ヒフコNEWS 美容医療に関する最新ニュースをお届けするサイト

老化は「時間」だけで起きるのか、細胞同士の相互作用が鍵握る、体内で老化細胞が周りも老化させる現象に注目、京都大学と東京大学などの研究グループが報告

カレンダー2025.8.21 フォルダー最新研究

ポイント

  • 京都大学と東京大学などの研究グループが、体内での老化のメカニズムで新発見。
  • マウスを用いて、老化細胞が周囲の細胞を老化させる現象を生体内で確認。
  • 老化は、組織の中で炎症反応が広がることで、進む可能性が考えられた。
老化と細胞の関係とは。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

老化と細胞の関係とは。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 老化した細胞が、まわりの細胞にも老化を広げていく──。そんな仕組みを、京都大学や東京大学などの研究チームがマウスを使って確認した。

 この成果は2025年7月、英科学誌「Nature Aging」に発表された。

「老化の連鎖」のような現象が起こる

老化細胞が影響?画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

老化細胞が影響?画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

  • 老化の連鎖→老化細胞が周囲の細胞まで老化させる現象があり、「SASP(老化関連分泌表現型)」として注目されている。
  • 研究の取り組み→京大・東大・理研の研究チームが、老化細胞のふるまいを解析できるマウスモデルを開発。
  • 重要な発見→免疫細胞マクロファージが分泌する炎症性サイトカインが、周囲の細胞老化を誘発するトリガーになると確認。

 年齢とともに肌や体の機能が少しずつ衰えていく。その背景には、体の中で静かに進む「細胞の老化」があると考えられている。

 最近の研究では、老化した細胞が周囲の細胞も老化させるような影響を引き起こしている可能性が示され始めている。いわば「老化の連鎖」のような現象といえるだろう。

 ヒフコNEWSでも「SASP(Senescence-Associated Secretory Phenotype、老化関連分泌表現型)」と呼ばれる現象について伝えてきた。

 老化が、どのように始まり、どのように進んでいくのかを考える上で、この研究の意義は大きい。

 京都大学と東京大学、理化学研究所などの研究チームは、老化細胞が体内でどのようにふるまい、周囲にどんな影響を与えているのかを明らかにするマウスモデルを開発した。

 モデルというのは、遺伝的な操作などによって、ある病気の典型的な現れ方を再現した動物のこと。

 研究の結果、免疫細胞の一種「マクロファージ」が分泌する「炎症性サイトカイン」と呼ばれる物質が、周囲の細胞まで老化させるトリガーになっていることを確認した。

 例えば、肝臓では、老化した細胞がマクロファージから出るタンパク質である「IL1B」と呼ばれる物質が増えて、マクロファージが活性化した可能性がうかがわれた。放出された炎症性の物質が、周囲の細胞にも「老化を引き起こす信号」として働いていることが確認された。

 従来、実験室の細胞で確認されていた現象が、生きた体の中でも実際に起きていることが示された。

老化研究の先に対策の可能性

アンチエイジングの医療にもつながる可能性。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

アンチエイジングの医療にもつながる可能性。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

  • 老化の新しい理解→老化は「時間の経過」だけでなく、細胞間で影響し合う現象である可能性が示唆された。
  • 炎症との関係→慢性的な炎症が老化を早める要因であり、マクロファージの役割が注目される。
  • 臨床応用の可能性→老化の引き金となる細胞を制御できれば、全身の老化を緩やかにできる可能性がある。

 美容医療を含めて医療分野では、老化の研究が盛んになっているのは、ヒフコNEWSで何度も伝えてきたことだ。

 今回の研究から推定されるのは、老化が単なる「時間の経過による衰え」ではないことだ。老化が細胞間で影響し合う可能性を示す。

 時間にかかわらず、老化の引き金となる細胞を見つけ、その働きをコントロールできれば、全身の老化プロセスを緩やかにする手がかりになる可能性がある。

 また、今回の研究では「炎症」がこの連鎖に深く関わっていることも浮き彫りになった。慢性的な炎症は老化を早める原因として以前から注目されている。

 そのメカニズムが具体的に示され、マクロファージという細胞が関連していたということで、ここへの対策が注目される可能性が考えられる。

 今回のマウスで見られた現象は人とも似ていると考えられ、人の老化の研究にもつながる。

 老化細胞を選択的に除去するセノリティクスの研究は世界的に進められているが、今回の成果はその理論的根拠を強化するものとなる。今後、このマウスモデルを用いることで、老化予防や老化関連疾患の新たな治療戦略が加速すると期待される。アンチエイジングの方法につながる可能性がある。

参考文献

マウスモデルで細胞老化のメカニズムに迫る 老化細胞が周囲の細胞に与える影響(京都大学iPS細胞研究所)
https://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/pressrelease/news/250711-180000.html

老化細胞の除去で寿命を延ばす効果、人間ならば130歳相当に、国内外で注目される「SASP」、米国コネチカット大学の研究グループが発表
https://biyouhifuko.com/news/research/8627/

ヒフコNEWSは、国内外の美容医療に関する最新ニュースをお届けするサイトです。美容医療に関連するニュースを中立的な立場から提供しています。それらのニュースにはポジティブな話題もネガティブな話題もありますが、それらは必ずしも美容医療分野全体を反映しているわけではありません。当サイトの目標は、豊富な情報を提供し、個人が美容医療に関して適切な判断を下せるように支援することです。また、当サイトが美容医療の利用を勧めることはありません。

Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

お問い合わせ

下記よりお気軽にお問い合わせ・ご相談ください。