
ボツリヌス製剤の効果。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
ボツリヌス製剤の種類によって効果に違いがあることが明らかになった。
眉間の表情ジワの改善に用いられる4種類のボツリヌストキシンA製剤を比べた研究を通して、その違いが示された。
米国ペンシルベニア大学形成外科チームが2025年5月に研究結果を発表した。
即効性と持続性で特徴

ボツリヌス療法の効果は。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)
国際美容外科学会(ISAPS)によれば、ボツリヌス療法は、注入系の施術では世界で最も実施件数が多い非外科的治療。
日本国内で美容目的に承認されているボツリヌス製剤は眉間のシワ改善に用いるボトックスビスタ1種類に限られる。しかし、A型ボツリヌス毒素を用いた他の製剤も存在し、自由診療においては未承認製剤が使用されることもある。
今回、研究グループは、眉間のシワに対するA型ボツリヌス毒素4種類の効果を比較した「二重盲検ランダム化比較試験(RCT)」を実施し、その結果を2025年5月28日付の『JAMA Dermatology』誌に発表した。米国医師会が発行する査読付きの皮膚科専門誌だ。
※ランダム化比較試験は、ランダムにグループ分けして、それぞれに異なる治療や検査などを実施し、公平に効果の違いを比較する研究方法。二重盲検は、治療や検査などを実施する施術者、それらを受ける被験者の双方が、治療内容(検査内容など)を知らない状態で試験を行うもので、評価の偏りを減らすことができる。
試験では、平均43.5歳(30~65歳)の女性143人を対象に、「ボトックス(オナボツリナムトキシンA)」、「ディスポート(アボボツリナムトキシンA)」、「ジュヴォー(プラボツリナムトキシンA)」、「ゼオマイン(インコボツリヌムトキシンA)」の4製剤を眉間に注入。その上で、3日目、30日目、90日目、180日目にわたって効果を評価した。
ピークの効果は差がない

ボツリヌス製剤やヒアルロン酸製剤について承認製剤を使うよう促されている。(写真/地方厚生局)
こうした試験の結果、製剤ごとの違いが確認された。
論文によると、ピークの効果は製剤によらず差がなかった。一方で、「ディスポート」と「ジュヴォー」は注射後3日目に効果の発現が最も早く確認されたほか、「ジュヴォー」と「ゼオマイン」は180日後においても有効性が保たれる傾向が見られた。特に「ジュヴォー」は180日後の効果において「ボトックス」を統計学的に有意に上回った。
※統計学的に有意とは、偶然では説明しにくい差がデータにあると判断される状態。
すべての製剤で90日目まで満足度の向上が確認され、治療前のシワが深いほど、治療後の改善度が大きい傾向が見られた。一方で、眉間のシワが改善すると、目尻のシワが目立つという課題も確認された。
こうした科学的な根拠に基づくデータが示されることで、より確かな施術が可能になることが期待される。試験を通じて安全性や有効性を検証し、科学的根拠を積み重ねることが、美容医療の質の向上につながる。
また、日本国内では、厚生労働省が、承認されている製剤の使用を促す事務連絡を出している。こうした背景もあり、日本で製剤の選択を行おうとすれば、製剤の承認取得が進められる必要があると考えられる。
