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肝斑治療にボツリヌス療法を応用、24週で改善、満足度も向上、3成分クリーム併用で改善と再発予防の可能性、タイの研究チームが美容皮膚科誌で報告

カレンダー2025.8.13 フォルダー最新研究

ポイント

  • タイの研究チームが肝斑の治療にボツリヌス療法を応用した。
  • ボツリヌストキシンAと3つの成分を配合したクリームを組み合わせて治療。
  • 改善効果や満足度が高く、再発を防ぐ可能性も示された。
手強い肝斑。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

手強い肝斑。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 肝斑は、顔の左右にシミが現れる皮膚の病気の一種。紫外線やホルモンなどが関連するとされ、治療をしても再発しやすいとされる。

 タイのマヒドン大学ラマティボディ病院の研究チームは、ボツリヌス療法と、3つの成分を含むクリームを組み合わせる治療により、シミを改善させることができると報告した。

顔の左右で効果を比べた

肝斑の改善が認められた。上はボツリヌス療法と塗り薬を組み合わせた治療。下は塗り薬のみ。左が治療前、右が治療後。(出典/J Cosmet Dermatol. 2025 Aug;24(8):e70376.)

肝斑の改善が認められた。上はボツリヌス療法と塗り薬を組み合わせた治療。下は塗り薬のみ。左が治療前、右が治療後。(出典/J Cosmet Dermatol. 2025 Aug;24(8):e70376.)

  • 従来治療の課題→塗り薬やレーザーで色素を減らしても再発率が高い。
  • 新たな注目→ボツリヌス療法に紫外線による色素沈着抑制作用があり、肝斑改善への応用が期待。
  • 治療内容→片側は3成分配合クリームのみ、もう片側は同外用薬+ボツリヌストキシンA注射(開始時・12週目)。

 肝斑はシミの一種で、治療しても再びシミが現れることが多く、改善が難しい肌の症状とされる。原因は紫外線、ホルモン、炎症などが複雑に関わり、長い期間の治療が必要となる。

 従来、肌の色素を減らす塗り薬やレーザーなどが使われているものの、再発率が高いのが課題となっていた。

 一方で、シワ治療などに行われるボツリヌス療法が、紫外線による色素沈着を防ぐ働きがあり、シミ改善効果にも期待が寄せられていた。

 今回、研究チームは、肝斑のある女性30人を対象に、ボツリヌス療法を応用した治療の効果を確かめた。顔の左右に別々の治療を行い、効果を比べる試験を実施した。

 片側の顔には、「ハイドロキノン4%、トレチノイン0.05%、フルオシノロンアセトニド0.01%」を含む3つの成分を配合したクリームを夜に12週間塗った(塗り薬のみ)。一方で、もう片側の顔には同じ外用薬に加え、開始時と12週目にボツリヌストキシンA(A型ボツリヌス毒素)を皮膚の浅い部分に注射した。

 効果の評価は治療前と、2、4、8、12、16、20、24週目に実施。評価には、肝斑の面積と濃さを点数化する「MASIスコア(MASIm)」、肌の色を測る機器によるメラニン指数、さらに満足度を調べた。安全性は副作用の有無で確認した。

メラノサイト活性と炎症を抑える可能性

シミをなくすには?画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

シミをなくすには?画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

  • 改善効果→塗り薬+ボツリヌス療法は2週目から改善し、4週目でMASImスコア20.41%改善。塗り薬のみは0.93%悪化。
  • 長期経過→夏季の12週目に両側で一時悪化も、24週目には組み合わせ治療で36.97%改善、塗り薬のみは21.03%悪化。
  • 他の評価→メラニン指数・明るさ・満足度(8.92点 vs 7.04点)で組み合わせ治療が優位。

 治療の結果、塗り薬とボツリヌス療法を組み合わせた方の顔は、2週目から有意な改善が見られた。4週目には肝斑の重症度(MASImスコア)が20.41%改善した。

 これに対し、塗り薬のみの方の顔は0.93%悪化していた。

 夏の時期にあたる12週目には、両方の顔で一時的な悪化があったものの、治療終了から3カ月後の24週目には、2つの治療を組み合わせた方の顔で36.97%の改善が確認されたのに対し、塗り薬のみの方では21.03%悪化していた。

 肌の色を測るメラニン指数や明るさ(CIE L*値)でも、治療を組み合わせた方の顔が優れていた。満足度も、24週目の時点で治療を組み合わせた方の顔が平均8.92点、塗り薬のみが7.04点と、有意に高い結果だった。

 研究チームによると、ボツリヌストキシンAは、神経から放出されるアセチルコリンなどの物質を減らすことで、色素を作る細胞(メラノサイト)の働きや形の変化を抑える。さらに、炎症に関わる物質や血管を広げる神経ペプチドの放出も減らすとされ、これらが紫外線による色素沈着や肝斑の改善に関わっている可能性がある。

 今後はより多くの人を対象に長期間の効果と安全性を確認し、トラネキサム酸の飲み薬やレーザー治療との併用効果も調べる必要があるとしています。

参考文献

Chaijaras S, Boonpethkaew S, Chirasuthat S, Sakpuwadol N, Yongpisarn T, Anansiripun P, Vachiramon V. Efficacy of Botulinum Toxin A for the Management of Melasma: A Split-Face, Randomized Control Study. J Cosmet Dermatol. 2025 Aug;24(8):e70376. doi: 10.1111/jocd.70376. PMID: 40747795; PMCID: PMC12315078.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40747795/

肝斑改善に組み合わせ?ダーマペン+グルタチオンが効果、美容皮膚科の医学誌で報告
https://biyouhifuko.com/news/research/5137/

トラネキサム酸とビタミンCによる肝斑メソセラピー治療の成果、美容皮膚科の医学誌で報告、最新の海外研究
https://biyouhifuko.com/news/research/7150/

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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