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眉間のシワ改善、どのボツリヌス製剤が早く長く効く?製剤により意外な効果の差、米国ペンシルベニア大学の研究グループが研究報告

カレンダー2025.6.9 フォルダー最新研究
ボツリヌス製剤の効果。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

ボツリヌス製剤の効果。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 ボツリヌス製剤の種類によって効果に違いがあることが明らかになった。

 眉間の表情ジワの改善に用いられる4種類のボツリヌストキシンA製剤を比べた研究を通して、その違いが示された。

 米国ペンシルベニア大学形成外科チームが2025年5月に研究結果を発表した。

即効性と持続性で特徴

ボツリヌス療法の効果は。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

ボツリヌス療法の効果は。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 国際美容外科学会(ISAPS)によれば、ボツリヌス療法は、注入系の施術では世界で最も実施件数が多い非外科的治療。

 日本国内で美容目的に承認されているボツリヌス製剤は眉間のシワ改善に用いるボトックスビスタ1種類に限られる。しかし、A型ボツリヌス毒素を用いた他の製剤も存在し、自由診療においては未承認製剤が使用されることもある。

 今回、研究グループは、眉間のシワに対するA型ボツリヌス毒素4種類の効果を比較した「二重盲検ランダム化比較試験(RCT)」を実施し、その結果を2025年5月28日付の『JAMA Dermatology』誌に発表した。米国医師会が発行する査読付きの皮膚科専門誌だ。

※ランダム化比較試験は、ランダムにグループ分けして、それぞれに異なる治療や検査などを実施し、公平に効果の違いを比較する研究方法。二重盲検は、治療や検査などを実施する施術者、それらを受ける被験者の双方が、治療内容(検査内容など)を知らない状態で試験を行うもので、評価の偏りを減らすことができる。

 試験では、平均43.5歳(30~65歳)の女性143人を対象に、「ボトックス(オナボツリナムトキシンA)」、「ディスポート(アボボツリナムトキシンA)」、「ジュヴォー(プラボツリナムトキシンA)」、「ゼオマイン(インコボツリヌムトキシンA)」の4製剤を眉間に注入。その上で、3日目、30日目、90日目、180日目にわたって効果を評価した。

ピークの効果は差がない

ボツリヌス製剤やヒアルロン酸製剤について承認製剤を使うよう促されている。(写真/地方厚生局)

ボツリヌス製剤やヒアルロン酸製剤について承認製剤を使うよう促されている。(写真/地方厚生局)

 こうした試験の結果、製剤ごとの違いが確認された。

 論文によると、ピークの効果は製剤によらず差がなかった。一方で、「ディスポート」と「ジュヴォー」は注射後3日目に効果の発現が最も早く確認されたほか、「ジュヴォー」と「ゼオマイン」は180日後においても有効性が保たれる傾向が見られた。特に「ジュヴォー」は180日後の効果において「ボトックス」を統計学的に有意に上回った。

※統計学的に有意とは、偶然では説明しにくい差がデータにあると判断される状態。

 すべての製剤で90日目まで満足度の向上が確認され、治療前のシワが深いほど、治療後の改善度が大きい傾向が見られた。一方で、眉間のシワが改善すると、目尻のシワが目立つという課題も確認された。

 こうした科学的な根拠に基づくデータが示されることで、より確かな施術が可能になることが期待される。試験を通じて安全性や有効性を検証し、科学的根拠を積み重ねることが、美容医療の質の向上につながる。

 また、日本国内では、厚生労働省が、承認されている製剤の使用を促す事務連絡を出している。こうした背景もあり、日本で製剤の選択を行おうとすれば、製剤の承認取得が進められる必要があると考えられる。

参考文献

Lemdani MS, Honig SE, Habarth-Morales TE, Davis HD, Niu EF, Ewing JN, Broach RB, Serletti JM, Percec I. Comparison of Botulinum Toxin A Formulations for Glabellar Strain Treatment in Women: A Double-Blind Randomized Clinical Trial. JAMA Dermatol. 2025 May 28:e251335. doi: 10.1001/jamadermatol.2025.1335. Epub ahead of print. PMID: 40434770; PMCID: PMC12120680.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40434770/

2023年の世界美容医療件数が3490万件に達し3.4%増、日本は美容外科医3050人と推定、国際美容外科学会(ISAPS)が発表
https://biyouhifuko.com/news/world/7862/

美容医療での未承認のボツリヌス製剤、ヒアルロン酸製剤の使用に異変、講習を理由とした並行輸入は不可能に、厚労省が実質的な規制強化へ
https://biyouhifuko.com/news/japan/8874/

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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