肌の若さを保つ秘密が、毛の根元に存在している可能性が示された。
ポーラ化成工業と理化学研究所の研究グループが、2025年5月に真皮再生に関わる新たな仕組みを報告した。
毛の根元で活発な「真皮再生」

毛の根元の細胞から出るプレイオトロフィンが真皮の再生を促す。(出典/ポーラ化成工業)
人の皮膚は年を重ねるにつれて再生能力が低下し、真皮のコラーゲン線維の量と質がともに減少する。一方で、年齢を重ねても、毛の根元では真皮の再生が継続していることが観察されている。
今回、研究グループは、この対照的な現象に着目し、その仕組みを検証した。
その結果、毛の根元にある細胞から、組織の再生に関与することが知られている「プレイオトロフィン」という物質が活発に分泌されていることを明らかにした。
このプレイオトロフィンの作用によって、真皮の再生が促進されることを確認した。
具体的に観察された変化は以下の通りだ。
- 線維芽細胞による、コラーゲンなど細胞外マトリックスの再構築が促進される。
- 血管内皮細胞に作用し、血管新生が促進される。
- 異物を除去する役割を持つマクロファージを活性化させ、組織環境の改善を促す。
さらに研究グループは、プレイオトロフィンの機能を高める成分も確認。この成分の活用によって真皮再生の促進が期待された。
毛の根元は肌の状態にとって重要か

肌のハリを保つには。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
今回の研究報告で確認されたのはここまでだが、毛と肌の意外な関係を示す内容といえる。
毛の根元では年を問わず真皮の再生が活発であるとすれば、毛の存在は肌の若さを保つ上で重要な役割を果たしている可能性がある。
これは美容医療にとっても見逃せない。毛を完全に除去することが重要視されがちだが、肌の再生という観点からは、毛を一定程度残した方が望ましい可能性も考えられる。これは脱毛処置をどの程度まで徹底するかという判断に影響を与える可能性がある。毛の根元の細胞が肌の再生を担うのであれば、毛をある程度残すことで、真皮の修復が促進され、肌のハリを維持しやすくなることもあり得る。
今後、毛と肌の関係に関する研究は、さらに注目を集める可能性がある。
