
安全なレーザー治療のために。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
目元のシワやたるみに対するレーザー治療が広がるなか、眼の損傷や視力低下といった合併症の報告もある。
このような現状を受け、米国フロリダ州の皮膚科医および眼科医による専門家チームが、眼の安全性を確保するための具体的な指針を取りまとめた。
指針は、2025年7月に発表された最新の合意声明で、安全性向上のための実践的提言を整理している。
見過ごされがちな「眼の合併症」に備える

目に挿入されるアイシールド。(出典/Kesty K. et al. , Expert Consensus on Ocular Safety During Laser Procedures: A Practical Guide to Eye Safety by a Panel of Dermatologist Laser Surgeons and Ophthalmologists. J Cosmet Dermatol. First published: 10 July 2025)
- 目元へのレーザー治療は注意が必要→目の周囲へのレーザー治療では、角膜熱傷や視力障害など重大な合併症が報告され、安全のための対策が求められる。
- 治療前・中・後の対策が重要→米国の専門医らがガイドラインを策定し、検査、準備、施術中の観察など安全対策を具体的に提示している。
- アイシールドの正しい使用→ステンレス製の保護具「アイシールド」を使用し、適切なサイズ選びや潤滑剤の使用、施術中のズレ確認などが視力保護の重要ポイントとされている。
シワやたるみの改善を目的としたレーザー治療は、美容医療の分野において目元への応用が急速に広まりつつある。
されど、眼の周囲は極めて繊細な構造を持ち、施術においては高度な専門性と細心の注意が求められる領域である。
実際に、角膜熱傷、感染症、ドライアイ、白内障、さらには一時的または永続的な視力障害といった重篤な合併症が、国内外で報告されている。
これらのリスクを最小限に抑えるためには、レーザー機器の熟練操作のみならず、眼の解剖学的知識、個々人に応じたリスク評価、そして適切な眼球保護具の使用といった多角的な対策が不可欠である。
今回のガイドラインは、米国フロリダ州を中心とする皮膚科と眼科の専門医、あわせて5人の医師によってまとめられた。
内容は、レーザー治療で目を守るための実践的な方法を、治療の前、治療の最中、治療の後、という3つの場面に分けて説明している。
どのような検査を行うか、どんな準備が必要か、施術を受ける人への説明や使う道具についても、具体的に書かれている。
大事な対策の一つとして挙げられているのが、「アイシールド」と呼ばれる金属の目のカバー。これは厚さ1ミリのステンレス製で、角膜や網膜をレーザーの光から守るために使う。目に合ったサイズを選び、専用の潤滑剤をつけてやさしく入れることで、目に傷をつけないようにする。
アイシールドを入れる前には、目薬タイプの麻酔で痛みを押さえ、シールドや目の表面に潤滑ジェルをしっかり塗ることが勧められている。
また、治療中にはシールドがずれたりしていないかを見守り、もし痛みや見え方の異常が出たときには、すぐに治療をやめて状態をもう一度確かめることが大切とされている。
「守るべき場面」をひとつずつ丁寧に

目元のレーザー治療では対策が求められる。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 施術中は温度管理と頭部の固定→ヤケドや視力障害のリスクを防ぐため、頭部を安定させ、レーザーの強さや回数、皮膚温度を慎重に管理。
- 施術後の早期診察と点眼ケアが必須→治療後は人工涙液や目薬によるケアと、1日目の診察による異常の早期発見が重症化防止に効果的とされる。
- 安全確保のために連携→皮膚科と眼科の連携により、施術前の診察からアフターケアまで一貫した「安全第一」の体制が求められる。
ガイドラインによれば、レーザー治療中には頭の位置が動かぬよう支えること、そして照射する回数や強さを細かく調整することが大切とされる。
このほか熱によってまぶたや皮膚に負担がかかると、ヤケドや目の中の合併症につながる恐れがある。これを防ぐためには、施術中の温度に気を配り、肌の温度を手で確かめたり、冷却する装置を使ったりといった工夫が有効だと説明している。
治療が終わった後は、滅菌された人工の涙液や目の薬を使ったケアが勧められる。特に、最初の1日目の診察が重要であり、小さな変化やトラブルを早く見つけることができる。
もし痛みや視界の異常が出たときは、すぐに治療をやめ、状態を確認できる体制を整えておく必要がある。感染や乾燥といった問題に早く対応するためにも、治療の当日から始める定期的なフォローや、点眼薬などでセルフケアできるよう指導することが欠かせない。
このような一連の流れを丁寧に行うことで、視力の低下や感染症といった重いトラブルを未然に防ぐことができる。ガイドラインに記された内容は、すべて現場ですぐに使える「具体的で実行可能な方法」として示されており、安全性を高める力を持っている。
目元のレーザー治療は、見た目の若返りや表情の印象を変える効果がある一方で、細心の注意が求められる施術でもある。
角膜の傷や視力の低下といった思わぬ合併症を防ぐには、施術の前の診察や聞き取り、目を守る器具の正しい使い方、そして施術後のフォローまで、すべての流れにおいて「安全第一」の姿勢が必要である。
今回の指針は、皮膚科と眼科、それぞれの専門家が協力することで、安全と効果の両方を高められることを明らかにした。
こうした海外の取り組みが広がっていけば、日本の美容医療においても「目の安全に配慮した施術」が当たり前となり、より安心して受けられる環境が整っていくことが期待される。
