目元の美しさを追求する美容医療において、アジア人ならではの美的価値を尊重する考え方が広がりを見せている。
第33回日本形成外科学会基礎学術集会の関連講演会「TAAT」で2024年10月、シンガポールのワッフルズ・ウー氏(ワッフルズ・ウー エステティック サージェリー&レーザー センター院長)がアジア人に適した目元形成について講演し、技術の進化やリスク管理の重要性について言及した。
アジア人の目元ならではの美しさ
目元形成は、目頭の蒙古ひだを切開して目の内側を広げる「目頭切開」や、目尻を広げる「目尻切開」、下まぶたの調整を行う「下眼瞼下制術」がある。英語では、目の角度(カント)を調整するという意味から「カントプラスティ」や「エピカントプラスティ」と呼ばれる。
ウー医師によると、こうした目元形成手術は、かつて「欧米風」の目元を目指す施術として広まり、人工的な二重まぶたや高い鼻を作る手術が一部で行われてきた。1940年代から1970年代にかけて、欧米の美容外科医からはアジア人が「欧米風」を求めていると誤解されていた。その結果、アジア人の美的感覚にそぐわない手術が行われ、不自然な仕上がりに悩むケースも少なくなかった。
しかし、最近では、こうした誤解や偏見が見直され、アジア人特有の美しさや自然な目元を尊重する技術が進歩している。現在の目元形成術は、アジア人の特徴や個々の美的ニーズを重視し、単に目を大きくするだけでなく、目の形を自然に保ちながら、その人らしい顔立ちに合った施術を行うようになった。
技術の進化と多様な美的ニーズへの対応
ウー氏は、最近の手術では、アジア人特有の目の構造に合わせた手術が可能になっていると説明した。従来は皮膚を大きく切開する方法が主流であり、傷跡が目立つという課題があった。それに対して、日本の外科医が開発した、皮膚をZの字に切開する「Z形成術」により、蒙古ひだを自然に切開して目立たない傷跡で仕上げる手法が導入された。これにより自然な仕上がりが実現できるようになった。
ウー氏によると、アジア人の目の形状は6つに分類され、目の形状や美的ニーズに応じた個別の施術が行われるようになっている。タイプ1からタイプ6は、主に蒙古ひだの状態によって分かれている。タイプ1は、蒙古ひだが目立たず、目頭が開いている。それに対して、タイプ6は、蒙古ひだが目立ち、目頭が覆われている。
これらの分類に基づいて、その人の美的なニーズや目元の特徴に合わせて施術を行うことが重要となる。
一方で過剰な手術によるトラブルのリスクも指摘されている。中国では、目頭形成が原因で目を閉じにくくなるケースもあり、修正手術が必要になる場合もある。術後の合併症リスクに対するケアや説明の重要性も指摘された。
安全性に配慮しつつ、その人の魅力をどのように引き出すかが、目元形成において求められている。