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美容医療「やりすぎ」で起こるオーバーフィルド症候群に新治療、ヒアルロニダーゼ+コラゲナーゼ+リパーゼの酵素療法で改善、南米の研究チームが美容皮膚科専門誌に報告

カレンダー2025.8.12 フォルダー最新研究

ポイント

  • 南米の研究チームが、顔面オーバーフィルド症候群(FOS)の対策を報告。
  • 過剰な注入治療で顔の自然な輪郭が失われる美容医療に伴う合併症の一つ。
  • ヒアルロニダーゼ、コラゲナーゼ、リパーゼを組み合わせた新たな酵素療法により改善が確認。
ヒアルロン酸注入を受けた後の顔面オーバーフィルド症候群。(出典/J Cosmet Dermatol. 2025 Aug;24(8):e70377.)

ヒアルロン酸注入を受けた後の顔面オーバーフィルド症候群。(出典/J Cosmet Dermatol. 2025 Aug;24(8):e70377.)

 美容医療で行われる注入治療は、若返りや輪郭づくりを目的に広がっているが、やりすぎると顔のボリュームや表情の自然さが失われる「顔面オーバーフィルド症候群(FOS)」になることがある。

 中顔面の過度なふくらみや表情の不自然さは、見た目だけでなく気持ちにも影響を与える。

 この合併症はヒアルロン酸(HA)だけでなく、脂肪やシリコンなどさまざまな充填材で起こりうるが、治療は難しいとされてきた。

 中南米の研究チームは、ヒアルロニダーゼ、コラゲナーゼ、リパーゼを組み合わせた新しい酵素を利用した対策を実施し、顔面オーバーフィルド症候群の改善が見られたことを報告している。

酵素3種の組み合わせで改善

ヒアルロン酸注入を受けたほか、シリコンも注入した後の顔面オーバーフィルド症候群。(出典/J Cosmet Dermatol. 2025 Aug;24(8):e70377.)

ヒアルロン酸注入を受けたほか、シリコンも注入した後の顔面オーバーフィルド症候群。(出典/J Cosmet Dermatol. 2025 Aug;24(8):e70377.)

  • 従来の対応→マッサージ・吸引・外科的処置が行われるも、十分に効果が出ないことが多く治療は困難とされていた。
  • 新治療法→ヒアルロニダーゼ(ヒアルロン酸分解)+コラゲナーゼ(コラーゲン分解)+リパーゼ(脂肪分解)の併用でボリューム改善を狙う。
  • 結果→全員で輪郭回復、心理的負担軽減、自己評価向上を確認。重大な合併症はなし。

 論文によると、顔の自然な輪郭を損なう顔面オーバーフィルド症候群(FOS)は、ヒアルロン酸だけでなく脂肪やシリコンなど、さまざまな注入製剤により起こる。

 特に中顔面は構造が複雑で、過剰な充填は筋肉や脂肪の動きに影響し、表情の不自然さや心理的負担につながる。

 従来はマッサージ、吸引、外科的処置などが行われてきたが、十分に対応できないことも多い。治療は難しいとされた。

 今回の研究では、ヒアルロン酸を分解するヒアルロニダーゼに加え、コラーゲン線維を分解するコラゲナーゼ、脂肪を分解するリパーゼを組み合わせ、ボリューム改善を目指した。

 対象となったのは27~55歳の女性5人。ヒアルロン酸単独例が3例、脂肪移植が1例、ヒアルロン酸+シリコン併用が1例。いずれも顔の過剰なふくらみや不自然な輪郭が問題だった。

 治療では、1.5mLのコラゲナーゼ、1.5mLのヒアルロニダーゼ、1.5mLのリパーゼを混ぜた計4.5mLを、カニューレ針で1カ所から角度を変えながら、引き抜きつつ均一に注入した。

 ヒアルロン酸単独例は1回、脂肪例、シリコン例、ヒアルロン酸+シリコン例は2回行った。

 結果、全員で輪郭の回復と心理的負担の軽減や自己評価の改善が確認された。重大な合併症は報告されなかった。

SNSなどの影響で増えた注入しすぎ

脂肪注入(上)、シリコン注入(下)を受けた顔面オーバーフィルド症候群。(出典/J Cosmet Dermatol. 2025 Aug;24(8):e70377.)

脂肪注入(上)、シリコン注入(下)を受けた顔面オーバーフィルド症候群。(出典/J Cosmet Dermatol. 2025 Aug;24(8):e70377.)

  • FOSの位置づけ→2016年に提唱された新しい概念で、診断基準はなく医師の経験や観察に依存している。
  • 発症背景→SNSや加工アプリの流行により、美的感覚が変化し、頬強調や顎先突出などの加工トレンドが影響。
  • 今後の課題→投与量や施術方法の標準化研究が必要で、応用拡大に期待。

 研究チームは、顔面オーバーフィルド症候群は2016年に提唱された比較的新しい概念で、診断に明確な基準はなく、医師の経験や観察に頼らざるを得ないのが現状だと説明している。

 この合併症の背景には、SNSや加工アプリの影響による美的感覚の変化や、フィルターによる頬の強調や顎先の突出などの加工トレンドがあるとされる。

 従来の治療はヒアルロニダーゼ単独、マッサージ、吸引、外科的処置が中心で、ヒアルロン酸以外の充填材、特に脂肪やシリコンが原因のケースには対策に限界があった。今回の報告は、こうした難しい症例にも対応できる可能性を示した点で意義が大きいとされる。

 著者らは「投与量や施術方法の標準化に向けた研究が必要」としており、今後の美容医療での応用拡大が期待される。

参考文献

Castelanich D, Parra LA, Amado AM, Acevedo A, Velasquez L, Dicker V, Parra AM. Enzymatic Management of Facial Overfilled Syndrome: A Case Series and Narrative Review. J Cosmet Dermatol. 2025 Aug;24(8):e70377. doi: 10.1111/jocd.70377. PMID: 40781937; PMCID: PMC12334978.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40781937/

「オーバーフィルド(入れ過ぎ)症候群」韓国でも問題、バランス崩し不自然な見た目に、ヒアルロン酸でもボツリヌス療法でも、第33回日本形成外科学会基礎学術集会TAATで講演
https://biyouhifuko.com/news/japan/9735/

オーバーフィルド症候群(入れすぎ症候群)の最新治療、超音波を活用したヒアルロニダーゼ注射とは?欧州の研究グループが報告
https://biyouhifuko.com/news/research/6079/

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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