
遺伝的な変化が先天異常の原因になる場合がある。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
口唇口蓋裂は、生まれつき見られる先天異常の一種。これは外見や機能の問題となり、形成外科および美容外科的な治療が求められる。
2025年5月、東京科学大学と英国オックスフォード大学の研究グループが、この病気に関わる原因の一端を発表した。人のDNAは約30億文字で書かれているが、塩基の1つの違いが原因の一つである可能性を見出した。
生まれつき上くちびるに裂け目
遺伝的な変化が口唇口蓋裂の原因の一つに。(出典/東京科学大学)

遺伝的な変化が口唇口蓋裂の原因の一つに。(出典/東京科学大学)
口唇口蓋裂は、上くちびる(口唇)や上あごの天井(口蓋)の一部がくっつき切らずに裂け目が残る先天異常の一種。
赤ちゃんが母親のおなかにいる時、顔のパーツは左右から中央に寄り、中央で合体するように作られている。この合体が、途中で止まった場合に、すき間が残り、口唇口蓋裂となる。
口唇口蓋裂は、大きく2つのタイプが存在している。一つは、心臓の奇形などの複数の先天異常が同時に存在するタイプ、もう一つは、他の症状がないタイプ。このうち他の症状を伴わないタイプが多くを占めている。この他の症状がないタイプは、「非症候性」と呼ばれるが、メカニズムの全容は明らかになっていない。
今回、東京科学大学とオックスフォード大学の共同研究チームは、人の体の設計図となるDNAの約30億文字の中で、タンパク質をコードしている領域と、残りの非コード領域のうち、非コード領域に注目して口唇口蓋裂の原因と探った。非コード領域は、タンパク質の設計図そのものではなく、いつ、どこで設計図を使うかを指示する「指令書」の部分となる。ここが非症候性口唇口蓋裂と関連することが分かってきたためだ。
※DNAはアデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)の4種類の塩基がつながった約30億塩基の鎖で構成されている。塩基配列は大部分が共通しているものの、一部に個人差があり、1カ所だけの差が大きな体質や病気のかかりやすさ、先天異常などの差になることがある。例えば、お酒を飲めるかどうかは、ある1カ所の塩基の違いで差が生まれる。今回の研究は、この遺伝子の塩基の差を調べたもの。この一つの塩基の差のことを「一塩基多型」と呼び、SNPと略される。今回の研究もSNPについて調べた。
わずか1カ所の変化が影響

DNAの変化を分析。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
こうした研究の結果から、研究グループは、非コード領域の中の「ケラチン18」という遺伝子の近くにある「rs3741442」という1カ所の塩基が非症候性口唇口蓋裂と関連することを発見した。
非症候性口唇口蓋裂のリスクのないグループでは、「C(シトシン)」という塩基であるのに対して、リスクのあるグループでは「T(チミン)」という塩基に変化していることを突き止めた。このC→Tの変化によって、皮膚や口の軟膜の細胞の分化に変化が生じ、口唇口蓋裂の発症につながる可能性が示された。
なお、この変化は皮膚のバリアにも影響し、アトピー性皮膚炎とも関連する可能性が確認されていた。
現在、口唇口蓋裂の場合、形成外科や美容外科的な手術のほか、歯科治療により修正することになる。口唇口蓋裂の原因、メカニズムが理解されることは、今後、予防や治療につながる可能性があり、これらを支える追い風になり得る。
