ボツリヌス療法を実施した後に、額や目尻が白くなる副作用がアジア人で初めて報告された。
中国の研究グループが2025年2月に、美容皮膚科誌で報告した。
額や目尻が白く変化

目尻と額が白く変化した。(出典/J Cosmet Dermatol
. 2025 Feb;24(2):e16794.)
今回の報告によると、従来、A型ボツリヌス毒素を注入した後のまれな副作用として、一時的に顔面が白くなるケースが報告されていた。一方で、欧米人で報告があったものの、アジア人で論文報告されていなかった。
報告されたのは、34歳のアジア人女性の治療後のケースだ。使った製剤はA型ボツリヌス毒素。注射の目的はおでこや目尻のシワ、女性型脱毛症の改善だ。女性は、額のシワ4カ所などに20単位、頭皮の5カ所に15単位の注入、目尻の左右にそれぞれ6単位を受けた。
こうして額や目尻、頭皮に注射した後、数時間以内に額や目尻の皮膚が白く変化する副作用が起きた。
この症状は96時間後まで続いたが、自然回復した。
研究者らは、これまで白人で報告されていた同様の症例と比較しながら、今回の発生メカニズムについても説明している。
そもそも製剤の成分であるボツリヌス毒素は、神経と筋肉のつながり(神経伝達物質のアセチルコリンの作用による)を一時的に止めることでシワを減らしたり、筋肉の形を整えたりする。
副作用としては、肌が赤くなる、筋肉がけいれんする、腫れるといったものが知られるが、今回のように顔が青白くなるケースはまれとされる。
研究チームは、製剤が神経や血管のネットワークに与える影響に注目している。薬剤により、神経伝達物質のアセチルコリンが抑えられることで、血管が収縮し、血液の流れが悪くなる可能性があるというもの。こうした影響により、血行不良が起きて皮膚が白くなることが考えられる。
初回は低用量で、血管の密集を避ける

フィラー注射は副作用を起こすこともある。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)
研究グループは、ボツリヌス療法をする際に、皮膚が白くなるのを防ぐために次の点を挙げている。
- 初回の注射では低用量を使用する
- 明らかに血管が密集している部位を避ける
- 製剤の適切な希釈を行い、局所的な濃度の上昇を防ぐ
顔面が白く変化した場合には、経過を見つつ、72時間以内に再診することが望ましいと説明した。
今回のケースは自然に回復するものだが、注入療法は副作用や合併症、後遺症を引き起こすこともある。予想しない症状が現れた時に、自分で判断するのではなく、クリニックに相談することが重要だろう。
