
腸の健康は美容にもつながる。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
「腸活」という言葉は広く知られるようになった。腸活は、腸内に存在する腸内細菌の状態を健全に保つことで、全身の健康にもつながるという考え方だ。
こうした中で、腸活につながる新しいプレバイオティクスの候補物質が日本から報告された。
理化学研究所とダイセルなどの共同研究グループが2025年7月に報告した。論文としては、5月に国際誌「Cell Metabolism」で発表された。
「酢酸」を増やし糖の吸収を防ぐ

水溶性酢酸セルロールを使った実験では、体重増加を抑える効果などが確認された。(出典/ダイセル)
- 新たなプレバイオティクス素材→
「水溶性酢酸セルロース(WSCA)」が新たなプレバイオティクス候補として注目されている。- WSCAの効果→
マウス実験で、体重増加の抑制、脂肪肝・高血糖の改善効果が確認された。- 酢酸の放出と腸内細菌の関係→
WSCAは腸内で短鎖脂肪酸の一種である酢酸を効率的に放出し、バクテロイデス属の腸内細菌に作用して糖質代謝を変える。
腸内環境を健全に保つためには、健康につながる、いわゆる「善玉菌」を摂取する方法と、腸内細菌に利用される有用な食品を摂取するという方法がある。前者は、プロバイオティクスと呼ばれ、後者は、プレバイオティクスと呼ばれる。
今回、日本の研究グループが報告したのは、新しいプレバイオティクスの候補となる素材。これは「水溶性酢酸セルロース(WSCA)」というもので、これが腸内細菌に利用されることで糖質の吸収を抑え、結果として体重増加を抑える効果があると判明した。水溶性酢酸セルロースは食物繊維の一種で、人工的に酢酸が付加されたものとなる。
研究では、マウスに水溶性酢酸セルロースを与えることで体重の増加が抑えられ、脂肪肝や高血糖などの改善にもつながることが確認された。
特に注目されたのは、通常の食物繊維とは異なり、水溶性酢酸セルロースの場合には腸内で「短鎖脂肪酸」の一種である酢酸を効率的に放出することだ。酢酸が腸内細菌の一つ、バクテロイデス属に働きかけて、糖質の代謝が変えられた。具体的には腸内細菌がより多くの糖を消費するので、吸収を減らす効果につながると考えられている。
短鎖脂肪酸とは、酢酸やプロピオン酸、酪酸などの総称で、腸内で吸収され、全身の代謝改善に関与すると注目されている。酢酸は、身近な酢であり、これが健康につながることになる。
今回確認された効果は腸内細菌が存在したときに初めて現れることも確認された。
美容を支える「プレバイオティクス」に?

腸内環境を整える効果。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 水溶性酢酸セルロースの用途→
もともとは医薬品のコーティングやつなぎとして使用されている素材。- 健康効果への注目→
肥満予防に加え、肝臓機能や血糖値の改善など多方面への健康効果が期待されている。
水溶性酢酸セルロースは、耳馴染みのないものだが、一般的には薬のコーティングやつなぎなどの目的で使われている。
それを応用することで、肥満の予防だけでなく、肝臓や血糖値などの健康にもつながる効果がある点が注目される。
今後、健康や美容を目的としたサプリとして注目される可能性もある。
