
ニキビと肌の菌に関連。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
顔に存在しているアクネ菌(Cutibacterium acnes、キューティバクテリウム・アクネス)が10代で肌に定着し、その後は変化することがないなど、肌の健康を保つ上で新しい発見が報告された。
米国マサチューセッツ工科大学の研究グループは、2025年5月に、肌の表面に存在する細菌の状態を詳しく調べた研究結果を発表した。
10~14歳の間にニキビ菌が爆発的に増殖

悩ましいニキビ。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 思春期にアクネ菌が増加→ 11〜14歳頃に皮脂の分泌が増えることでアクネ菌が爆発的に増殖。この時期に肌環境が大きく変化する。
- アクネ菌の菌株構成→ 思春期を過ぎると、アクネ菌の菌株構成はほとんど変化せず、安定することが確認された。
- 表皮ブドウ球菌は変動しやすい→ 2年以内で入れ替わり、安定して定着しにくい傾向がある。
研究グループが注目したのは、顔に存在する代表的な細菌であるアクネ菌と表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)。これらの菌は、ニキビの発生しやすさを含む肌の状態に影響を与えると考えられている。
今回、研究グループは、親子57人を対象に、年齢とともに肌表面の細菌がどのように変化、定着するか、また親子間で細菌にどのような関連があるかを分析した。
こうして明らかになったのは、思春期初期にあたる11〜14歳頃に、アクネ菌(同一種内の異なる菌株)が爆発的に増殖すること。この時期は皮脂の分泌が急増するため、アクネ菌が棲息しやすい環境が整うと推測された。ただし、思春期を過ぎると、肌に存在する菌株の構成はほとんど変化しないことも確認された。
一方、表皮ブドウ球菌は思春期に限らず変化し、菌株は同じ人の肌に2年未満しかとどまらない。また、たとえ親子が同居していても、菌株の共有はほとんど見られなかった。
「プロバイオティクス」に可能性

肌トラブルを防ぐ方法。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 思春期初期にプロバイオティクスが有効→ 肌環境が変化する思春期初期に、善玉菌を活用するケアを始めることが効果的と考えられる。
- 肌のプロバイオティクス→ 腸内環境と同様に、肌の菌バランスを整えることで美容や健康の維持に寄与する可能性がある。
- 個別スキンケア開発に期待→ 肌の菌環境と肌トラブルの関係を調べることで、個人に最適なケアや治療法の開発につながる可能性がある。
研究チームによれば、今回の結果から、ニキビ予防を目的として肌の微生物環境を整える「プロバイオティクス」を始めるには、思春期の初期が最も効果的である可能性が示された。
プロバイオティクスとは、身体にとって良い菌を取り入れることで、健康を保つこと。一般的には、ヨーグルトなどの発酵食品の摂取によって腸内環境を整える「腸活」が知られる。一方で、今回の研究は、肌に有益な菌を活用する「肌のプロバイオティクス」の大切さが示されているといえる。
また、表皮ブドウ球菌が頻繁に入れ替わる点からは、皮膚の性質や免疫反応、使用する化粧品など、さまざまな要因が関係していると考えられている。
菌の状態と肌トラブルとの関連性をさらに調査することで、その人に適したスキンケアや治療の開発につながる可能性がある。
