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オメガ3系脂肪酸が老化を遅らせる可能性、3年で約4カ月の差、ビタミンDや筋トレとの組み合わせでも有効、スイス・チューリッヒ大学の研究が明らかに

カレンダー2025.2.15 フォルダー最新研究
老化を遅らせる。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

老化を遅らせる。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 老化を遅らせる手段として、DHAやEPAというオメガ3系不飽和脂肪酸(以下、オメガ3系脂肪酸)の摂取が注目されている。1日1gのオメガ3系脂肪酸を3年間摂取することで、老化の進行が最大約4カ月遅れる可能性が示された。

 2025年2月、スイス・チューリッヒ大学が主導する研究から明らかになった。

エピジェネティック・クロックで老化を測る

生物学的年齢を測る。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

生物学的年齢を測る。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

  • 生物学的年齢の重要性→ 暦年齢とは異なり、体の老化の進行度を示す指標で、個人差がある。
  • 測定方法「エピジェネティック・クロック」→ DNAメチル化の変化を解析し、生物学的年齢を測定する技術。種類も進化している。
  • 研究内容「DO-HEALTH」→ 欧州5カ国の70歳以上の高齢者を対象に、オメガ3脂肪酸・ビタミンD摂取・筋力トレーニングの影響を調査。
  • 研究手法→ 777人のDNAサンプルを解析し、開始時と3年後のDNAメチル化の変化を測定。「PhenoAge」「GrimAge2」「DunedinPACE」などの手法を使用。

 生物学的な年齢が注目されている。ヒフコNEWSでも何度も取り上げているが、1年で1歳年を取る「暦年齢」とは異なり、生物学的年齢は身体そのものの年齢で、老化がどれくらい進むかにつながるものだ。人によって老化が早く進む人もいれば、そうではない人もいる。この違いは生物学的年齢が若く保たれるかどうかで現れてくる。

 生物学的年齢は、「エピジェネティック・クロック」と呼ばれる方法で測ることができる。細胞の特徴を定める要素として、「DNAメチル化」と呼ばれる現象がある。このDNAメチル化は老化が進むとパターンに変化があり、その変化に基づいて生物学的年齢を測れると考えられている。

 エピジェネティック・クロックには、いくつかの種類があり、徐々に進化している。

 今回、研究グループでは、国際研究「DO-HEALTH」の中で、エピジェネティック・クロックを用いて、栄養、運動、ビタミン摂取が老化とどのように関連するのかを確かめている。

 具体的には、魚の油に豊富に含まれることで知られているDHAやEPAというオメガ3系脂肪酸の摂取がどのように影響するかが注目された。さらに、筋肉トレーニングと、ビタミンDの摂取の影響も調べられた。それぞれ老化に関連すると考えられているものだ。

 本研究では、70歳以上の健康な高齢者を対象に、欧州の5カ国でランダムに分けられたグループごとに、摂取する栄養、運動の組み合わせを変えて検証が行われた。オメガ3系脂肪酸(1日1g)、ビタミンD(1日2000IU)、筋力トレーニング(週3回、各30分)のそれぞれあるなしの組み合わせを設定した。

※今回の結果は、スイス在住の1006人のうち、DNAサンプルを提供した777人のデータを用いて、研究開始時と3年後の2つの時点でDNAメチル化を解析したもの。エピジェネティック・クロックには複数の種類があり、「PhenoAge」「GrimAge2」「DunedinPACE」といった「第2世代」および「第3世代」のエピジェネティック・クロックが用いられた。そのほかの検査も実施された。

「ロンジェビティ(longevity)」は美容医療でも注目

魚の油に豊富に含まれるオメガ3系脂肪酸。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

魚の油に豊富に含まれるオメガ3系脂肪酸。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

  • オメガ3系脂肪酸の効果→ 生物学的年齢の進行を遅らせ、3年間で約2.9〜3.8カ月の老化抑制が確認された。
  • ビタミンDと筋トレの相乗効果→ これらを組み合わせることで、老化をさらに遅らせる追加の効果が示された。
  • 老化抑制のメカニズム→ オメガ3系脂肪酸が炎症や代謝異常を減少させ、老化を遅らせる可能性がある。
  • 美容医療への応用→ 健康寿命を延ばす「ロンジェビティ(longevity)」の観点からも、美容医療に活用が期待される。

 研究の結果、オメガ3系脂肪酸を単独で摂取したグループで、エピジェネティック・クロックに基づく生物学的年齢の進行を遅らせる効果が確認された。具体的に、3年間で約2.9〜3.8カ月分の老化の遅れが現れると分かった。

 さらに、ビタミンDと筋力トレーニングを組み合わせた場合に、老化を遅らせる追加の効果が認められた。複数の介入を組み合わせることで相乗効果が得られる可能性が示唆された。

※同じDO-HEALTH研究で報告されている「がんリスクの低下」や「早期のフレイル予防」の知見とも一致した。フレイルとは、体が弱くなること。

 オメガ3系脂肪酸の摂取により、体の老化につながると考えられている炎症や代謝異常が減少することが示された。

 オメガ3系脂肪酸は魚の油に含まれることが知られているが、サプリメントとしても利用できる栄養素として一般的だ。これらに加えて筋トレやビタミンDも老化を遅らせるということで、注目される結果となる。

 美容医療の分野では、老化予防が大きなテーマになっている。健康に寿命を延ばす「ロンジェビティ(longevity)」はキーワードの一つとなっている。最新の研究が美容医療の分野にも活用されていく。

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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