2024年9月30日、佐賀大学は特別記者会見を開き、国立大学初の「コスメティックサイエンス学環」(仮称)の設置構想を正式に発表した。2026年4月に設置予定である。
佐賀県が力を入れる「コスメティック」
- 日本の化粧品輸出額→ 世界第3位(フランス、韓国に次ぐ)
- 佐賀県のコスメティック構想→ 自然環境や農業技術を活かし、化粧品産業の育成を目指す
- 佐賀大学唐津キャンパス→ 化粧品の研究や健康科学の拠点として整備
- コスメティックサイエンス学環→ 新しい化粧品開発や人材育成に向けた研究と教育の拠点
佐賀大学によると、日本の化粧品輸出額はフランス、韓国に続く世界第3位。今後、世界の化粧品市場は、年平均11%成長が予想されており、より有効で安全な化粧品がますます求められることになる。佐賀県ではかねて「コスメティック構想」を掲げ、化粧品産業の育成を目指してきた。佐賀県は、自然環境や農業技術を生かし、原料素材を提供する能力がある。最近では、アジアコスメが注目され、中国や韓国のコスメが人気になっているが、佐賀県はこれらの国が東京と同距離に位置しており、交流しやすい地理的条件にある。実際に、佐賀県には化粧品関連の企業も増えている。
佐賀大学は18年に佐賀県唐津市の唐津キャンパスを化粧品の研究や健康科学の拠点として整備を進めてきた。21年には、化粧品と関連した企業が集まるジャパン・コスメティックセンターとともに共同研究講座も設置している。この延長としてコスメティックサイエンス学環の設置が計画された。大学での研究を進めることで、高い品質や機能を持っていたり、地元の天然素材を生かした化粧品などの新しい化粧品開発を進展させ、人材育成にもつながる。
佐賀大学の「コスメティックサイエンス学環」では、複数の学問領域を融合させた教育プログラムを作っていく計画だ。中心的に協力するのは連携協力学部である理工学部と農学部で、このほか協力学部として医学部、経済学部、教育学部、芸術地域デザイン学部が協力する体制となる。化学や生物学のほか、皮膚科学、マーケティング、コミュニケーション、色彩学・デザイン学に関する分野の教育メニューを幅広い分野にわたり提供する。さらに地域の団体や産業とも協力する。
1学年30人を予定する。具体的なカリキュラムの例として、「コスメティックサイエンス概論」「植物資源学」「コロイド・界面化学」「毒性学」「分子薬理学」「コスメ開発論」などが示された。就職先としては、化粧品産業や食料品や医薬品メーカーなどが考えられる。美容医療に関連した進路もあり得る。
化粧品開発で注目される科学の関与
- 大学の化粧品教育→ 大学全体の連携で進められる教育は、国内外の研究開発の連携トレンドに合致
- 美容医療分野→ ドクターズコスメ市場の拡大に伴い、効果的で安全な製品が求められ、競争が激化
- 佐賀大学の役割→ 研究開発の中心的存在として、新しい製品開発を牽引する可能性
国内外の化粧品は、医療機関との連携を深めている。化粧品は、有効性と安全性を科学的根拠に基づくことが必要とされ、研究開発を医療機関と協力して進める動きがある。そうした中で、化粧品の教育が大学全体の連携を受けて進められるのは、国内外で研究開発の連携が重視されるトレンドにも合致しているように見える。
佐賀県では、久光製薬や東洋新薬などの、医療や健康に関連した有力企業も多数存在している。こうした地元の企業に加えて、ジャパン・コスメティックセンターの会員企業には、日本の主要な化粧品企業の多く含まれている。今後、化粧品関連の人材供給源として佐賀大学が注目されることが考えられる。
美容医療分野でもドクターズコスメの市場が拡大する中で、より効果的で安全性の高い製品が求められている。多くの企業が参入しており、競争も激しくなっている。今後、佐賀大学のような研究開発の中心的な存在が新しい製品開発を牽引する可能性がある。