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美容医療での未承認のボツリヌス製剤、ヒアルロン酸製剤の使用に異変、講習を理由とした並行輸入は不可能に、厚労省が実質的な規制強化へ

カレンダー2024.8.28 フォルダー 国内
ボツリヌス製剤やヒアルロン酸製剤について承認製剤を使うよう促されている。(写真/地方厚生局)

ボツリヌス製剤やヒアルロン酸製剤について承認製剤を使うよう促されている。(写真/地方厚生局)

 日本国内の美容クリニックでは、未承認のボツリヌス製剤が使用されているケースが多いが、承認されているボツリヌス製剤「ボトックスビスタ(一般名A型ボツリヌス毒素製剤)」やヒアルロン酸製剤「ジュビダームビスタ(同ヒアルロン酸注入製剤)」が優先的に使用されるようになる可能性がある。

 厚生労働省は2024年8月13日、未承認のボツリヌス製剤やヒアルロン酸製剤に関連した事務連絡を発信。これまで未承認製剤が輸入されるケースがあったが、輸入のために申告されてきた理由は認められず、今後は未承認製剤ではなく承認製剤を使うように促すよう説明されている。

「講習の受講」を理由に未承認製剤が輸入

厚生労働省に要望書。(写真/Adobe Stock)

厚生労働省に要望書。(写真/Adobe Stock)

  • 未承認製剤の使用→国内の美容クリニックで未承認のボツリヌス製剤やヒアルロン酸製剤が広く使用されている。
  • 輸入の理由→日本国内に承認された製剤があるにもかかわらず、医師が未承認製剤を輸入する理由には、承認製剤を使用するために必要な講習を受講できないという点が挙げられることがある。
  • 厚労省の対応→24年8月13日、厚生労働省は地方厚生局に対し、未承認製剤の輸入申請が講習の受講を理由にされた場合、受講が可能であり、承認薬の使用を促すように求める事務連絡を出した。

 国内の美容クリニックにおいて、未承認のボツリヌス製剤やヒアルロン酸製剤が広く使用されている。

 美容クリニックのウェブサイトを見ると、ボツリヌス製剤については「ボツラックス」や「ニューロノックス」、ヒアルロン酸製剤についても「RHA」「チャウム」「クレヴィエル」などの商品名が一般的に見られる。

 例えば、こうした未承認のボツリヌス製剤は、アッヴィが販売している承認製剤「ボトックスビスタ」と比べて安く、コストパフォーマンスの良さなどがメリットとして強調されていることもある。

 これらの未承認製剤は、医師の責任の下で輸入されているものだが、ボツリヌス製剤とヒアルロン酸製剤は日本国内に承認された製剤ボトックスビスタとジュビダームビスタがあるため、それでもあえて未承認製剤が輸入されるのは理由が必要になる。

 一般的に、未承認の医薬品を輸入するのは、病気の人を救いたいのに国内に承認された医薬品がないといった特別な状況がある場合だ。

 そうした中で未承認のボツリヌス製剤やヒアルロン酸製剤が輸入されていた理由として、承認されたボツリヌス製剤とヒアルロン酸製剤を使用するために、承認条件である講習を受ける必要があるということが引き合いに出されていた。「講習を受講できない」という理由を挙げることで未承認製剤が輸入されている状況があったのだ。

 これに対して、24年5月にアッヴィが厚生労働省に対して、未承認製剤を使うために求められる講習を問題なく受講できることを伝え、対応を依頼していた。

 そこで今回、厚労省は24年8月13日、個人輸入の輸入確認に対応している地方厚生局に事務連絡を出した。この中で、講習の受講を理由として未承認製剤の輸入が申請された場合、承認薬の使用に必要な講習を受講することを伝えることと、次回以降は承認製剤を使うように促すことを求めている。

偽造製剤が問題になる中での実質的な規制強化

ボツリヌス療法の効果は。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

ボツリヌス療法の効果は。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

  • 輸入申請の見通し→講習受講を理由にした未承認製剤の輸入申請は、今後初回は通る可能性があるが、次回以降は承認製剤の使用が求められる。
  • 規制強化の影響→厚労省の事務連絡は、未承認製剤の輸入を実質的に規制強化する内容となっている。
  • 今後の製剤の変化→ボツリヌス療法やヒアルロン酸注入で使用される製剤に、今後変化が見られる可能性がある。

 厚労省の事務連絡を受けて、美容クリニックなどでは、未承認製剤を今後は輸入できなくなるという噂が出て、今後の状況を確認する動きが慌ただしくなっている。未承認製剤を使っているクリニックは少なくないためだ。

 厚労省の事務連絡の内容を踏まえると、講習の受講を理由にした輸入申請をした場合に、最初はその申請は通る可能性があるが、次回以降は承認製剤を使うように促されることになる。この文書をそのまま受け止めれば、現実的には今後は同じ理由で輸入申請を出すことは難しくなると考えられる。

 日本国内に承認製剤がある以上、あえて未承認製剤を輸入しなければならない理由というのは欠品など、よほどの理由が必要になるだろう。国内では安価であることから未承認製剤が使われている状況もあるが、厚労省によれば「承認製剤よりも安いから」は理由にはならないと考えられる。

 未承認製剤が一般的に使われてきた状況から見ると、今回の厚労省の事務連絡は実質的に規制強化になる。

 また、今回の件とは別だが、ヒフコNEWSで伝えているように、ボツリヌス製剤の偽造品が国内外で出回っていることが問題になっている。そうした中で、未承認製剤の輸入を厳しくすることは、結果的に偽造品の輸入を防ぐ効果も出てくると見られる。

 今後、ボツリヌス療法やヒアルロン酸注入で使われる製剤は変化が見られるだろう。

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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