ポイント
- あごが出ている、受け口などで、下あごの整形を希望する人のうち約15%に身体醜形症の可能性が指摘された。
- 外見の印象が大きく変わる整形を考えるときに、心理的な問題にも目を向ける必要がある。
- 美容的、精神的な医療が連携して、美容医療に関わる必要性が指摘されるようになっている。

あごの整形手術を希望する人に潜む心の病気とは。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
あごが出ている、受け口、口がうまく閉じないといった悩みのために、下あごの整形手術を希望する人のうち、約15%に「身体醜形症(Body Dysmorphic Disorder、BDD)」の可能性があることが示された。
チリ大学とスペインのバルセロナ大学などの研究グループが、複数の国の調査結果をまとめた国際共同研究として、2025年7月に報告した。
美容医療と密接に関わる心の問題

あごの整形手術を希望している人の課題。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
身体醜形症は、外見上の欠点に過度にこだわり、強い不安を抱いたり、人と接することが難しくなったりする苦痛を引き起こす状態を指す。
美容整形などの見た目を改善する施術を求める人々の中には、こうした傾向を持つケースが少なくないとされる。
実際、これまでの報告では、美容医療関連領域で、身体醜形症に当てはまる人の割合2.9%から20%と幅がある。医療現場で、その人が身体醜形症かどうかを判断するのは簡単ではないと考えられる。
こうした中で、チリ大学およびバルセロナ大学などによる国際研究チームは、下あごの美容的な目的の手術である「下顎整形手術」を希望する成人患者の身体醜形症の割合を明らかにすべく、過去の調査をまとめて分析した。
対象となったのは、イラン、オランダ、米国(2件)、トルコの計5件の研究で、合わせた症例数は456人、年齢は平均21〜38歳、女性の割合は52〜66%だった。
その結果、全体の14.5%に、身体醜形症の可能性があると判断された。これは、下顎整形手術を希望する10人に1〜2人の割合で、外見への強い執着が心理的苦痛を伴っていることを示すものとなる。
研究チームは、心理的な状態をあらかじめ調べることで、術後の満足度向上や不適切な手術希望を避けるために役立つ可能性を指摘する。もっとも、今回の調査内容はまだ十分とはいえず、さらに研究が必要だとまとめている。
美容医療の現場では4人に1人という指摘も

整形手術の相談に心理的な評価も必要?画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
身体醜形症と美容医療との関連性は、今回の研究以前より、ヒフコNEWSでも継続的に取り上げてきた。
2025年4月に紹介されたメキシコの研究では、身体醜形症の割合は一般の人たちでは17%、美容外科の受診者では24%に達する可能性があると報告されていた。
この調査は過去の文献62件を対象に行われ、美容外科、精神科、皮膚科といった領域で高い割合が確認された。
美容施術を希望する背景には、外見への不満だけでなく、精神的な苦痛や対人不安が潜んでいることも多い。施術に過剰な期待を抱くことで失望に至ったり、逆に繰り返し処置を求める傾向も見られる。
英国やオーストラリアでは美容医療に先立って心理的なアプローチを義務づける制度も導入されている。
今回の国際研究では、美容医療とメンタルヘルスの接点に、あらためて光が当てられた。
日本でも問題は存在すると考えられ、心理的な評価の導入や専門家の連携体制の整備が求められている可能性がある。
参考文献
Sáenz-Ravello G, García PC, Fan S, Al-Nawas B. Prevalence of Body Dysmorphic Disorder in Patients Seeking Orthognathic Surgery: A Systematic Review and Meta-Analysis. J Oral Maxillofac Surg. 2025 Jul 23:S0278-2391(25)00646-9. doi: 10.1016/j.joms.2025.07.003. Epub ahead of print. PMID: 40782826.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40782826/
身体醜形障害、一般で17%、美容外科で24%に、女性に多く、精神科受診との関連も、メキシコ研究チームが美容皮膚科誌で発表
https://biyouhifuko.com/news/research/12492/
SNS時代の美容医療、非現実的な「美しさ」基準との向き合い方、米国形成外科学会が伝える
https://biyouhifuko.com/news/world/3433/
