日本形成外科学会、日本皮膚科学会など複数の関係者が関わっている。カバー範囲を広げるとすれば、さらに関係者が増えることになり、すぐに実現するのは難しいだろう。これは今後の課題になってくると考えられる。
同検討会は構成員からの情報提供がさらに続く見通しで、年内にも方向性がまとめられる予定となっている。